はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

寒椿

2007-02-17 10:30:20 | はがき随筆
 計ったように朝4時に目が覚める。開業して45年間、風雨雪の暗闇の早朝から市場へ仕入れに通い続けた。わけあって昨日で商いを廃業したのだが、今朝、目が覚めて、その生活パターンから解放されている我が身に長いトンネルから抜け出した虚脱感と脱力感を覚えた。思い切り背伸びし頬をつねってみた。これから急変するであろう未知の生活への不安、体力の限界、余生などなど、思案思案にふけった。とにかく立て、立てと我武者羅に我が身を叱鞭して起きあがり、窓を開けてみると、冷たい朝風と朝日の中に真っ赤な寒椿が美しく映えていた。
   鹿児島市 春田和美(71) 2007/2/17 掲載

写真はtakocchiさんよりお借りしました。