はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

一本桜

2007-04-10 10:28:11 | アカショウビンのつぶやき
 朝ドラ「どんど晴れ」の一本桜の息を呑むような姿にはかなわないけれど、こちらの一本桜も、今、花盛り。
市役所駐車場の中央にたった一本、大きく枝を広げて咲く桜。周りはアスファルトで塗り固められ排気ガスの充満する中で健気に咲き続けている。我が家の窓からお花見できる嬉しい桜でもある。
 30年前私たちがこの地に引っ越して来た頃は、ここに営林署官舎が何棟も並び、美しい生け垣、大きな銀杏や花木で緑いっぱいの場所だった。
 廃線となった旧国鉄大隅線、鹿屋駅跡地に市役所が移転して16年。
周辺が駐車場として整備され、樹木の殆どが切り倒され、残ったのは生け垣少々と桜の木一本。

 駐車中の車が散りゆく花びらで彩られるのも、間もなくだろう。

 桜吹雪の中に佇むと、遠い日の記憶の一頁、母の車椅子押す夫と三人で眺めた、あの日に戻れそうな気がする、アカショウビンです。


負けてなるか

2007-04-10 09:44:18 | はがき随筆
 「はがき随筆」をと机に向かうが、だるい。なんとあれだけ嫌だった草むしりをする自分がいる。作文で頭を悩ますよりは数段、楽だ。こんなふうに脳は衰えていくのかと不安を覚えた。その時、数枚のちっちゃな赤い葉をつけた数十㌢のナンテンが目に入った。思えば正月の生け花が用無しとなったが、まだ生き生きしているのにと独り言を言いながらの庭の隅に無造作に突き刺しておいたものだ。あれから優に数ヶ月は経っているのに未だに数枚の赤い葉をつけているではないか。その生命力に圧倒され、負けてなるかと、すぐ机に向かった。
   肝付町 吉井三男(65) 2007/4/10 掲載

写真はparusさんからお借りしました。