はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆3月度入選

2007-04-25 11:41:39 | はがき随筆
はがき随筆3月度の入選作品が決まりました。
△ 姶良町西餅田、福崎康代さん(44)の「至福の一刻」(3日)
△ 霧島市溝辺町崎森、秋峯いくよさん(66)の「落花生」(2日)
△ 出水上鯖渕、橋口礼子さん(72)の「思いやりの心」(18日)
の3点です。

 4月になりました。春本番ですね。いろいろ行事の多い時で忙しいかと存じますが、忙しさを楽しむ文章は活発で良いものです。下市良幸さんの「この火を消すな」、宮園続さんの「結婚記念日」などは、楽しい忙しさでしょう。森孝子さんの「アカジョウドリ」は、この鳥のことでお父さんから早朝起こされたという思い出話。
 秋峯さんの「落花生」は、友人から送ってきた落花生について日本の食糧自給率や友の優しさなどを考えたものです。やや奥深いものを感じさせる福崎さんの「至福の一刻」は、初めて訪れたバリ式マッサージ店の女性の対応に酔う気持ちを描いた文章です。この女性の対応の細やかさ、美しさが直接に感じられるのは、文章がよく書けているから。橋口さんの「思いやりの心」も、細やかな心遣いなどを取り上げています。いいですねえ。
 3月は、皆さんが桜や春風や小鳥などなど春らしい話題を取り上げて、毎日楽しく読ませてもらいました。しかし、これは、皆さんの既成概念によるものかもしれません。自分ならではの個性を主張して、あっと驚く文章を見せていただくのもいいが……と思ったりします。とにかく、文章の上達はたくさん書くこと以外は、ありません。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から
入選作品のうち1編は28日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。

今を生きる

2007-04-25 08:21:25 | はがき随筆
 29年前に父が鬼籍に入り、9年前に母が不帰の人となったが、両親の死に目には会えなかった。感謝の言葉も告げられずに逝かせてしまったことは今でも心残りである。特に母の死はショックで、この世に親と呼べる人がいなくなった時、自分の心の中に大きな風穴ができた。もっと親孝行すればよかったと自分を責めた。そんな時、藤沢周平の時代小説「三家清左衛門残日録」に出会った。老武士の老いの寂寥、孤独、哀しさを感じたが、人間の力強さと明るさ、生きていることの幸福も味わえた。私は清左衛門の目を通して生と死を眺めることができた。
   鹿児島市 吉松幸夫(49) 2007/4/25 毎日新聞鹿児島版掲載