はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

今年の桜

2007-04-16 07:11:07 | はがき随筆
 阪神競馬場は満開の桜で迎えてくれた。最高潮は桜花賞レースで、咲く桜と共に堪能する。ちょっと寂しくなった懐を抱えて翌日は京都へ。京の桜は優しい。東山の峰々を借景に歴史ある建物と解け合い絵のようだ。清水寺から平安神宮まで歩く。途中、高台寺、円山公園、八坂神社、知恩院など、それぞれの桜が目を楽しませてくれた。3日目は造幣局の通り抜け。種類の多さに驚く。映像では見ていたが、足を運んで目の当たりにした感動は、筆舌に尽くし難い。桜三昧の旅ではあったが、どの桜よりも妻の笑顔が……。おっと言わぬが花かしら。
   志布志市 若宮庸成(67)2007/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載

クスの並木

2007-04-16 07:02:14 | はがき随筆
 大学の中の道を東進し、あてにしていたところは午後休み。電車通りに沿って広い歩道をゆったり歩き、別のところでフイルムを出すと、新しいものだという。
 この間終了したはずなのに。「こりゃだめだ、今日は」と独りごちながら、本屋へ。これも又、もとの場所にないことに気づいた。帰りに郵便局に寄り、付属小から大学へ入ってスズカケの実を拾った中の道路を西へ。これがまた素晴らしい。
 クスの新緑の放つ香りにしばし全身をゆだねながらゆるく歩いて快気。
   鹿児島市 東郷久子(72) 毎日新聞鹿児島版掲載

不可解な出来事

2007-04-16 06:55:57 | はがき随筆
 路面電車に乗っているといろいろな人間模様に遭遇する。ある日、高齢の男性が乗って来るなり、若い女性2人に「なんで座っているのか、立て」と叫んだ。一瞬、我が耳を疑った。席は空いているのになぜ? 高齢者が乗って来たら若者は皆、立てということなのか。「高齢者に席を譲りましょう」。これは満席で高齢者が座れない場合であるはず。「絶対に席を立つ必要はない」。私は口に出そうになったが、ぐっと堪えた。その女性達は降車するまで立たなかった。世の中、まさかと思うことが起きるものである。実に不可解な出来事だった。
   鹿児島市 川端清一郎(60) 2007/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載

桜島は友達

2007-04-16 06:49:25 | はがき随筆
 バスを降りたら、春の暖かい日差しを浴びて桜島が笑っていた。真っ青な空をバックに、山ひだまではっきりと見える。いつだったか私の悲しかった日、しとしとと降る小雨の中で君は、薄ぼんやりと見え隠れしてつらい私を見守ってくれたねえ。今日は又どうしてそんなに笑っているのかい? 見ていたのかい? そうだよ、私はバスの中であの人と会えたんだ。ただ話をしただけだったけど、私はそれだけで嬉しかったんだ。それがそんなにおかしいのかい、いいじゃないか私が嬉しいんだから。そんなに笑うと、顔の皺が又、増えるぞ。
   鹿児島市 高野幸祐(74)2007/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載

静と動

2007-04-16 06:41:47 | はがき随筆
 地区の書道会の作品展を知り、元気な子供達の声に吸い込まれるように会場の公民館に入った。書き初め展・夏休み書道展・九州書道展などの他、硬筆・ペン字講座の作品が所狭しと展示され目を見張るばかりだった。小中高一般の作品は個性あふれ存分に自己を表現し、しとやかさと力強さは技を超えて見る者の胸を打つ。先の子供も静かに集中して作品と取り組み、時にはサッカーや剣道などで動き回り身体を鍛える。人間形成には年齢を問わず、こんな動きと静かさが適宜交錯し、偏らないことが大事であろう。
   薩摩川内市 下市良幸(77) 2007/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載

教職員の異動

2007-04-16 06:34:33 | はがき随筆
 先日、教職員の人事異動が発表になった。希望がかなった者、気の進まない地域へ異動する者など、さまざまであろう。でも、誰が考えても理解できる特別な事情がある者は別として、教師になった以上は、どんな地域へも喜んで赴任し頑張ってほしい。子どもたちは、新しく赴任される先生方を首を長くして待っている。かく言う私も元教師で二十数年前、十島村の宝島という小さな学校へ赴任して素晴らしい体験をした。先生方はどこへ赴任しても、そこの子どもたちのために、全力で職責を全うしてほしい。
   南さつま市 川久保隼人(72) 2007/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載