はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

メダカの学校

2012-06-04 21:19:48 | はがき随筆


 町の生涯学習の仕事をしていた頃。自然観察に関心の深いIさんがセンターに来て「アウトドアの学習も考えてください」「この町の小川からメダカが姿を消していることをご存じですか」とおっしゃる。私は自信をもって「まさか」と言った。
 それでは、ということで、数人が少年時代にメダカすくいをした場所などをそれぞれ思い出し、メダカ探検に出かけた。数日探してもいない。Iさんが言う通りどこにもいない。皆が驚いた。これがきっかけで環境問題を学習する「メダカの学校」を結成。20年たった今も会員が増え学習を続けている。
  志布志市 一木法明 2012/6/4 毎日新聞鹿児島版掲載


努力目標

2012-06-04 09:22:41 | はがき随筆
 小学校時代に「努力目標」なるものがあり、児童会として守らなければならなかった。
 ▽生梅を食べない▽生水を飲まない▽流行歌を歌わない▽方言を使わない──などで時代をしのばせる。食えれば何でも口にし、水道もなかった。流行歌はくすぐったく魅力的だった。教科書以外、全て方言なので、方言抜きは意志の疎通を欠いた。だから、目標達成は困難だった。
 60年後の今は▽飲み過ぎてだらしなくしない▽服装などみっともない格好をしない▽妻にきらわれ、面倒を見ないなどと言われない──だが、努力目標を達成するのは難しい。
  肝付町 吉井三男 2012/6/3 毎日新聞鹿児島版掲載

貴重な5円

2012-06-04 09:17:07 | はがき随筆
 ビニール袋入りの新聞を見て遠い昔を思い出した。小4から中3まで3人で約60部の新聞を配達した。「しんぶーん!」「こん前ゃ雨でぬれとったど!」。当時は雨の日の新聞置き場に困る家があった。「あいがとなあ」。台所から声がすると何だか元気が出たものだ。
 汽車が延着すると放課後に配った。1日で終了しない新聞代集金には苦労した。集金を各販売店に持って行くと1部15円の配達料をくれた。10円が子供会活動資金となり5円が手元に残った。とても貴重だった。毎日の配達を通して少年にもその頃の世相が見えていた気がする。
  出水市 中島征士 2012/6/2 毎日新聞鹿児島版掲載