はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

琉球寒緋桜

2007-02-08 11:33:54 | はがき随筆
 6年前、沖縄観光旅行に行った時、本部の八重岳は桜祭りの始まりであった。
 その日はうすら寒く、俯いて咲く桜並木の紅の花は未だ疎らであったが、早い春を告げていた。梅の早咲きに次いで緋寒桜を活けるのが習わしのようになっていたのでつい見入っているとガイドさんが、彼岸桜と間違えやすいので当地では寒緋桜と呼ぶようになりました。納得して帰り周囲にも説いていたがテレビでは、緋寒桜が見ごろを云々に不満を感じていた矢先、「琉球寒緋桜」と銘打った行事の案内になぜかホッとしている。
   南さつま市 寺園マツエ(85) 2007/2/8 掲載

写真はOYAMAMAさんからお借りしました。 

元祖養生訓

2007-02-07 16:24:18 | はがき随筆
 現代は健康ブームである。テレビや雑誌では健康食品、健康器具、健康寝具など「健康」の名が付けられて紹介、販売されている物が多い。病老死といった自分の健康に関心を持つ人が増えたのであろう。だが、健康のためならばと追求しすぎるのもどうかと思う。先人は「普段の生活から養生を良くすれば長命となり、不摂生であれば短命となる」と言った。健康の秘けつは食べ過ぎず、飲み過ぎず、バランスの取れた食事を摂り、適当な睡眠と運動、規則正しい生活を送ることだ。すなわち、無理をしないで自然と調和して暮らすことが一番だ。
   鹿児島市 吉松幸夫(48) 2007/2/7 掲載

写真はNONさんからお借りしました。

温泉と雑木林

2007-02-06 13:35:37 | はがき随筆
 この時季、温泉に浸る気分は最高である。湯の花と硫黄の香り。露天風呂につかり火照る体。頬をなでる冷たい風に醍醐味を味わう。山荘風のこの宿は、広大な雑木林の中にある。葉を落とした櫟の林が山へと続く。宿の下駄で落ち葉を鳴らす。熱を冷ました体を再び湯に浸す。ふと思い出すのは武蔵野の雑木林。湯につかり目を閉じると、幼い日がよみがえる。切り株に腰を下ろし芋の焼けるのを待つ時、梢を渡る風の音を聴いたのかもしれない。乱開発で跡形もなく消えた都会の林。まるで初恋の人に霧島で会えたような懐かしさを感じた。
   志布志市 若宮庸成(67) 2007/2/6 掲載

広がる夢

2007-02-05 16:39:06 | はがき随筆
 「年初め寝たいだけ寝て幸せだ」。素直に自分の気持ちを川柳に作ってみた。息子5人の子育て中は忙しく、たっぷり寝るのが私の夢だった。子育ても終わり、4人結婚した。次は趣味に夢が広がってゆく。昨年は40年ぶりに南日本美術展に出品した。両膝の悪い私は、鹿児島まで1時間ごとに休み、8時間運転して搬送した。結果は没だったけど、挑戦できたことが嬉しかった。今年は9人の孫たちの絵を描こう。私が孫等に残してあげられるものはそれしかない。さあ!夢に向かって突進だ!
   山口県光市 中田テル子(60) 2007/2/5 特集版-6

日本の国技

2007-02-05 16:25:29 | はがき随筆
 テレビ観戦、大相撲初場所13日目。君が代の曲に迎えられての天皇、皇后両陛下の御観戦となり、会場の雰囲気はいやがうえにも高まった。出場する力士達の幕の内の半数が外国人だと言うのに、力士は日本名の四股名で出場し、観客は、日本人外国人のわけへだてもなく惜しみない拍手を送っている。天皇制、愛国心云々の声が聞こえる今日この頃、何のこだわりもない手放しの喝采が充満するこの光景を見て、本当に日本人と生まれて良かったと思ったのは私だけだったろうか。まさしくモーニング娘の歌う世界が羨む国だと実感したものだった。
   鹿児島市 高野幸祐(74) 2007/2/5 特集版-5

もらい風呂

2007-02-05 16:16:30 | はがき随筆
 遠い昔、60年ぐらい前のこと。夕食を済ますと母が「礼子、お隣へお風呂をもらいに行こうか」と私を誘った。家を出ると北風が冷たく頬をなでる。明かりが遠く近くチラホラ見える。「今晩は、お風呂をもらいにきました」「さあ、お上がり」。お茶を出していただく。大人の話ばかり。1時間ほどして「さあ空いた。お入り」。お風呂は裏庭の露天にある。五右衛門風呂であった。箱が踏み台。脱衣は筵の上。明かりはロウソク、洗い場は板の上。薄暗い中、お湯に浸る。夜空の星がきれい。身も心も温かくなり感謝の気持ちでいっぱいになった。
   出水市 橋口礼子(72) 2007/2/5 特集版-4

梅の咲く頃

2007-02-05 16:04:59 | はがき随筆
 暖冬と言われた冬が1月の終わりになって急に冷え込んできた。蠟梅が咲き紅梅が綻び、やがて梅が山かげを白く染める。1年で一番寒い季節である。早朝の散歩も控えて炬燵で新聞を読んだり、短歌俳句を作る日々が続く。2月早々、81才の誕生日を迎えるが、まだ現役の田舎医者。半世紀をすぎた医の世界もせちがらくなってきたが頑固に務めさせて貰っている。長生きしてみて人生の基はやはり優しさだと思う。そこからすべてが始まる。しみじみそう信じている。寒さに負けず今からも優しく生きてゆきたい。
   志布志市 小村豊一郎(80) 2007/2/5 特集版-3

写真はバセさんからお借りしました。

花の教え

2007-02-05 15:40:59 | はがき随筆
 このごろの私は気分が沈んでいる。口が禍して友を失いそうだから。気は進まないが、日課の散歩に出る。人家の庭の隅にぼけの木が1本。静寂な佇みに足を止めて眺める。小振りで名前のせいか、梅と似てるのに梅ほどに讃えられない。が、白色から薄紅色、紅色と見事な変化と絞りも交えて咲く花は、りりしく確かな自己主張をしている。自分は自分だと言わんばかりに……。
 本来の自分に戻ろう。自戒し、現状を打破せねば。物言わぬぼけの花に教えられ、私は上昇気流に乗る。
   いちき串木野市 奥吉志代子(58) 2007/2/5 特集版-2

写真はバセさんからお借りしました。

負けてるぞ

2007-02-05 15:14:39 | はがき随筆
 とても冷え込んだ朝、隣のNさん宅に届け物を済ませてコタツに滑り込もうと、部屋着に半てんを羽織って行った。
 すると、Nさん宅の玄関ドアは開け放たれ打ち水まで……。チャイムの音で出てきたNさんの身だしなみは整い、襟元にはスカーフも。
 今回だけではない。いつも感服する。予定のない日曜日はすっかり無精を決め込む私。帰って電気カーペットとコタツのコンセントを抜き、掃除機をかけたことを念のため。
 ちなみにNさんは爺ちゃん亡きあと一人暮らしで85歳。
   垂水市 竹之内政子(56) 2007/2/5 特集版-1 

In the Sanctuary (聖なる場所へ)

2007-02-04 17:01:02 | アカショウビンのつぶやき







T先生も思わず熱唱


手話で「ありがとう」 皆様へ感謝を込めて!

 今日は、西原学習センターで学ぶ講座生、同好会の合同発表会。

 ゴスペル同好会「鹿屋プレイズシンガーズ」は、たった2曲の発表なのに難儀したなあ。

ゴスペルは、昭和ヒトケタにとってリズムが難しい。
8分の12拍子なんて楽譜に驚いていたら、ひょいひょい拍子は変わるし、どんどん転調するし…。体はリズムに乗れず、お隣さんとぶつかりながらの練習が続いた。
やっぱりこの歳では無理、発表会が終わったら潔く退会しよう。
最後のステージだから今度だけ頑張ってみよう…。
2番目の出演だから聴衆も少ないだろうし、何とか歌い終えれぱそれでよし。

不謹慎だが、そんな思いで迎えた発表会。

    「きずな」  作詞/湯川れい子 作曲/宮川彬良 
  何十億の人は誰もみんなそれぞれに
  時に笑い時に泣いて 夢を求め愛を運ぶ きずな
  なぜに傷つけ合うの 世界中でただ1人だけの
  あなたと言う大事な命 いつまでもいつの日までも
  幸せでありますように…と祈る
   ありがとう 生まれてきた事
   ありがとう きずなに感謝

 歌い終わったとき、聴衆の真剣な眼差しにハッとさせられた。
 「In the Sanctuary」は、手拍子で楽しんでくださった方もあった。

手話の「ありがとう」は、今日聴いてくださったあなたへ… でした。


これからもゴスペルを歌い続けようと決心したアカショウビンです。

わが家だけ特別?

2007-02-04 15:35:33 | はがき随筆
 キンカンが例年の3倍も実をつけている。見事だ。ストレリチアも3倍咲いている。極楽鳥が30羽ほど今まさに天空に飛び立とうとしている。壮観だ。「キンカンにしてもストレリチアにしても、おかしいわよ」と、妻は大げさに首をかしげる。どこの家庭でも見られる現象ではあろうが、妻としてはわが家だけ特別と思いたいのだ。それは母が他界したので〝何か変わったことが起きるのではないか〟の思いがあるからだ。
 「そうだね。天国の母に見せているのだよ、きっと」。と私の言葉に妻は「私もそう思う」と大きく頷いた。
   西之表市 武田静瞭(70) 2007/2/4 掲載

写真はマグナさんからお借りしました。

老人ホーム

2007-02-03 13:52:46 | はがき随筆
 日曜日に老人ホームを所用で訪れた。昼食前で準備のできた方から車椅子で広間のテーブルに着いておられる。馴染みの方が手招きされた。「お茶が欲しい。口が渇いて……」と。部屋の入り口のテーブルの茶器籠の湯飲みに茶を注いで届けた。彼女の満面の笑顔が印象的だった。少ない職員が55人の入所者の移動をすませ、食前のリハビリ体操と健康観察。時間を見て配膳し食事介助が始まった。大きな行事こそない日曜日。平日と変わらない入所者の生活を少数の職員が安心安全に配慮して支える丁寧な介護。かつて母も100歳までお世話になった施設だ。
   薩摩川内市 下市良幸(77) 2007/2/3 掲載

猪のあいちゃん

2007-02-02 12:24:08 | はがき随筆
 昨年はつつがなく暮らせた。明けて今年は妻の亥年、義弟のその娘も年男年女である。新聞であいちゃんの写真を見た。冬晴れの日、「あいちゃんに会いに行きたい」と言ったら「生きましょ」と妻も言う。妻たちは龍馬のハネムーンウォークに2回参加したので今回で3回目の対面だ。なるほど白い麗しのあいちゃんである。和気清麻呂公を守って案内したという末裔かな。妻も猪突猛進とは言わないが優しいところもある。
 ちなみに、あいちゃんと同じ名のアイちゃんなのである。もうすぐ金婚式である。
   大口市 宮園 続(75) 2007/2/2 掲載

ウォームビズ

2007-02-01 15:27:41 | アカショウビンのつぶやき





 地球温暖化と言われ、平均気温は年々確実に上がっているのに、歳を重ねる毎に、寒さの感度がアップし下着が1枚ずつ多くなっていく……私。
 10数年前、だるまさんのように着ぶくれた、卒寿を過ぎた姑に「重ね着するよりエアコンを点けたら…」と、口うるさく言っていた私が、今は姑と同じ事をしている。

 残念ながら、全館暖房というわけにもいかぬわが家は、廊下に出ればゾクッとする、設定温度を上げれば空気が乾燥し、加湿器まで使わねばならぬ。

 ええーっ ここは我慢だ!
 パソコンの横はファンヒーター、食卓の横にストーブ、浴室、寝室だけは暖かくして、部屋のエアコンは来客時だけ、と最低の暖房で2月を迎えた。

 今朝テレビで、パソコン作業用の手袋を紹介していた。

 キーを叩いていると、ヒーター側の手は温かいけど、反対の手は冷たくかじかんでしまうので早速アイディアを頂く事にした。
 色とデザインが気に入って長年愛用した手袋は虫にやられて穴だらけ……。ジョキジョキ指先を切り取って使ってみた。テレビで紹介した手袋にはヒーターが入っていたけど、手袋だけで充分。

なかなかいい 5本の指もスムースに動く。本当にスグレモノ 

 土曜日はFM番組の取材と編集の予定。これで準備も順調に進むだろう。あったかい手袋で、冷たいほっぺたを包んでみる……。
 外は時雨模様、時々晴れ間が覗く庭に、寒風に耐え紅梅が凛と咲いていました。
  
   寒がり屋の アカショウビン

心の目

2007-02-01 11:26:55 | はがき随筆
 車はトンネルに差しかかろうとしていた。その時、偶然、車に乗り合わせていた目の不自由な方が「もうすぐトンネルですね」と言った。どうして走っている場所が分かるのか不思議がる私に「道路の高低、タイヤの音、空気、かすかに感じる光などで判断できるのです」とタネ明かしをした。
 「目から鱗」だった。彼は私たち以上にものを「見ている」のかもしれない。それも「心の目」で。それに比べて私たちは、いかに目に頼りすぎていることか。
 車から降りて歩いて行く彼の背中が大きく見えた。
   鹿児島市 池田真美(45) 2007/2/1 掲載