はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

父の日

2012-06-22 16:11:08 | アカショウビンのつぶやき


 先週の日曜、鹿屋キリスト教会では、父の日礼拝でした。
牧師先生の説教を聞きながら、母の日に比べて少々影の薄い「父の日」の
意義をまた改めて考えました。

いつもは遠慮気味のお父さん方も、多数出席され賑やかな礼拝となりました。
父の日のプレゼントは、鹿児島名産の「かつお梅」。
ちと、しょっぱいプレゼントですが…。


器用だった夫

2012-06-21 22:12:12 | はがき随筆


 口笛演奏で施設訪問をしているというのを
本紙「男の気持ち」で読んだ。
 私の夫の口笛もいい音色でよく響いた。
「流浪の民」「トルコ行進曲」などを口笛やハーモニカでよく吹いていた。
私などは何度聞いても新曲は覚えられないが、
夫は初めての曲でもすぐに吹いたり、歌えたりした。
今、しきりに思うのは夫の口笛やハーモニカや歌をテープにとっておば良かったと。
 好きな絵も描く時間をいっぱい作ってあげればよかった。
木工の椅子作りなども大好きで、こちらはたくさん残してくれている。
  霧島市 秋峯いくよ 2012/6/21 毎日新聞鹿児島版掲載>
 

いくよさんの歌文集「庭椅子」のカバーに描かれた絵は、
御主人俊郎さんの作品であり、
描かれている椅子も御主人が作られたものです。
アカショウビン記

ナガグツを履いたコンダクター

2012-06-21 11:48:03 | アカショウビンのつぶやき
地元に唯一のオーケストラ。
かのやオーケストラのファミリーコンサートに行った。
会場はちびっ子たちでいっぱい、賑やかな楽しい雰囲気。

中でも笑いがはじけたのが、ちびっ子指揮者体験コーナー。



まず、指揮者のM先生に指揮法? を学び



梅雨さなか、ちびっ子たちは長靴で指揮台に上り、賢明にタクトを振る。



ちびっ子指揮者の激しいテンポの変化にも、ニコニコしながら演奏する団員。



オーケストラの伴奏で、元気にポニョを歌いました。



最後の曲は、グリーグの組曲から「朝」。
うっとうしい梅雨のさなか、すがすがしい気分でコンサートを楽しみました。




命の危機

2012-06-21 11:30:21 | アカショウビンのつぶやき




一月ほど前、強風が吹き荒れた日、イチジクが、真ん中ぐらいでポッキリ折れてしまった。
テープでぐるぐる巻きにして、様子を見たがやっぱり元気がない。
いつもの助っ人さんは「虫にやられたんでは…」と。
本当に虫が入ったらしき跡から折れている。
とうとう
「ここからまた芽をだすから、伐ろうね」と、無残にもバッサリ。

数日後、伐られたあたりから、緑のちっちゃな芽らしきものがびっしりとついているのに気付いた。
命の危機を感じた、イチジクが、ありったけの力で蘇ろうと頑張っている。




台風…

2012-06-21 11:19:45 | アカショウビンのつぶやき
 6月に上陸した台風は、死者を出す被害をもたらし日本列島を駆け抜けた。
昔は台風銀座と言われ、毎年、大きな被害を被っていた鹿児島地方。
気候変動のせいか、最近はコースから外れることが多くなった。

今回は、まともに来るのかな…と、早々に友人にお願いして雨戸を閉めて頂いた。
庭のプランターも片づけ「いつでも来い」体勢で待ったが、ソヨとも吹かず通り過ぎて行った。

ホッとしたが、後が大変。二階の雨戸は1人では開けられない。
助っ人が来て下さるまで二階は真っ暗。
「5号がまた来そうだから…」と助っ人はおっしゃる…。
その5号は、早々に熱帯低気圧に変わったのだが…。

然し同じ鹿児島でも、奄美地方、北薩地方では雨台風の被害が続出。
どうぞこれ以上の大きな被害になりませんようにと祈るのみ。


桜島とともに

2012-06-20 21:31:51 | 女の気持ち/男の気持ち


 不意に日が陰り、室内が暗くなった。慌てて空をうかがうと、怪しげな黒雲が分厚く広がっている。あれは雨雲ではない。小走りで家中の窓を閉め、半乾きの洗濯物をひったくるように取り込む。今、頭上を桜島の火山灰が通過中なのだ。
 向かいの山がみるみるうちにかすんでいく。灰はとうとう地上に降り始めた。近所のアパートの出窓にある小さな鯉のぼりが、降灰にうなだれている。旧暦で節句を祝う鹿児島では、まだ鯉のぼりが飾ってあるのだ。空き地に駐車している白い車も赤い車も、すりゴマを振りかけられたようになっている。
 思わず天井を見上げる。去年の秋に瓦をふき替えたとき、業者さんが「屋根の下にたまった灰がものすごい」といっていたからだ。雨どいも灰の重みでゆがんでいたらしい。知人の家では、雨どいに灰が詰まったのが原因で、仏壇に雨漏りがしたそうだ。
 実は灰は重い。雪のように溶けないし、雨が混じればもっと重くなって、底に吸い付いたようにたまる。しかも近ごろの桜島の元気なこと。とにかく活発に噴火している。
 しばらくすると風向きが変わったのか、薄い青空が戻ってきた。灰だらけの庭に、小鳥も戻ってきた。
 さあ、今のうちに犬の散歩に行ってこよう。それから苗物の世話も。ニガウリ、アサガオ、ミニトマト。私も負けずにこの夏を乗り切らなくては。
  鹿児島市 青木千鶴 2012/6/19 毎日新聞の気持ち欄掲載

はがき随筆5月度月間賞

2012-06-20 18:59:53 | 受賞作品
 はがき随筆5月度の入賞作は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】2日「写経」竹之内美知子=鹿児島市
【佳 作】11日「役割分担」秋峯いくよ=霧島市
     25日「バラ祭りと友情」森園愛吉=鹿屋市


月間賞に竹之内さん(鹿児島市)
  佳作には秋峯さん(霧島市)、森園さん(鹿屋市)

写経 東日本大震災の復興祈念と鎮魂のために、各地に「祈りの塔」が建立される。その浄財寄進のために写経をしたという内容です。写経は聞くところによると、一字一字心が落ちついていくもののようです。大震災支援は誰もが何かできないかと思ってはいるのですが、なかなか実現できない。それを写経という形で実現し、ご自分の安堵の気持とともに、被災者の心の安らぎを祈るというところに、私たちの3月11日以来の気持を代弁している好文章だと考えます。
役割分担 同じ自分の娘だといっても、姉と妹の性格も生き方も対照的であるところを、ご自分の日常と関係づけて描き分けた、要領よくまとまった文章です。「負うた子に教えられ」ではありませんが、子どもに指図されて暮らす生活もやはり幸福な毎日といえます。
「バラ祭りと友情」 バラ祭りといっても、庭の1本だけのバラのきですが、それが真紅の大輪をみごとに咲かせてくれたので、仲良し4人組でバラ見酒(?)を楽しんだというものです。会費500円でささやかなおつまみを用意したというのもほほ笑ましいですが、卒寿を超えてもこういう生活の楽しみ方ができるのは、やはり人生の達人というべきでしょう。
 この他に、嵐が来そうなので急いでごちそうを作って花見をしたという、鳥取部京子さんの「花見弁当会」と、マテ貝採りの詳細な描写が優れている、畠中大喜さんの「マテ貝採り」、それに、ご母堂のそつ種の祝いの席で、ひ孫に主役を奪われそうになったが、90歳のみごとな舞いで主役を取り戻したという、道田道範さんの「卒寿の舞」が記憶にのこりました。
 
 「はがき随筆」や「男の気持ち」などで活躍の霧島市の久野茂樹さんが、5月20日の毎日新聞で3首も撰ばれました。めったにないことでお喜び申しあげます。
  (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)
 

私は冷たい?

2012-06-20 18:12:31 | はがき随筆
 雨の朝、「さようなら」と言って母は逝った。
 午後は白映え、のどかな光の中で母の枕元に座った。紅をさそうと頬に触れたとたん異様な冷たさに悪寒が走った。これは母ではないと思った。妹は静かに紅筆を動かしていた。
 拒否反応と闘いながらおぞましいものに触れるように紅はけを使った私は冷たい娘だろうか。あの日から18年、今も罪悪感めいた思いが心をよぎることがある。
 あの日にタイムスリップしても同じ事を繰り返すだろう。亡きがらよりも冷たく、そして私は異常なのかしら?
  鹿屋市 伊地知咲子 2012/6/19 毎日新聞鹿児島版掲載

望みかなう

2012-06-20 17:43:17 | はがき随筆
 遠い昔、私が小4の時、休み時間に教室で遊んでいると、担任が座席替えの計画中。近づき冗談で「K君と座りたい」。K君は医者の息子で成績優秀。次の朝登校したら、なんと黒板に座席が図示。K君と2人掛け用机。先生は私の心を受け喜ぶ顔を想像された? 何も知らずK君、私の横できちょうめんに算数の計算。勉強ぶりは模範的。
 小5で転校した私はなじみの友と別れ、新校で仲間作り。K君は風の便りでエリート、大学へ進学。その後、跡継ぎをされたか音沙汰なし。童顔のK君や友人、若い先生の姿を思いうかべその頃がなつかしい。
  肝付町 鳥取部京子 2012/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

河野裕子さん

2012-06-20 17:36:08 | はがき随筆
 <60歳にしてこんなに若々しい相聞歌ができる。爪先立ちの妻のしなやかな動作が目に見えるようだ>と「毎日花壇特選」を私に授けて、歌人河野裕子さんは逝った。2年前の8月、乳がんと闘いながら、セミの鳴き声のするベッドの上で……。64歳だった。夫で歌人の永田和宏さんは「たとえば君」の中で「彼女のうなじが好きだった。もっと褒めてあげればよかった」と語った。冒頭の特選歌「スカートに素足で芝生踏む妻の爪先立ちの今なお似合ふ」を携えて、私も天国の彼女にお礼を言いたい。「歌の世界に導いてくれてありがとう」と。
  霧島市 久野茂樹 2012/6/18 毎日新聞鹿児島版掲載

6月に思う

2012-06-20 17:29:42 | はがき随筆
 2年前、6月は特別な月になった。娘の誕生日と梅雨だけの印象から、もう一つ大きな事柄が加わった。夫の命日である。もうすぐ三年忌を迎える。
 昨年は亡き夫の「はがき随筆」の年間賞と本社大会での代理の受賞、仲間の方たちからの追悼集の受贈、一年忌と行事が続き、気持が張っていたが、今はどうもいけない。絶えず虚無感に襲われる。一人になると闘病中の夫の言葉や表情が次々と浮かび涙ぐむ。そんな私を夫は喜んではいないと思い直す。
 梅雨のさなかでも出かけよう。きつめの結婚指輪もサイズを直さなくては。
  伊佐市 山室浩子 2012/6/17 毎日新聞鹿児島版掲載

こんなはずじゃ

2012-06-20 17:23:36 | はがき随筆
 主人に暇ができて始めた野菜作り。最初は苗物を買い集め、所狭しと植えて頑張っていた。楽しい事を見つけてくれたと喜んだのもつかの間。キャベツの青虫退治と雑草取りでだんだん足が遠のいていく感じ。
 「こんなはずじゃ」と私の1人農業が始まった。昨日までなかったツルが伸び、花が実になるのを見ていると、日に日にのめり込んでいくのがおかしい。
 収穫できるかわからないが「スイカとトウモロコシ、じじが作ったよ」とうまいとこどりで顔を出すと思うが、それでもいい。この達成感、充実感は私だけのもの。
  阿久根市 的場豊子 2012/6/16 毎日新聞鹿児島版掲載

「超特急」

2012-06-19 15:08:27 | 岩国エッセイサロンより
2012年6月19日 (火)

岩国市  会 員   中村 美奈恵

日曜の朝、うつらうつらしていると枕元の携帯が鳴った。近所の友人からだ。 「今日は自治会の掃除よ」
 一気に目が覚めた。時計は8時20分。えーっ。慌てて跳び起き、顔を洗う。ファンデーションぐらい塗りたいけど時間がない。素早く着替え、手ぐしで髪をとくとスコップ片手に駆けつけた。「すみませーん」

溝掃除。たまった泥をすくい、土のう袋に詰める。水を含んだ土は重く腰が痛い。空腹での作業はこたえる。手分けしながら進めると、長い溝の底が見えた。みんな汗だくだ。帰り道、友人が言う。「遅刻が目立たなくてよかったね」

  (2012.06.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

カムとの暮らし

2012-06-15 21:58:43 | 女の気持ち/男の気持ち
 カム。私の家に住む犬の名前である。近所の子どもたちは「変な名前。この犬、かむの?」と聞く。「犬の名前はカムだけど、かまないし、ほえないよ」と答えている。
 カムは千葉県・銚子の近くで生後すぐに捨てられたらしい。女子児童が拾ったが、家で飼ってもらえず、学校に連れてきた。その児童の担任だった私の次男が、もらってくれる人を探してみたが見つからず、保健所に依頼するしかないと決めた。しかし子犬が次男をじっと見つめる目にほだされ、自分で飼うことに決めたという犬だ。
 カムが6歳半になったとき、次男が大学院に入るから預かってくれ、と私の家に連れてきた。カムは賢い犬で、すぐになついた。それから8年が過ぎた。
 カムは犬小屋に入らず、玄関に居座り、居間への廊下で暮らす。妻はカムを次男の分身のように「カムさん」と呼び、座って話をする。朝の犬の散歩は妻、午後は私、夜は交代で欠かせない。散歩で会う人からは「健康なのは犬のおかげですよ」と褒められた。
 長男は「次男の唯一の親孝行は、カムを連れてきたこと」という。しかしそのカムが、命を終わらせようとしている。昨年、長命の犬を失った隣家の奥さんが「覚悟しときなさいよ。たまらん寂しさやけ」と忠告してくれた。犬は人間の心にまで住み着く生きものだったのか。私はカムの命の尊さを感じている。
  北九州市 井無田武 2012/6/15 毎日新聞の気持欄掲載

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2012-06-15 21:51:29 | はがき随筆
 もし僕が映画監督ならば僕を主演男優にする。なりたかった自分、なれなかった自分を、天然色のスクリーンいっぱいにすてきに輝かせてあげる。
 生まれ変われるチャンスを与えられ、人生の「英雄」になる。そして回り道、寄り道は人生の無駄さとつぶやく。
 もし僕が映画監督ならば今の僕を演出する。ありのままの自分を、他の誰も演技できない僕を純朴に表現する。他人に誇れる生き方ではないれどそんな「自分」が好き。セピア色のスクリーンいっぱいに僕は僕であり続ける。もし僕が映画監督で映画を撮るならば……。
  鹿児島市 吉松幸夫 2012/6/15 毎日新聞鹿児島版掲載