時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

孤宿の人(下)

2009-12-08 | 読書
加賀様は悪霊だ
丸海に災厄を運んでくる
妻子と側近を惨殺した咎で
涸滝の屋敷に幽閉された
加賀殿の崇りを領民は恐れていた

井上家を出たほうは
引手見習いの宇佐と
姉妹のように暮らしていた
やがて
涸滝に下女として入ったほうは
頑なに心を閉ざす加賀殿と
いつしか気持ちを通わせていく

水面下では
藩の存亡を賭した秘策が
粛々と進んでいた


JRの車内で読んでおりましたが
後半に突入して
爆泣しそうになり
思わず本を閉じてしまいました
辛すぎる…

宇佐や渡部達の想い
加賀殿の流罪に隠された真実…
無念です
切な過ぎます
悲し過ぎます

多くを語ることなく
しかし
慈愛の心を持って
ほうを導いた加賀殿
彼の生き様は壮絶です
武士としてあっぱれと言うしかない
されど
あまりにも非情

丸海藩の相続争いに
その立場をいい様に
利用されてしまったのが
なんとも悔しい

阿呆の‘ほう’といわれた少女が
孤宿の人・加賀殿と出会い導かれ
進むべき方向‘方(ほう)’を与えました
そして少女は
彼女を愛しんだ
今は亡き多くの人たちの‘宝(ほう)’となったのです

これまでになく
多くの人の命が物語の中で失われました
理不尽と感じる死が
余りにも多かった
なので
心静かに
ほうが宇佐と加賀殿に語りかける
ラストシーンには
救われる思いがしました
と同時に
余計に泣けた

心正しく生きること
その難しさとは
並大抵のことではない


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