庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

4 8字旋回~7 PTE

2005-01-04 20:02:00 | 大空
4 8の字旋回を使う

 上昇風の中に留まる技術の一つとして「センタリング」の他に「8の字旋回」があります。これは、斜面上昇風(リッジウインド)を利用して滞空するには欠かせない技術ですが、サーマルヒットの初期の段階でそのサーマルの性質や規模を知る上でも大いに役に立ちます。

 8の字旋回は180度連続旋回ですから、1回の旋回時間は単純に考えてセンタリング(360度旋回)の半分で済むために、仮に旋回方向を間違えてシンク側に入った場合に高度損失も半分で済むということになります。

 リフトに当たったらとりあえず1~2回8の字旋回をしてみて、最大リフトの場所で思い切ってセンタリングを始める・・というのは、或る程度安定した大きなサーマルの場合特にかなり有効な方法です。

  5 推力の使い方

 さて、パワー(推力)の使い方ですが、例えば滑空時の沈下率が≠P.5のグライダーがレベルパワーで+1.5の上昇率を保持しているのなら、アイドルパワーかパワーカットでもレベルで旋廻できる上昇風の中にいるということで、推力を使わないで上昇する為にはそれ以上の上昇率・・例えば+1で上昇を続ける為にはレベルパワー時に+2.5以上の上昇率が必要だということになります。

 上昇率が大きくなり安定するに従って、パワーを徐々に落として遂にはアイドルかパワーカットにするという方法もありますが、慣れるまでは旋回中に頻繁にパワーを上げ下げすると、推力変動によるグライダーのピッチ変動に加えて、幾つかの力作用やユニットからの音・振動も変化しますから、グライダーの姿勢変化や空間での位置変化も把握しにくくなるので、推力を使わなくても充分上昇できる上昇率になるまではレベルパワーを正確に維持することが大切です。
グライダーの滑空性能にもよりますが、およそ毎秒2~3mの上昇率になると推力無しで旋廻上昇できるようになるので、この辺りを目安にすると良いでしょう。

 センタリング初期にサーマルの端で旋廻していると乱気流や下降風に叩かれた翼のアウターサイドが潰れやすくなりますが、推力使用による翼のピッチアップによってコラプスにつながることは少ないものです。しかし、パワーカットして翼のピッチが下がるとアウター側の翼端が多少なりとも潰れやすくなるので、アウターブレークにも神経を使ってなるべく潰されないようにして下さい。もっとも、センタリング中にアウターウイングが潰されるということは、それなりにサーマルが強く、センタリング方向も間違っていないという保証みたいなものなので、喜ぶべきことかもしれません。また、正しい方向に旋廻している時は逆の場合と比べてはるかにブレークが重くなります。

  6 体重移動について

 パラグライダーの旋回では通常ブレークコントロールとあわせて体重移動(ウェイトシフト)を使います。体重移動のシステムと効果については若干複雑になりますが、ここで少し触れておきます。

 グライダーの特徴的構造は、キャノピーがラインを経て2本のライザーに繋がっていて、翼にかかる荷重はそのセンターで左右2つの部分にはっきり分かれているということです。これを少し誇張的に言い換えると、2つの翼がセンターでくっついて1つの翼を形成している・・ということで、様々な条件でそれら2つの翼にかかる翼面荷重に差が出てくると、それぞれの翼がそれぞれの飛行特性を持とうとするようになります。

 若干難しい表現になってしまいましたが、例えば右旋回の際に翼の右サイドに荷重をかけると、左サイドと比べて相対的に、まず右ライザーが下がり、それに繋がる右ラインが下がり、更に右翼が下がると共に、翼面荷重も増加するので、対気速度は増加しようとします。ところが、同時に右ブレークを引いているので、これに伴って、抗力が増加し、AoA(迎え角)が増大した状態になっていているので、大気速度は低下し、失速速度も上がってきているはずです。この2つの現象はちょっと矛盾しているし、実際のフライト上危険なことではありませんか?

 この疑問に対する答えは、結局「PG翼はなぜ旋回するのか?」という、基本的な問題に帰結するのですが、説明が煩雑になりそうなので別の機会に触れたいと思います。

 PPGでの体重移動の態様は使用ユニットのハングシステムで若干異なってきます。PPGユニットのハングシステム(吊り下げ方法)は、現在大別して4種類あります。

①ディスタンスバー、カラビナ共、肩より上にあるもの。(フレッシュブリーズなど)
②ディスタンスバーが脇の下、カラビナが肩より上にあるもの。(フライプロダクツ/レボリューションなど)
③ディスタンスバー、カラビナ共、脇の下にあるもの。(PAPなど)
④ディスタンスバーを使わないで、ハーネスに直接カラビナを付けるもの。(DKなど)
それぞれの方式でライズアップや飛行中の装着感やコントロール特性に違いがあり、それぞれに長所・短所があります。

 ハングャCントに限って比較すると、普通①∞A∞C∞Bの順に低くなっていきますが、体重移動の良否はハングャCントの位置だけで決まるわけではありません。
 PPG荷重移動はプロペラの反転トルクの利用は別として、PGの場合と同様、下半身と上半身を使う2つの方法があります。

 体重移動の要は片方のカラビナを何らかの荷重によって反対側より相対的に低くする・・ということで、下半身を使う方法なら、どのようなハングシステムでもある程度の体重移動は可能になります。それに加えて上半身でのコントロールも・・・ということになると、人間の重心位置はヘソのあたりですから、その辺りにハングャCントを置いている、③の方式が有用になります。

 もちろん、グライダーのコントロールは体重移動だけで行うものではありませんから、特にPPGの場合、ハングャCントを下げることによるライズアップの問題、飛行安定性の問題、推力伝達方式の違いや、推力使用に伴う幾つかの力作用や、ユニットなどの重量増加による荷重適応の問題・・・など、総合的に考えて、自分のフライトスタイルに最も適合する方式を選択すべきです。

  7 PTE(プロペラ反転トルク)の積極利用

 更にレベルパワーでのセンタリングに充分習熟したら、PTEの影響が出やすいハーネスセッティングにして(ウエスト・チェストベルト類をゆるめに締めたり、装備されている場合は反転トルク解消ベルトを緩める)その力作用を利用することも出来ます。 この力は相当なもので、トルクの大きいユニットではライザーを容易に10cm以上下げることが出来るので、実質的にその程度の体重移動をしたと同じ効果を得ることが出来ます。

 もちろん、通常のハーネスセッティングでも常にPTEは働いていて、左回りペラのユニットでは右旋回がし易くなっていますが、これによって更に体重移動が楽になるというメリットもあります。しかし、ルースなハーネスセッティングは多くの場合パイロットやユニットの重心位置の不安定化を招き、その他の力作用(GP・ABT)を受けやすくなるので、決して無理をしてはいけません。通常のセッティングでのレベルパワー旋廻や様々な態様のサーマルセンタリングをマスターしてから試みるようにして下さい。

 パワーを使ったセンタリングでもう一つ注意しなければならないのは、自分のグライダーやプロペラの渦流が作った後方乱流です。これによって危険な状態になることはめったにないのですが、翼がパタパタするのはあんまり気持ちの良いものではないので、特に半径が小さいレベル旋廻をしている時は気をつけてください。
乱流の正体が分かっていれば慌てることもありません。むしろそれだけ正確な円が描けているのだと考えて、なるべく早くパワーカットの安定上昇が出来るように、アウターブレークに注意を注ぎながらセンタリングに集中してください。センタリング中にインナーが潰されることはまずありません。
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