庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

ウィルバー・ライトの平和

2005-03-09 20:05:50 | 大空
「他の何にも増して、その(飛行の)感覚は、全ての神経の緊張が極限にまで達したような興奮状態と混ざり合った、いわば完全に平和な心理状態の一つである。」
<Eィルバー・ライト

More than anything else the sensation is one of perfect peace mingled with an excitement that strains every nerve to the utmost, if you can conceive of such a combination.

彼が多くの飛行の中の“どの”飛行で“完全に平和な心理状態の一つ”を得たのかは明らかではないが、ごく初期の極めて短い期間であったろうと思う。空を飛ぶことは基本的に幸せなことだが、いつも“緊張の極限”や”平和な心理状態”を経験する訳ではない。

飛行機材と人間と飛行環境・・この3要素”が“完全に”調和することはめったにないことで、私の場合、自己の全てが大気に溶け込んだような全く自由で平和な感覚を持ったことは数えるほどしかない。

1903年の初飛行から僅か9年後の1912年の冬、彼は結婚することもなく45歳の短い生涯を終える。弟のオービルはその後特許争訟で忙しくなったり、陸軍との契約でこの人類の永年の夢を戦争の具の一つにしてしまう。もちろん航空機を戦争の“愚”に変えたのは彼だけではないが・・・。

1908年、2時間20分の滞空で125kmの記録的飛行を行った頃が彼にとって最も幸せな時期であったのかもしれない。その後の航空機の発達は、本来実に多様な選択肢の中から、ちょっと無理のある歪んだ道を選択することになるからだ。


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