公民から借りてきた。
2016年から2018年にかけて、毎日新聞に連載したエッセィを一冊にまとめたもの。
読みやすい文章たけど、なかなか観察が深く、示唆に富む本でもありました。
著者は仕事で訪れたベルリンが好きになり、子供もいないこともあって夫と二人で長期滞在し、そこで仕事もし、ドイツ語学校に通い、「ゆりね」という犬も飼っている。
読みどころはドイツと日本の生活習慣、文化の違い。便利で華やかな日本、合理的で無駄のないドイツ。ドイツで暮らしていると、日本自体が巨大なショッピングモールに見え、サービスという名のもと、何にでもお金がかかる。そうです。
また戦争の記憶も、石に刻むドイツ、水に流す日本。道でペット同士を遊ばせる日本、ドッグラン以外では犬をじゃれ合わせないドイツ。何でもお金で買える日本、ガレージセールなどで品物を融通し合うドイツと、文化の比較としても面白く読みました。
まだ母親のことにも触れている。母親は強烈な個性の人で、自分の思うようにしたがり、気に入らないと怒りから子供に暴力をふるう人であったとのこと。怖くて、最近までその母親に追いかけられる夢を見ていたとか。
そんなことを日記に書いて提出するわけにいかないのでお話を作っていた。それが作家になる原点だったそうで。
なるほど、書くことについては、どんな体験も無駄ではない。幸せなこと、楽しいことよりも、苦しいことの中に書く材料が転がっていて、それが財産になる。そのことをあらためて思った。