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崇徳上皇と歌を通して親交があった西行は、保元の乱に敗れ、讃岐の地に配流された上皇のことを気にかけてい
ましたが、生前に訪れることはできず、崇徳上皇が崩御されて3年後、坂出市の王越に上陸し鎌ノ刃峠を越え、そ
の南にある経ノ田尾峠を越えて白峯御陵を詣でたとされている。
その白峰御陵で世を恨んで怨霊と化した崇徳上皇に西行法師は『よしや君 昔の玉の 床とても かからん後は
何にかはせん』と詠んでその怒りを鎮めたそうだ。
今日は丁度一年前に歩いたその鎌ノ刃峠から西の稜線上にある前山を、今日はWOC登山部のメンバーと再訪した。
スタートはその鎌ノ刃峠の麓にある厳島神社。桜の古木の並ぶ参道の鳥居を潜って坂道を登って行くと神社の駐
車場。先週とほぼ同じメンバーとひなちゃんで、まずは朱色の柱や梁と銅板の緑青の屋根が立派な社殿の厳島神
社に参拝する。
その後境内から石段を降り、城壁を思わすような背の高い石垣の横を通ってコンクリート道を登って行く。昨年
来た時にはまだ工事中だった松ケ浦池の工事は完了して、きれいな堤体ができていた。道の脇には水仙が咲き、
ミニ霊場の石仏が並んでいた。
コンクリート道が九十九折れになってくると次第に傾斜が急になってい来る。すると里山あるあるの、ワイヤー
メッシュを立てて並べた猪避けの柵が道を塞いでいた。どこの柵もゲート部分が紐で括って開かないようにして
いるのだが、ここのゲートはその鉄筋を加工して引掛けているだけで開けやすくなっていた。
大屋冨揚水場の施設の横を通りさらに登って行くと、安山岩の露岩が道の横にも表れ、正面には大屋冨のロック
クライミン場として使われている大岩壁が近づいてくる。その岩壁をよくよく見ると先般小豆島の吉田の岩場で
も見かけたダイダイゴケの一種で、岩壁の所々がオレンジ色に見える。
何度か九十九に折れて標高を上げていくと、何度目かの曲がりぱなに右に続く道がある。前回興味本位でその道
を進んで行くとロッククライミング場の岩壁の足元に着いた。その話をしていたので当然西の奥様は躊躇なくそ
の道の奥へと歩いて行く。
すると目の前に練習場のコテージ風の小屋が現れる。小屋の壁には『しわく山の会 オレンジヒュッテ』と書い
た表札?がかかっていた。
岩壁にはルートごとに名前が付けられていて、何通りもルートがあるようでボルトが打ち込まれている。小豆島
の岩壁と比べると凹凸があって登りやすそうだったが、もちろん素人には手に負えない。
ただ西の奥様がそれで黙って指をくわえているだけで済むわけはなく、一応登った風で奥様がポーズを決め込む。
石鎚の東陵でお会いした紙ふうせんさんもここで練習していたのをYAMAPにアップしていたが、日曜日とか
だと練習をしている人の姿もありそうなので、一度は実際に登っている様子を見てみたいものだ。
写真を撮ったあとひなちゃんとやっさんの待つヘアピンカーブまで戻る。そのカーブの道の下には目を疑うよう
な大量の不法投棄。その先には何十年も前の古い車も捨てられていた。
コンクリート道が稜線に出ると西に向かって道は続いていたが、反対に山道に入って行くと北側に大きなお地蔵
さんが祭られていた。実際の峠はここからさらに東に行った場所なのだが、ここでコンクリート道へと引き返す。
道標に書かれた壇の峯が前山で笹原の峯が五色台の休暇村の辺りにあるようだ。
コンクリート道を西に進んで、テープを目印に尾根へと取り付く。海岸沿いの山では表土が少なくても乾燥に強
いウバメガシが多いが、そのウバメガシの林の尾根を登って行くと次第に露岩が現れ、その先では平らなテーブ
ル尾根になった。
先週歩いた城山も同様のメサ地形で、山頂付近は讃岐岩質安山岩の崖で覆われ麓に近いほど傾斜が緩やかになり、
ミカンの栽培地として利用されている。
山頂付近は広く平らになっていて、山名標がなければ山頂だとはまず分からない。337mの標高は同じメサ地
形の屋島より少し高い。気温は先週と比べてさほど変わらないが、とにかく風がほとんどないので体感温度が随
分と違う。
記念撮影のあとは踏み跡の薄い広い尾根の樹林帯の中を、テープを目印に木々間を右に左にと避けながら西に向
かって行く。
すると尾根の右側に一つ目のパラグライダー場に出た。麓には西行法師が船で着いた王越の乃生の湾。その横に
おむずび山ぽい王越山が見える。その王越山の肩に小槌島、その沖には大槌島が見える。なんとWOC登山部では
その大槌島にチャーターの船で上陸して三角点を踏んでいる。ただそれも誰が言い出しっぺかは想像がつく。沿
岸部の里山はこんな景色が眺められるのがいい。全員でそんな景色に感心しているとやっさんが『飛んでみて』
と声をかけると、あっちゃん2号が手を広げたが、残念ただのラジオ体操に見える。
パラグライダー場の後ろには先週と同じように木にロープをぶら下げてブランコ?を造っていた。そのブランコ
にぶら下がろうとするあっちゃん1号を『ダメダメ枝が終えると!』全員が制止する。油断も隙もあったもんじ
ゃない。
一つ目のパラグライダー場からは次のパラグライダー場との間に、荷物の運搬用のモノレールが造られている。
その途中にはクレオパトラの横顔岩。(スフィンクスの横顔?)
この辺りから雪がちらつき始めた。天気予報では昼から崩れそうだったので、集合時間を1時間早くしたのだが、
気の早い雪雲がいたようだ。二つ目のパラグライダー場は先ほどと反対の尾根の西側に開けていた。
昨年はここから中讃方面の里山が見えたが、生憎の空模様で遠くの山は望めない。
ここでもやっさんが『飛んでみて!』と言うと、今度はあっちゃん1号が手を広げて走り始めたが、チョコプラ
のTT兄弟にしか見えない。
ここで雪が本降りになってきたので、ザックカバーを付けて歩き始める。尾根の地道はこの先の227m標高点
のピークの手前まで続いている。今日の山道は鎌ノ刃峠から一つ目のハンググライダー場辺りまでで、あとはほ
ぼ下道歩き。前を歩く奥様たちは途中にあるお地蔵さまに気づく様子もなくお話に夢中で歩いている。
標高点の手前では東西に降りる道と北に向かう道の交差点になっていた。ここでひなちゃんが『以前に来た時に
ここから北に向かって歩いて藪の中になって前山にたどり着けなかった』と言っている。さっきの前山は樹林帯
の中だったが決して藪ではなかった。それをしきりに藪だったはずと言っている訳が分った。全く逆の方向に歩
いていたようだ。交差点の横では家畜を飼っていたのだろうか、柵で囲まれた廃屋が一軒残っていた。
尾根の交差点からはコンクリート道になる。ここでも車で登って来られるので、違法投棄が目立った。何なら大
きな冷蔵庫まで捨ててある。
コンクリート道が尾根まで続いているという事は、以前はミカン畑もあったのだろう。その面影に石垣が尾根近
くにも残っている。そして使われていな錆びたモノレールも・・・・。
コンクリート道を下るにつれて空が明るくなってきた。前回パラグライダー場から見えた景色と同じくらい遠く
の里山も見え始めた。先週歩いた城山から続く郷師山・金山・常山。その横に背の低い笠山に角山・聖通寺山。
そしてその真ん中に一番背の高い飯野山。坂出の里山がほぼ見渡せる。
道の傍らにモノレールの荷車。随分前からずっとミカン畑や山間部の急斜面に造られたモノレールに乗ってみた
いとあこがれていた。つるぎ町の一宇の十家の集落には道路はなく、このモノレールが唯一の交通手段だった。
国道横のモノレール駅の横を通るたびに、急斜面をトコトコと登って行く姿を想像してほのぼのしたものを感じ
ていた。
こちら側のコンクリート道にも猪避けの柵があった。こちらは登りの時と違っていつもの紐でゲートが括られて
いた。その先の猪捕獲の檻になぜかタヌキの死体が横たわっていた。檻の扉は開いているのになぜ中で死んでい
るのか。毒でももられていたかな?二週続けてキツネとタヌキ。ひょっとして化かされているのかも。
空はますます明るくなってきて、瀬戸大橋もくっきり見え始めた。集合時間を1時間早めたのが返って仇になっ
たかな。朝の弱い西の奥様には恨まれそうだ。
ミカン畑を抜け県道に降りる手前に相模防大権現。白峰時の鎮守とする日本八天狗の一狗である相模坊がこの場
所にも祭られている。
相模坊大権現から県道に降り、車を停めた厳島神社へと歩いて行く。途中には広大な畑に作付けをしているビニ
ールハウスがあった。かつて瀬戸内の沿岸部では塩田が広がっていた一方で、瀬戸内式気候で年間の降水量が全
国平均の2/3程度で度々水不足に悩まされてきた。そんな香川県坂出市の沿岸部に転機が訪れたのは昭和40年代
後半の頃。塩作りの方法がイオン交換膜を用いる方法に切り替わり、塩田の一部は製塩工場などの工場用地に生ま
れ変わったほか、時を同じくして香川用水が通水し、塩田への客土によってその一部は農地に劇的な転換を果たす。
その農地の遊休農地を含む何百という圃場を近隣の農家さんから借りて「大」小作人になることで、何十haもの面
積を耕作することが可能となったそうだ。同じように規模拡大を進める近隣の農園と力を合わせ、販売、栽培、そ
の他色々なことに工夫して一年を通して田畑を耕してのが大屋冨町の木下農園グループだ。
背の低いビニールハウスの中には大根が植えられていた。『ビニールハウスで大根を作っているのを初めて見た
わ』と奥様たち。そんなビニールハウスを見ながら集落の中を歩いて行くと厳島神社に着いた。
今日は時間的に早いのと天気がイマイチなので、お弁当ではなくお店でランチにしましょうと案内していたので、
駐車場からWOC登山部の山さん行きつけのお店に移動。
ほとんど下道歩きで楽々だった今日のランチにしては完全にカロリーオーバー。分かっているけど美味しそうな
メニューを前に注文してしまって、お腹の浮き輪は減らない自業自得の半日だった。
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