里山悠々録

里山の家と暮らし、田んぼや畑、そして水墨画のことなどを記録していきます

相も変わらぬ「米食味ランキング」の怪(日本穀物検定協会とは何者)

2024年03月07日 | 田んぼ

毎年、3月初め頃になると米の関係者が「米の食味ランキング」なるものに振り回される姿が年中行事化しています。
今年もまたどこ産地の何銘柄が特Aランクに入った、落ちたで一喜一憂、誠にもって怪現象です。
小生が丁度5年前にも同様のことを投稿していました。
改めて読み返してみましたが、当時と全く状況は変わらないので、まずはそのまま再掲してみます。
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人を惑わせる米食味ランキング(2019年3月17日)
 先頃、平成30年産米の食味ランキングが発表されました。
 これは毎年一般財団法人日本穀物検定協会が全国の品種の白飯を試食して評価し、ランキングを行っているものです。
 特Aランクなるものができてから、今頃になると関係者がこの発表に一喜一憂する姿が毎年のように見られるようになりました。
 昨年は、魚沼産コシヒカリが特Aランクから外れ大きな話題になりました。
 今年、本県産の米は、ひとめぼれ、ササニシキ、つや姫と主力3品種が特Aランクを獲得し、一安心といったところですが、喜んでばかりでいいものでしょうか。ササニシキは実に23年ぶりの特A取得ということですが、来年はどうなるか分かりません。
 魚沼産コシヒカリはさすがに特Aに復活しましたが、山形県では主力のはえぬきは今年も取得できず、岩手県はひとめぼれが特Aに復活したものの力を入れている新品種(参考品種扱い)の金色の風は評価を落としました。各県の関係者はさぞかし困惑していることでしょう。
 日本穀物検定協会の食味試験は、専門の評価員20名で白飯の「外観・香り・味・粘 り・硬さ・総合評価」の6項目について、複数産地コシヒカリのブレンド米を基準米とし、各産地の品種を比較評価して、基準米同等のものを「A'」、上位のものを「特A」、「A」、下位のものを「B」、「B'」と5段階にランク付けしています。 
 かつて基準米は日本晴だったと記憶していますが、今はコシヒカリですから評価の基準は相当変わっているはずです。ブレンド米はどこの産地のブレンドか興味のあるところです。
 食味試験はあくまでも人間の目と舌で評価するわけですからどんなエキスパートでも主観に左右されることは否めません。今の品種は、昔のように量は沢山穫れるけれどもはっきりまずいといった品種は見なくなりました。
 本県のササニシキは23年ぶりの特Aということですが、私は、基準米がコシヒカリである以上、再び特Aになるのは難しいだろうと見ていました。それはおいしさの基準が違うからで、マグロと鯛ではどちらがおいしいかといったことに近いのではないかと思います。
 かつて本県のササニシキは新潟コシヒカリとともに旨い米の両横綱といわれていました。それぞれ旨さに個性があり、支持する消費者が二分されていたとも言えます。特に寿司米としてササニシキは高い支持を得ていました。
 しかし、ササニシキは低温と病気に弱く作りづらいため、平成5年の大冷害を契機に、ひとめぼれに大きく転換されました。我が家も同様です。
 ひとめぼれはコシヒカリの血が入っているので粘りが強く歯ごたえがあるため、当時、ササニシキに慣れた人はひとめぼれは顎が疲れるなどと言う人もいました。
 ところが、先日偶然テレビで米の各品種の特徴を紹介していたので見ていたら、ひとめぼれは一番あっさりしています、と紹介していたのでびっくりです。それほど、今は粘りのある餅けの強い品種ばかりになったと言うことなのか、そして、人間の舌の基準は変わっていくもの、はたまた人の主観というのはよく分からないもの、と考えさせられたことでした。
 何年か前になりますが、新米の試食会に出る機会があり、ひとめぼれ、ササニシキ、こしひかりの白飯を食べ比べて当てる催しがありました。ひとめぼれとコシヒカリは間違うかもしれないがササニシキは間違わないだろうと思ったところ、見事全部外れてしまいました。
 とかく、米は果物のように甘い、酸っぱいといったものではないので評価そのものが難しい。炊くときに、米の乾燥具合や品種にあった水の量というものがあり、釜との相性もありそうです。また、個人の好みの硬さもあるので、全く同じ条件で食味試験すれば、有利不利が出てしまうのはやむを得ないでしょう。少なくとも、今は粘りは強いほどプラスに評価されています。
 本来であれば、品種の特徴に応じた炊き方で、もっと合理的な、そして個性を評価する仕組みが必要と思うのですが。さもなければ、人を困惑させない発表の仕方を考えてほしいものです。
 来年、また同様の風景が繰り返されることでしょう。
 ちなみに、日本穀物検定協会の食味試験の釜はパナソニック製だそうですが、我が家の釜は古い安物の釜ですが違います。
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 5年前、水稲主力3品種が揃って特Aランクを獲得した本県産米ですが、今回の令和5年産米はひとめぼれ、つや姫がAランク、ササニシキがA'ランクという結果でした。
 繰り返しになりますが、コシヒカリが基準米である限りモチモチで歯ごたえのある米の評価が高くなるのは必然でしょう。
 ササニシキは風味のあるやさしい食感でべたつかず寿司米に最適の米なので対照的と言えます。したがって、ササニシキが特Aになることはないだろうと思っていました。それが5年前に突如特Aに。結局その一度きりだったのですが、実に不思議なことでした。
 今の主要な品種は殆どがコシヒカリの血が流れています。宮城県育成のひとめぼれと秋田県育成のあきたこまちは片親がコシヒカリ、山形県育成のつや姫はコシヒカリとひとめぼれの血が濃く皆コシヒカリ一族と言って良いかもしれません。ササニシキだけが孤独な雰囲気です。
 特別な猛暑だった昨年は異常年としても平成30年だけがササニシキにとって都合の良い年だったとは思えません。同様の年は他にもあったはずです。
そもそも、かつて小生が試食会でササニシキの新米を間違ったように米の味は分りにくい。果物のように甘い酸っぱいと言った旨さに際だった個性がないからです。
 昔は米の品種で美味いまずいがはっきり分る時代がありました。50年前には我が家でもササニシキ以外にササミノリやトヨニシキなどと言った品種も作っていました。味ではササニシキにかなわなくとも収量が安定していたからです。
 戦後食糧難の時代、まずは量の確保が第一、増産運動真っ盛りでした。八郎潟干拓もその一環でした。それが1970年を境に米過剰の時代へと環境は大きく変化したのです。
 さて、一般財団法人日本穀物検定協会とはどういったところなのか。
沿革を見てみると、米穀の配給制度が廃止されたのに伴い米穀流通の円滑化のために政府と民間との第三者検定機関として昭和27年に社団法人「東京穀物検定協会」が設立されたのが始まり、以後各地に社団組織の協会が設立されています。そして昭和30年に財団法人「日本穀物検定協会」に統合され、下部組織として各地に支部ができています。
 何れも農林省(当時)の肝煎で行われたものと推察され、現在の会長、理事長など多数が農水省のいわゆる天下りのようです。当然のことながら農水省の意向を反映した運営がなされていると思われます。
 米は長く国の食糧管理制度の元に置かれ、玄米の等級格付けを国が行ってきたことから日本穀物検定協会が一般に知られることは殆どありませんでした。それが次第に知られるようになったのは米食味ランキングを発表するようになってからです。米の食味ランキングは昭和46年産米からとなっていますが、これは米が過剰になり減反政策が開始されたのと一致します。国では米の量から質への転換を図ることにしたのです
 記憶も朧気ですが、昔は米食味ランキングも殆ど注目されていませんでした。今のように品種の育成が進んでおらず、品種と産地による味の差が大きかったからです。当時は本県のササニシキと新潟県のコシヒカリが美味い米の代表で米食味ランキングは顧みられることはなかったように思います。
大きく変わったのは平成6年に食管制度が廃止され新食糧法に変わった頃。各県が米の独自品種を開発するケースが多くなって品種間、産地間の競合も増大しました。かつてまずい米の代表とされた北海道はきらら397を開発し、今や良質米の産地です。
 そして、米食味ランキングに特Aなるランクが作られ徐々に注目されるようになったのです。当然農水省の誘導もあったことでしょう。当初はさして気にも留めなかった関係者もマスコミで報じられるようになり無視できなくなったのでした。
その後、さらに米の生産流通の自由度に拍車が掛かり価格はほぼフリーの状態になりました。このような環境の変化が米食味ランキングで販売の有利不利に影響を及ぼすのではと関係者が一喜一憂する事態となりました。
これがHPに掲載されている食味試験(ランキング試験)
 米の品質や味は品種だけでなくその土地の土壌や微気象、作り方にも左右されます。刈り取りの早晩でも変わってきます。また水分含量にも幅があるので炊き方や釜の特性によっても食感は変わってきます。
 しかも食味試験が人の目と舌による官能試験なので、如何にエキスパートとは言え予見が入らないとは言えません。ましてAと特Aの境界線上などではどうなのか。A判定と特A判定が10人ずつだったらどうするのだろうと考えてしまいます。最終判定をどうしているのか知りたいものです。恣意が入るのではないかと危惧するのも当然かもしれません。
 また、評価員は日本穀物検定協会HPでは20名となっていますが、新聞では100名と報じられています。どうなっているのでしょう。
 これが全国の米の食味ランキング表
「昨年、東北は異常な高温だったことから食味にも影響したのではないか」とテレビの会見でコメントしていました。それは否定しませんが、日照条件も良かったので我が家では見た目も味も例年と全く変わりませんでした。


高温とは言っても九州より東北が暑かったわけではなさそうに思います。ちなみに大分県のひとめぼれとつや姫はともに特Aランクでした(全く他意はありません)。
 しかし、僅かのサンプルの評価が何万トンの評価に影響するとしたらどうでしょう。プラスもあるしマイナスもあるのでお相子と言ってしまえばそれまでですが。そんなこともあってか、日本穀物検定協会では米の食味ランキングについて以下のように記しています。
「主な産地品種銘柄について、当協会がその供試試料を食味試験した結果に基づいて評価するものであり、流通するすべてのお米を評価しているものではありません。なお、第三者が当協会の確認を受けずに米の食味ランキングに関する情報を用いて行い、又は行っている一切の行為について、責任を負うことは出来ません。
 米の食味ランキングのランクを精米袋等に表示される事業者様へのお願い。精米袋等に特A評価を表示される場合については、「商品そのものの評価ではありません」等と表示を行い、消費者に誤解を与えるおそれのないようにしてください。不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)の不当な表示の禁止第四条で問題になる可能性があります。」
 もっともの予防線ですが、ならばもっと具体的に評価の方法や内容、決定方法について具体的に記載してもらいたいものです。
 以前記されていた釜のメーカーの記載は今回は確認できませんでした。ちなみに我が家の釜は相変わらず古い安物の釜です。これで十分美味しく炊けています。


 米の食味については米・食味鑑定士協会など民間でも独自のコンクールが行われています。また、当県では市町村レベルでササニシキ系のみのコンクールを行うなどの取り組みも見られます。
 いずれにせよ米食味ランキングも日本穀物検定協会そのものについても、米の消費拡大という本来の目的にかなったものであって欲しいと思います。










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8 コメント

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Unknown (kaz)
2024-03-08 19:51:50
クリンさんへ。
コメントありがとうございます。
ササニシキは関東圏のスーパーなどに並ぶことはもうないでしょうね。
こだわりのある寿司店とか特別な業務用と思います。クリンさんなら馴染みの寿司店で食べているのがササニシキかもしれませんよ😄
我が家の炊飯器はおふくろが使っていたものなのでいい勝負だと思います😄
無法松の一生はやはり三船敏郎ですね。阪妻版はさすがによく分かりません😄
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Unknown (クリン)
2024-03-08 19:30:20
子どものころササニシキが美味しいなと思って食べていました✨あの時の味をまた味わいたいとねがっています🐻🌈✨
お釜!!わが家のよりもずっとキレイですよ!!←わが家の炊飯器は30年くらい毎日使い続けています👍
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Unknown (kaz)
2024-03-07 16:56:58
ume724さんへ。
コメントありがとうございます。
誠におっしゃる通りですね。今の美味しいお米の基準は画一的になっていて似たようなものばかりで、しかも銘柄米にそんなに差はなくなっています。
もし目隠しをして数種食べたら殆どの人は区別がつかないと思います。それが米の特性でしょうね。
一方で用途に応じた特徴的な米もあるのでそれらは画一的な基準ではなく評価されるべきものと思います。
すべてのものを一律にランクづけする時代ではなくなっており、それが混乱のもとではないでしょうか。
米は特に味に個性が少ないせいもありますが、他の作物でも同様かもしれませんね。
いつもながら様々な料理の数々うらやましです。小生も白菜は芯の部分が一番好きです👍
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品評会の謎 (ume724)
2024-03-07 16:02:07
遅くにコメント、失礼いたします。
 
銘柄米と言われるものの特徴を見てみると、
だいたい「ふっくら、もっちり、甘みがあって、冷めてもおいしく食べられる。」
と書かれています。
果たして、銘柄米を数種類並べて食べ比べした時、
その違いがわかるのでしょうか?
私には無理だと思います。
 
また、お米はそれだけで食べるものではなく、
必ずご飯のお供とかおかずといただきます。
何に合わせるのか、どんな料理に使うのかによって、
お米の評価も変わってくると思うのですが。
  
以前、いちごの品評会を見学したことがありました。
外観(色、つや)の評価は、審査会場でいちごが置かれた場所(ライトの下かどうか)が大きく影響します。
  
また、しいたけの品評会ではおいしさの基準が
審査員によって大きく異なっていました。
ある審査員は「しいたけらしい力強い味と香りがしておいしい。」と言い、
ある審査員は「くせがないので、これならしいたけ嫌いの子供でも食べられる。」
と正反対の基準で話されていました。
  
お米、野菜、果物の品評会をそろそろ見直すべきではないかと考えていたところ、
kazmelonさんの記事を拝読し、勉強になりました。

 
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Unknown (kaz)
2024-03-07 11:55:13
コージー大阪さんへ。
コメントありがとうございます。
読んでもらえるだけでありがたいことです。
日本の稲作や農業は弱いので色んな管理を受けてきた長い歴史的背景があると言うことでしょうね。
さすが、何でも自ら修理してしまうとは驚きです👍
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Unknown (kaz)
2024-03-07 11:43:19
さくらもちさんへ。
コメントありがとうございます。
イヤーまったくもってありがた迷惑でお騒がせで困ったものですね😥
メディアと一体化してしまうのであらぬ方向に行ってしまうことが問題です😥
さすがのわんちゃんですね。白い毛並みの表現にはいつも感嘆してしまいます👍
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Unknown (コージー大阪)
2024-03-07 10:51:05
こんにちは♪

詳細は知りませんが、この手は利権絡みでしょうねぇ~
歴史的背景が分かり易かったです。
┐(´д`)┌ヤレヤレ


原子力発電等にしてもヤバい事は全て曖昧&揉み消しが、日本の現状ですね^^;
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Unknown (さくらもち)
2024-03-07 10:35:40
そもそもが個人の好みの問題であり、順番を付けること自体に私は納得が行きませんね。実際、釜や水の量、水自体の質との相性も大きく影響すると思います。
“協会”というのは仰る通り役人の天下り組織が大半なので、非常に怪しいですね。消費者のことなど考えていないことだけは確かです。メディアは国が統制してますから、まともなことは言いません。
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