私はスマートに見えるリバティ船に
乗りたかったのですが
日本の輸送船に乗せられました
京都から満州へ行くときは
神戸港から「みどり丸」という客船でした
いよいよ葫蘆島(ころとう)から日本へ引き揚げるのは
なんという船だろうと甲板を歩きながら
キョロキョロあたりを探しました
船橋の下に銘板が張ってありました
まず、明治△△年とあります
なんと古い船なんだなあと思いながら
船名を見つけて我が目を疑いました
なんと「信濃丸(しなのまる)」 と
記されています
日本海に入ってくるバルチック艦隊を
発見して、「敵艦見ユ…」と東郷平八郎元帥の
旗艦「三笠」に発信したのがこの「信濃丸」です
そして日本海海戦が始まります
… … …
ついこの間まで、戦時教育を受けていた私には
「天気晴朗なれども波高し…」とか
「皇国の興廃この一戦にあり各員一層奮励努力せよ…」など
すぐ思い浮かぶのでした
この「敵艦見ユ」と打電した歴史的な船に
乗船できたことは不思議でした
少し年配の船員さんに、このことを話すと
笑顔で私の話を聞いてくれてそれから
機関室などを案内してくれることになります