初心者の老人です

75才になって初めてVISTAを始めました。

春の児玉公園

2015年09月30日 23時02分04秒 | Weblog


春の京都では桜があちらこちらで

咲き誇り、近くでは賀茂川の堤、

八坂神社、円山公園、嵐山が昔から

有名です



満洲國ではじめての春を迎えましたが

新京ではどんな風景になるのだろう

と楽しみにしていました



新京には公園がいくつかあります

なかでも児玉公園(こだまこうえん)が

大きな公園でした



公園内に児玉源太郎(こだまげんたろう)の

銅像がありました。児玉は日露戦争で

満洲軍総参謀長を勤めました



児玉公園内のアンズの並木がなんと

京都の桜のように満開でした

公園内の池には手漕ぎボートも浮かんでいて

満開のアンズが池に映って綺麗でした








黄塵万丈(こうじんばんじょう)

2015年09月28日 21時12分08秒 | Weblog


厳しかった新京の冬もやがて

春がやってきます

朝、秋だったのに昼から

冬になる大陸性気候でしたから

春の訪れも突然です



春が訪れると地面で凍結していた

あらゆるものが解凍されます

馬や野犬などの糞は新鮮なまま

冷凍されています。

それが春になって、一斉に解凍されるのです

… … …

冷蔵庫の冷凍食品を解凍するのに似ています

例は悪いのですが解凍された汚物の

新鮮な臭いが野原にたちこめるのです

最初、私には何の臭いかわかりませんでした



次に、満洲の春の名物、

黄塵万丈(こうじんばんじょう)です

日本の春霞は黄砂(こうさ)だったとなりましたが

満洲の黄塵万丈はその黄砂の本家です

中途半端なものではありません



春の朝、窓の外を見ると砂嵐で

あたり一面真っ黄色で五里霧中です

登校するのにゴーグルをつけなくては、

目が痛くてとても歩けません。

… … …

添付写真のゴーグルは

最近のスマートなプラスチック製ですが

当時は布製でガラス窓でした



ゴーグルをつけて外を歩くと、

前を行く人が砂嵐の中に

黒くぼんやりとしか見えません。

… … …

家のほうでは、厳重な二重窓の隙間から

微細な粘土のような砂が廊下にうっすらと積もります

それを雑巾がけすると粘土の筋が床に残って始末が悪いのです

… … …

母親はぼやきながら毎日、雑巾がけしていました

… … …

現在の精密なズームレンズ付きカメラをこの砂嵐の直中へ

持ち込めばたちまち、ズームリング、フォーカスリングが

じゃりじゃりして故障するでしょう









新京と京都の市電

2015年09月27日 20時54分17秒 | Weblog


防寒服と防寒帽で毎朝、登校します

道はすっかり凍結しています

転ばないよう注意して野原を突っ切ります



野原を過ぎると市電の始発停車場の

撫松路(ぶしょうろ)を通ります

その市電に沿った道を歩いて行きます

次の停車場が

春光国民学校前(しゅんこうこくみんがっこうまえ)

です

新京は広大ですから例え一駅でも距離がありました。

登校の途中、市電が私を追い越していきます

新京の市電の集電装置はビューゲルでした

架線から集電してモーターを通って線路へ帰電する

方式です。私は初めて見ました



京都の市電は架線から1本のトロリーポールで集電して

もう1本のトロリーポールから架線へ帰電する

トロリーポール2本方式でした



京都市電でポイントのところで、架線の切り替えを

トロリーポールの紐を器用に操作している

車掌さんを見て、私も、一度やってみたいと

思ったことがありました



春光国民学校の運動場に

水を満たして用意されていた

アイススケートリンクは

真冬になって立派に

凍って完成しました

… … …

体育(体操)にスケートの授業が

ありました。

… … …

私は、ロング・ブレードの

スピード用のスケートでした

他に、短いブレードのホッケー靴を

履いているのもいました。

… … …

フィギュア靴は誰も履いていませんでした。







ドアノブを素手で触ってはダメ

2015年09月26日 20時32分34秒 | Weblog


厳冬の新京で最も注意しなくては

ならなかったことを思い出しました

… … …

外出から帰って

玄関ドアの鍵穴に

手袋を脱いで素手で

鍵をさして回すことがあります

その次、そのまま素手で

金属製のドアノブを回そうとします

… … …

これが、もっとも危険な行為だったのです

冷え切った金属製のドアノブに手が触れた途端

吸い付くように凍り付いてしまうのです



厳冬の新京で、金属の手すり、

金属のフェンス、兎に角、金属類は

素手で触っては危険なのです

… … …

京都・下鴨育ちの私には初めてのことでした



久しぶりの新雪の朝、雪景色の

写真を撮りたくなって

父親のカメラを借りました

外へ出るとき

「シャッターが凍るから撮ったらすく帰っておいで…」と

云われました。カメラはベス単(べすたん)です

… … …

…ベスト判ロールフィルム使用で単玉レンズ付き

ベスト・ポケット・コダックです…



外でブリリアント・ファインダーを覗いて

シャッターを切っていると、気のせいか

シャッター音が粘って聞こえてきました



グラフ雑誌を見ると北満(ほくまん)の

関東軍(かんとうぐん)兵士が

白色の迷彩服にスキーを

履いてカメラを下げています

父親に「このカメラのシャッターは凍らないの?…」と聞くと

「これはライカでシャッターは凍らない…」

この言葉を妙に覚えています









冷蔵庫の冷凍室

2015年09月25日 17時32分10秒 | Weblog


新京の住居すべて、二重窓になっています

冬になると二重窓の間の空気(水分)が

外側の窓に凍り付きます。

夜明けの温度変化や気温によって

窓の模様が毎日、違います

その模様が実に綺麗なのです



起床して温度計で朝の気温を確認します

-15℃と見えると今朝は寒いぞうと

覚悟して、耳までカバーする防寒帽を

被って家を出ます

… … …

新京は見渡す限り地平線の彼方まで

白い残雪の風景が続いています

あらゆるものが春まで凍ったままになります



京都・下鴨界隈の冬の寒さを例えると

冷蔵庫(電気)の冷蔵室の温度ぐらいです

満洲・新京の寒さは、冷凍室の温度と一緒です

私の冬の登下校は、冷凍室の中を

歩いていたことになります



登校の道すがら落ちている石ころを軽い気持ちで

蹴ったことがありました。

すると石ころはびくともしません

わずかな水分で道に凍り付いていたのでしょう

私はコンクリートの壁を蹴飛ばしたような衝撃と

痛みを感じました

… … …

春まで、道のあらゆるものが

冷凍室の冷凍食品状態なのでした







ペチカ

2015年09月24日 18時35分29秒 | Weblog


満洲國、冬の寒さは半端なものでは

ありません

近くの工場のボイラーから

送られてくる蒸気で

温水暖房(蒸気)が使われますが

工場が遠いところは、ペチカが使われました



第六官舎とか第七官舎と呼ばれた

クリーム色、薄オレンジ色で彩られて

それぞれペチカ用の四角い煙突(煉瓦製)が

並んでいました



居間や台所などの真ん中にペチカが

備えられていて各家庭で石炭を燃料として

暖をとるようになっていました

友だちの家に遊びに行ってチラッと

眺めただけで詳しい構造はわかりません



我が家の温水暖房(蒸気)やペチカの

燃料は石炭でした

この石炭は満洲國・奉天(ほうてん=瀋陽=しんよう)

の撫順(ぶじゅん)の石炭露天掘りから

運ばれていたのでしょう

… … …

新京特別市の冬の気温は平均-10℃ぐらいでしょうか

特に寒い日は-20℃になりました

一週間に-10℃が4日、-20℃が3日、続きました

これを「三寒四温(さんかんしおん)」と云われていました

… … …

最近、日本の冬でも三寒四温と云われることがあります

満洲からの引き揚げ者が云い始めた言葉ではないでしょうか

私の実感から日本で三寒四温は少し違うように感じています



ある日、母親が京都・下鴨の感覚で

洗濯した寝間着をうっかり、外へ干しました

干した途端に、風に吹かれて寝間着は

翻った姿で凍ってしまいました








蒸気暖房

2015年09月23日 23時36分26秒 | Weblog


我が家の暖房は

温水暖房(蒸気)でした

各部屋と台所、風呂場、手洗い場に

暖房のラジエターが備えられています

配管は直列接続です

… … …

貼付写真はラジエターです

各部屋の窓際の下に

一台取り付けられています



家の前を西に向かったところに

市場があります。その市場の隣に

大きな煙突のある工場がありました

工場の空き地には小山のごとく石炭が

積み上げられています

その工場に大きなボイラーが何基か

据えられていて、暖房用の蒸気を炊いているのです



その工場から各家庭のラジエターに

地下の配管で蒸気が送られます

各家庭のラジエターを通って温度の

下がった蒸気は再び工場へ帰っていきます



朝、布団の中で目覚めてしばらくすると

工場から蒸気が送られてきます

すると、床下の配管が

「キーン…カンカン…」

「コキーン…」と金属パイプを金槌で叩くような

音が聞こえてきます

やがて、部屋は温かくなってきます



だいぶ後になってわかってきたのですが、

蒸気暖房では

ウォーター・ハンマーとか

スチーム・ハンマーと名付けられた

現象だそうでした









冬の暖房対策

2015年09月22日 20時14分23秒 | Weblog


新京特別市の位置(緯度)は日本の

北海道あたりになります

新京の冬はすごいと聞いていました

それに一日で秋から冬に激変する

大陸性気候です

… … …

その厳寒の冬に備えて住居のどの部屋も、

風呂場、手洗いの窓までガラスの二重窓に

なっています。冬が近づくと

それぞれガラス窓の隙間を

紙テープで目張り(めばり)を

していきます。



市場で売っている3センチ巾の紙テープか

古新聞紙を細長く切ってガラス窓の隙間に

張っていきます。

… … …

テープに塗る糊は

メリケン粉を水に溶いて、それに石けんを

適当に混ぜて鍋に入れて煮立てて作ります

家族で糊をつけた紙テープをガラス窓の隙間に

張っていきます。



春先になってガラス窓からテープを剥がすのに

石けんを含んだメリケン粉の糊は

剥がしやすいと云われていました



京都・下鴨の家は障子と襖それに縁側はガラス引き戸

でしたから、冬でもすきま風が通りました

新京の住居はガラス窓の隙間全部、

紙テープで目張りしますから

密封状態になります

… … …

京都・下鴨から持ち込んだ火鉢は

一酸化炭素中毒が心配なので使えません

… … …

各部屋には温水暖房のラジエターが備え付けられています

ラジエターは部屋だけでなく、風呂場、手洗い場にも

付いていました。





新京、秋の訪れ

2015年09月21日 17時52分33秒 | Weblog


京都・下鴨国民学校から

満洲國新京特別市春光国民学校へ

転校して、初めて満洲國の夏が終わって

秋を迎えることになりました



春光国民学校の広い運動場いっぱいに

土で低い土手が楕円形に築かれました

真冬になるとスケートリンクになるのです

先生が太い長いホースで土手のなかへ

水を張っていきます

… … …

1日や2日ではとても水が張れません

運動場の土は少し粘土質で

水が溜まりやすいのでしょう



ある初秋の朝、夜明けからしとしと雨が降っていました

私はいつもの運動靴をやめて下駄を履いて登校しました

教室に入ると皆の服装がチョット違うのです

全員、綿入りの手袋、冬の外套姿なのでした

間もなく、授業が始まりました

窓の外は相変わらず雨音が聞こえています

… … …

そして、ふと気づくといつの間にか雨から雪になっているのです

午前中は秋で下校時にはいきなり冬になっているのです

これが大陸性気候というのでしょうか



あたり一面、初雪の銀世界の中、素足に下駄履きで

泣きながら帰宅しました

母親は「知らなくてごめんね、ごめんね…」と

謝っていました

… … …

母親も昼前は秋だったのに

昼から冬と一日で

激変する季節に

吃驚したのでしょう









父は満映、私は春光国民学校へ

2015年09月20日 20時57分49秒 | Weblog


父親は普通のサラリーマンのように

定時に出勤になりました。

満洲映画協会(満映=まんえい)は

満洲國の映画制作会社なのですが

父親は現場の仕事から外れたようでした

… … …

父親は京都・下鴨時代はアスファルトの町角を

歩いての出勤だったのに

新京の房産住宅では

広大な野原の背の高い雑草の中に

父親は消えていきます



私も春光国民学校に転校してからは

同じ雑草の生い茂った細い道を歩いて登校です

雑草の途切れたところに市電の停留所

撫松路(ぶしょうろ)がありました

父親は市電に乗って満映前まで乗ります

私は線路脇の広い道路を歩いて通学です



私の転校した春光国民学校は二階建てで

横に広い校舎で一階は国民学校(小学校)で

二階は師範学校が使用していました

運動場は、下鴨小学校(国民学校)の

二倍、以上の広さでした



初めての教室で先生から皆に

紹介されて、いつの間にか

春光国民学校に馴染んでいきました