新京から無蓋貨車の列車で遠路
葫蘆島(ころとう)にやってきました
列車でも食事時間になると、
世話係の人が用意していました
葫蘆島(ころとう)から次は
停泊している引き揚げ船に乗船するのですが
何時乗船できるか未定でした
… … …
ここ引き揚げ者収容所でも世話係の人が
食事の用意をしていました
献立は、野菜や豚肉を八宝菜のように煮込んで
油がどさっと入っていることもありました
この脂っこい料理が苦手の人もいたようでした
世話係の人は油をとらないと体力が
もたないよ…と云っていました
停泊している船は
洒落たクリーム色の貨物船が
何艘か並んでいました
… … …
後でわかったのですが
第二次世界大戦下、米国で
大量に建造された標準輸送船
リバティ船と呼ばれていました
遂に私たちのグループの乗船する
日がやってきました
並んでいるリバティ船の横を
通り過ぎて、古ぼけた日本の
輸送船に導かれていきました
葫蘆島からの引き揚げ船は、日本海海戦で活躍した「信濃丸(しなのまる)」でした。私は当時、年齢として中学１年(昭和８年生まれ)でしたが、新京(現・長春)には敗戦で中学校はありません。私は引き揚げ船に乗船してすぐ、艦橋のネームプレートに明治××年…信濃丸を見つけて感激しました。引き揚げ船は博多へ入港しましたが、船内に伝染病の腸チフスが発生しました。約一ヶ月停泊したのち、佐世保港に上陸しました。上陸に際して消毒薬？のＤＤＴを頭から浴びせられました。国鉄南風崎駅(はえのさき)から列車で父親の故郷、浜松へ帰ってきました…
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