けい先生のつぼにくる話

はりきゅう漢方の先生が教えてくれる健康に関する話
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なぜ治らないのか、、、、病理を観る(全体を見渡すように観る、診る)

2012-11-05 07:34:40 | 東洋医学全般
前回は病症(実際に起きている病気)の虚実とその治療のお話をしました。
これは、西洋医学の医師とほぼ同じ概念の、病名治療を施すわけです。

頭痛だったらどのツボ、腹痛だったらどのツボ、眠れなかったらこのツボ、、、、という具合にツボを選んで治療をします。或は痛いところを探って、その場所に鍼灸をしても、効果が期待できます。
まあ、それで治ってしまうことも多いのですが、だったら下痢だから正露丸、頭痛だからノーシン、眠れないから睡眠薬を飲めばよいということになります。

今回はその病気の背景である病理についてのお話です。病理、、、その病気になった背景、理由です。

東洋医学では、人体の気(ここ病理の項ではざっくりとエネルギーと意識の混合体とでも理解しておきましょう。)と血(けつ)、津液(しんえき、体内の液体のこと)とその陰陽という意味合いの寒熱(冷えや熱)が影響しあって、その割合の変化が虚実を生み出して病気の背景となります。

これらを一行で書くと、「寒熱と気、血、津液の虚実の変化が病気の背景となる。」

たとえばセキが出ているとしましょう。セキは肺やその一部でもある気管支のあたりの、熱や冷え、あるいは乾きやその反対に水分が多すぎるということも考えられます。あるいはこれらの要素が微妙に絡み合っていることも考えられます。

肺がらみだから、肺のツボをつかってセキを治しましょう。。。そしてツボの本を見て、セキのツボを探して治療をするのが素人さんです。免許を取り立てなのに修行もせずにいきなり開業をする米人治療家にありがちです。
彼らは学校の成績がとても優秀で自信に満ちているのですが、患者さんが来なくて、半年ほどで休業するかアムウェイNUSKINなどのディストリビュータになって患者さんを入会させたり、鍼灸はやめて、手かざしレイキ治療などを始める輩です。

しかし、よくその意味を考えて勉強や修行をしてきた治療家は、肺を通る経絡はどれくらいあるだろうと考えて、そこを通る経絡のなかで一番その患者さんのセキの状態と関連するものを選んでその経絡にアプローチをするでしょう。。。。これが少しプロ。。。

経絡はツボの本にをみると体にたくさんの縦線が書いてあって、たとえば「手の太陰肺経」のように、各々に臓器の名前がついているあれです。あの線が経絡と呼ばれます。ほとんどのツボはそのどれかの経絡の上にのっています。
セキだから必ず「手の太陰肺経」だ!と決めつけずに、肺を通る経絡をもじっくりと選んでせめると、より効果的です。

経絡という線は便宜上細い線で描かれています。多くの学生は「細い線だ」と思い込んでいますが、そうではありません。経絡は幅があって、厚さ(深さ)もあって、川の水ように気が流れています。本だけを読んでツボを探さずに、経絡を観て触って活きているツボを探すと、治療に厚みが出てきます。

この経絡の上にあるツボの性質をつかんで、上記の「寒熱と気、血、津液の虚実の変化」を調節すると、病気が治ってゆくのです。病理的なアンバランスがなくなるので病気でいられなくなってくるということです。

整理しますと:
セキだったら肺からきているようです。
そこで、肺や気管支を通る経絡を探しだします。
その中で一番患者さんのせきの症状に関係している経絡を使って調整します。

肺に熱があったら、熱は陽的ですので、これを発散させる方向で経絡を調整します。

でも、この熱が、体が虚している。。「たとえば足腰は冷えていて、胸に熱がある、体の液体が減っている。」のであれば、まずその虚を補って足腰を温めてから、次に熱の発散をするように調整します。

しかし、この熱が急性の熱病などで、パンパンに熱気が充満している場合は、迷わず先に熱を抜くような治療となります。夕立でぬれねずみになった直後にいきなり高熱を出しているような場合です。

要は経絡をうまく使うこと、経絡を意識してツボや漢方方剤を選ぶことです。
漢方方剤の方剤とは、たとえばウコンとか紫根(しこん)など単品の漢方薬ではなく、いくつかの漢方薬がうまくブレンドされたものをさします。

特に女性に多いのですが、朝起きたときに顔がむくんでいる方がいらっしゃいますね。
まぶたが「土偶」とか「妖怪油すまし」のようになっている状態です。


このような時は、足の甲にある、「足の陽明胃経」という経絡の第42番目のツボである「衝陽(しょうよう)」に刺激を加えると、この顔のむくみが可及的速やかに引いてゆきます。

「足の陽明胃経」の主な体表の流れは、顔の周りと鼻、そして下まぶたのあたりから、下に向って、あご、首、バストトップを下り、太ももと下腿の前外側をさらに下って、足の甲を通り、足の人差指まで下りてきています。

「衝陽(しょうよう)」に刺激を加えると、足の陽明胃経の本来の上から下に下げてゆく機能と、陽に属する経絡の発散作用が活発になって、結果的にお顔のむくみが取れてゆくのです。

心当りのある女性の皆様!朝方、お隣でぐっすり寝ている方のお目覚めの前に試してみましょう!

以上が東洋医学における病理の虚実を治療する考えの基礎です。
実はお話はここでは終わりません。
次回は、ではどうしてこの病理の虚実が起るのか、それをどうすればよいのかというお話です。
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