けい先生のつぼにくる話

はりきゅう漢方の先生が教えてくれる健康に関する話
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握手をしようと手を差し出されて、これを急にかわされると、相手は固まってしまう。。(武術の極意?)

2013-10-15 13:44:40 | 圓功禅拳、古武術
久しぶりの詠春拳のお話になりますが、米国式の詠春拳は、どうしてもチカラ相撲で、わたしはいつも力負けをしていました。
力任せの武道の練習は、時としてしなくともよい怪我をしてしまいます。

残念ながら道場長も「パワーだ、力が技なんだ!」と信じてやまない人なので、身を守るために伝統的というか本物の詠春拳の研究を始めた私でした。なんで、身を守るための武道の道場の練習から身を守らねばならないのだろう。。。。

幸い、私の患者さんの中には武道家が多いのと、私の所属している中国系の鍼灸漢方医で構成される東洋医学会CCAA(California Certified Acupuncturists Association) にも多くの武道家が在籍しているようです。
先日、あるCCAAの大先輩に詠春拳を含む南派拳術について教えを請いました。

彼は「いい質問だ!黒谷先生!」と、急に私に握手を求めてきました。
私も思わず。「いえいえ、、」といいながら握手に応じようと手を伸ばすと、彼はすっとその手を横に引いてしまいました。

こうされると、私は意表を突かれ、差し出した手をどうする事もできずに固まってしまいました。
その刹那、、この老先生は私の胸を軽くトンッと押してきました。私はそのまま後ろにたたらを踏んで転げそうになりました。完全に一本取られてしまいました。負けた気すらせずに、大負けしたわけです。

老先生いわく、「南派拳術、、特に詠春拳は女性の考えたといわれる武術だから、こういう技がたくさんある。しかし、米国に伝わっていないみたいだな」とのご意見でした。。。素晴らしい。。。

この技の呼吸は、剣術における機先を制するということです。合気道のルーツである大東流合気柔術にも「気を合わせる。そしてさっとその気を外してしまう。」という事と機先を制する後の先という呼吸を使う事によって「勝負の合気」を体現するとの事です。

私が詠春拳の道場長にこれをやるのはちょっと気が引けますし、失礼だと思い、助手さんにこれを伝えたわけです。
彼女ははるか昔の高校生のときに、千葉真一のJAC(ジャパンアクションクラブ)に大真面目に入りたいと考えていたくらいですので、こういうことは大好きです。すぐにこの呼吸を飲み込みました。

翌週、道場で手合せの練習を行っているとき、彼女と道場長が組んで練習をしているときに、早速試してみたようです。道場長と手を絡めて、相手が押し込んできたときに、ちょっとだけ抵抗するそぶりを見せて、腕を接触したまま、急にその抵抗をはずしてしまいました。すると、道場長は「あれ、相手の腕が急に押し込みやすくなったぞ、、」と躊躇した隙を見て腕の力を前に伸ばしました。そして相手の攻撃の意識を一瞬はずして、続けざまにふわっと押し返したのです。

なんと、道場長はそのまま後ろに5-6歩も、ててててっとよろけてさがってしまいました。

普段、この道場長は、弟子が抵抗したときに、その首に手をかけて力任せに引きおろして、その人の顔を無理やりに床に押し付けるようなことをする人なのですが、相手が小柄な女性ゆえ、そんなこともできず、なんともいえない渋い顔をしていました。
他の練習生たちが眼を丸くして見守る中、恥ずかしさを必死に隠しているようでした。

力を信奉していてリキむ人の動きは「起り」が読みやすい。相手から見て「あ、来るな」というのがわかりやすいし、動きの虚をつくとバランスを崩しやすいということです。

そろそろ潮時かな、、この「米国式チカラまかせ詠春拳」の道場を去る時が来たのかもしれません。

詠春拳をはじめとする多くの武術は「弱者のための護身術」であるべきものです。しかし、多くのアメリカで行われている武術は実は「強者のための弱い者いじめ術」になってしまっているのが現状です。
コメント
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