怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

FACTHULNESS

2020-10-23 14:59:04 | 
評判になった本なので、図書館で予約してかなり待たされました。
漸く順番が回ってきたので早速読みましたが、これはさすが待っただけのことはある。大いに知的興奮を呼びます。
年金暮らしでテレビを見るのが日課ですが、朝の情報番組に辟易としている身には必読の本でした。

本の最初のイントロダクションに、13問の質問があるのですが、この問題の平均正解率は地球温暖化の問題を除いた12問では2問。全問不正解の人も15%とか。
この問題に挑んだのは、無知無教養な人を選んだわけではなく、医学生、教師、大学教授、著名科学者、投資銀行のエリート、多国籍企業の役員、ジャーナリスト、活動家、政界のトップと高学歴で国際問題に興味のある人たちとか。3択なのでチンパンジーがやっても33%は正解するはずなのに。
ちなみに私もやってみましたが、多分ひっかけだろうという知恵が働いたこともあってチンパンジー並みに3分の1は正解しましたけど半分も当たりませんでした。
間違えるのは知識不足ではなくてみんな同じ勘違い、思い込みをしているから。
その勘違いと言うのは「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう」というようなもの。
しかし、たくさんのデータからの事実に基づき世界を見れば先入観とは違った世界が見えてくる。
因みに、日本人が最も正解率が低い質問は
・世界中の1歳児の中で、何らかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょうか?
A 20%   B 50%  C 80%
この問題の正解率は13%、日本の正解率は6%です。
答えはCでした。びっくりではないですか。テレビを見ればユニセフとか国境なき医師団とかがいくらかの寄付でワクチンをたくさんの子供の命を救えるとCМを流している。南スーダンとかロヒンジャの子どもたちはきれいな水さえ飲めないとか。それはその通りなのだろうが世界の80%の子どもが予防接種を受けているなんてことはテレビで見たこともない。犬が人を噛んでもニュースにならないけど人が犬を噛んだらニュースになると言うことだろうが、世界のほとんどの子どもはちゃんと予防接種を受けていますね、よかったということはニュースにならない。勘違いするはずです。
それではもう一つ日本人の正解率が低かった問題を。
・現在、低所得国に暮らす女子の何割が初等教育を修了するでしょうか?
A 20%   B 40%  C 60%
この問題の正解率は7%、日本の正解率も7%です。アフリカとか中近東とかイスラム圏では女子の教育はいまだ必要ないとされていて、まともに学校に通っていないはずなのに。確か女性の教育を訴えてテロにあったのはパキスタン、アフガニスタンでも学校がテロの標的にされているとか。
この本はこの13の問題をどうして間違えてしまうかということを10の視点から解説している。
人は往々にして世界を先進国と発展途上国というように二分割に分断して変わらない構造として理解しようとしてしまう。その方が単純明快だし、論理もすっきりしている。だが途上国は何時までも途上国ではない。徐々に経済発展をしており、貧しい途上国を脱し中間に位置するようになってきた。今や世界人口の75%は中所得の国に住んでいる!
ここでは著者は世界を4つの所得レベル
・レベル1;極度の貧困レベルで1日1ドルの所得(約10億人)
・レベル2;1日2ドルから8ドルの所得(約30億人)
・レベル3;1日8ドルから32ドルの所得(約20億人)
・レベル4;裕福なレベルで1日32ドル以上の所得(約10億人)
に分けて世界を見てみる。
そうすると世界人口のうち極度の貧困にある人の割合は過去20年でどうなったかと言うと約半分になっている。(これは問題3で正解率は7%)。悲惨なことばかりが増えているようなニュースを見ていると世界はどんどん悪くなっているかのようだが、データで見ていると世界はどんどん良くなっている!
数えきれないほどの「小さな進歩」が世界中で起きていてゆっくりと世界を変えているが、それがニュースとなることはほとんどない。因みに世界はどんどん悪くなっていると答えた人は世界各国で半数を超えている。
ところで最初に予防接種の問題を紹介したが、ワクチンが工場から子供の腕に届くまでには、ずっと冷蔵されている必要がある。と言うことは港まで冷蔵コンテナで運ばれ、病院までは冷蔵トラックが届け、病院で冷蔵庫で保管する、交通インフラ、電力、教育、医療が揃っていなければいけない。世界の多くのところでこういった物流インフラ、教育、医療システムが整備されていると言うこと。ここには大きな投資機会があるはずなのに欧米諸国の投資家たちは思い込みでスルーしてる。当然ながら、いくらかでも電気が使える人は世界に80%いるということです。これも問題の一つなのですが、正解は4人に一人、日本人では15%です。
多くの人は発展途上国、とりわけアフリカ諸国は極度の貧困から抜け出せず経済発展などありえないと思い込んでいる。だが現実にはレベル1からレベル2へ、レベル3へと着実に成長している。アジア・アフリカは中間所得層の拡大から大きな市場拡大、ビジネスチャンスが見込まれている。
子どもの数についてもよく宗教や文化の影響が言われるが、宗教別に3グループに分け女性一人当たりの子どもの数と所得を見てみるとどのグループでもレベル1の極度の貧困層は子どもの数は多く、所得が上がるに従って減ってくる。価値観とか子育ての流儀とかは少しづつだけど変わっていく。所得が上がり極度の貧困から抜け出せば、女性が教育を受けることで、夫婦の対話が進み子どもの数は減っていくのは宗教とか文化に関係なく世界共通のことみたいです。宗教的原理主義者たちにとっては許されない認識であり暴言でしょうけど。
こう書いていくと13の問題をみんな紹介したいのですけど、既に2600字ほど。いつも私のブログは長くてくどいので読む気がなくなるなどと言われているので、あとは実際に本を読んでくださいと言うことで終わります。
事実をデータに基づいてみてみれば、世界は少しづつでも進歩しており、よくなっている。読んでみて少し元気が出てくる本です。




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