図書館で何気なく文庫本コーナーを見ていたら井上ひさしの単行本未収録作品を中心にした時代小説傑作短編集という文句につられて読んでみました。
秘本大岡政談は3篇の小説が収録。
正直言ってこの大岡政談3篇で続編がないのは、これ以上この設定で書きこめなかったからか。最初の「花盗人の命運は大明葎集解にあり」はこの物語の狂言回しの市川晋太郎が主人公の「入江橋のご隠居」奈佐又助と出会い、その懐旧談を聞く仲になることから始まる。この奈佐又助は名奉行と言われた元の書物奉行奈佐勝英その人で、大岡越前守忠相の知己を得て世評高い大岡政談に関わることとなる。
ここに至るまでの江戸の書店事情とか紅葉山の御文庫の内情と書物奉行の日々の仕事については、まことに詳細で、実際にその場で見てきたような描写はさすが本の虫たる井上ひさしの面目躍如。
解説で山本一力はメルヴィルの「白鯨」に比肩しているほどです。
しかし続く「焼け残りの西鶴」「背後からの声」と続くも小説としてはちょっと突っ込みところが満載。書物奉行を身分を偽装して小伝馬町の牢屋敷に潜入させるなんて言うのは無理筋も無理筋。大岡政談の時代ミステリーとしては、謎解きもあまりにも粗い。井上ひさしとしては3作目に早くもこのスキームに行き詰まりを感じ、4作目以降の続きを書くことが出来なかったでは。本来なればもう何篇かを加え「秘本大岡政談」として単行本化されるのだろうが、この3作だけでは無理ですし、出版するに際しては、舞台の脚本をギリギリまで推敲手直しをして公演に間に合わないかという瀬戸際を何度も経験してきた井上ひさしならば大幅な手直しをしようとするに違いないけど、このスキームではその気力も余裕もなかったのでは。単行本未収録というのはちゃんと理由があるみたいです。
次の「いろはにほへと捕物帳」についても、どうも話の展開も謎解きも粗雑で、井上ひさしファンの私としては疑問符が付く作品レベル。
明治時代が舞台の「合牢者」と「帯勲車夫」については文庫本「合牢者」に収録されたことがあるとかで、私は題名にかすかな記憶がある。と言うことは昔読んだことがあるのだろうけど内容についてはまるで覚えがありませんでした。明治開化期のまだまだ落ち着かぬ政治状況の中で翻弄される者の苦い生き方が出ていて、短編を寄せ集めたものですけど文庫本として出版されているのは、それなりのレベルではあります。
それにしても泉下の井上ひさしさんは単行本にしなかったものまで未収録傑作短編集と銘打ち自分の名前を付けて出版されるのをどう思っているのか。
それでも井上ひさしファンとしては、単行本未収録となると読んでいないはずで、これは是非読まなくてはいけないと、私も図書館で見つけたらすぐに借り出していました。
秘本大岡政談は3篇の小説が収録。
正直言ってこの大岡政談3篇で続編がないのは、これ以上この設定で書きこめなかったからか。最初の「花盗人の命運は大明葎集解にあり」はこの物語の狂言回しの市川晋太郎が主人公の「入江橋のご隠居」奈佐又助と出会い、その懐旧談を聞く仲になることから始まる。この奈佐又助は名奉行と言われた元の書物奉行奈佐勝英その人で、大岡越前守忠相の知己を得て世評高い大岡政談に関わることとなる。
ここに至るまでの江戸の書店事情とか紅葉山の御文庫の内情と書物奉行の日々の仕事については、まことに詳細で、実際にその場で見てきたような描写はさすが本の虫たる井上ひさしの面目躍如。
解説で山本一力はメルヴィルの「白鯨」に比肩しているほどです。
しかし続く「焼け残りの西鶴」「背後からの声」と続くも小説としてはちょっと突っ込みところが満載。書物奉行を身分を偽装して小伝馬町の牢屋敷に潜入させるなんて言うのは無理筋も無理筋。大岡政談の時代ミステリーとしては、謎解きもあまりにも粗い。井上ひさしとしては3作目に早くもこのスキームに行き詰まりを感じ、4作目以降の続きを書くことが出来なかったでは。本来なればもう何篇かを加え「秘本大岡政談」として単行本化されるのだろうが、この3作だけでは無理ですし、出版するに際しては、舞台の脚本をギリギリまで推敲手直しをして公演に間に合わないかという瀬戸際を何度も経験してきた井上ひさしならば大幅な手直しをしようとするに違いないけど、このスキームではその気力も余裕もなかったのでは。単行本未収録というのはちゃんと理由があるみたいです。
次の「いろはにほへと捕物帳」についても、どうも話の展開も謎解きも粗雑で、井上ひさしファンの私としては疑問符が付く作品レベル。
明治時代が舞台の「合牢者」と「帯勲車夫」については文庫本「合牢者」に収録されたことがあるとかで、私は題名にかすかな記憶がある。と言うことは昔読んだことがあるのだろうけど内容についてはまるで覚えがありませんでした。明治開化期のまだまだ落ち着かぬ政治状況の中で翻弄される者の苦い生き方が出ていて、短編を寄せ集めたものですけど文庫本として出版されているのは、それなりのレベルではあります。
それにしても泉下の井上ひさしさんは単行本にしなかったものまで未収録傑作短編集と銘打ち自分の名前を付けて出版されるのをどう思っているのか。
それでも井上ひさしファンとしては、単行本未収録となると読んでいないはずで、これは是非読まなくてはいけないと、私も図書館で見つけたらすぐに借り出していました。
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