怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

有川浩「アンマーとぼくら」

2021-04-15 13:10:49 | 
私のごひいき作家のひとりでもある有川浩さんの本は図書館で見つけると借りるようにしています。
今回はこの本「アンマーとぼくら」

久し振りにおかあさんに休みに付き合って里帰りして3日間沖縄に過ごすことになった主人公(笑っちゃうけど名前は坂本龍馬と言う)。
実はおかあさんは継母で、実の母は主人公が小学生の時に亡くなっている。
物語は、おかあさんと沖縄をあちこちめぐる3日間を描く中で、実母との最後の日々の思い出となかなか受け入れることができなかったおかあさんを受け入れることができるようになるまでの日々、そして愛する妻を北海道で失って1年ほどで沖縄で再婚する大人になっても子供そのものの父親の姿が錯綜しながら進んでいく。
美しく小学校の教師だった母、がんにり患しどんどん衰弱していくのだが、父は何かと理屈をつけて中々見舞いにも来ない。母は子供だからというのだけど当然ながら強い反発を感じてしまう。さらに1年ほどして沖縄で出合った女性と結婚してしまう。
主人公は仕方なく父について行って沖縄に移住するのだが、当然ながら地元になじむまでには紆余曲折があり、継母をおかあさんと呼べるまでにも子供ながらのと言うか子供だからこその葛藤がある。
里帰りした3日間は観光ガイドをしているおかあさんに付き合って沖縄のいわゆる観光名所を回り現在とその場にまつわる思い出をフラッシュバックさせながら語られていく。
個人的には沖縄は子どもがまだ小学生低学年の頃、毎年夏になると行っていた時があり、小学生の子どもたちには不評だったけど、いわゆる観光名所もそこそこ回っていたので、そう言えばあんなんだったな~と思い出しつつ読んでいくことができました。でも当時は御嶽は地元以外ではまったく注目されていなかったので、知らずに通り過ごしたことが多かったのだろう。
ここで書かれている亡くなった母も沖縄の継母もその思い出は美しい。当時言えなかったこと言わなければよかったことも含めて美しい。
再婚して4年ほどで事故で亡くなってしまう父も、あれだけ反発していたのに、振り返れば、その姿を受け入れ分かろうとしている。
それにしても、夭折した人は美しい思い出だけが残るが、私の母のように90歳近くになり、認知障害が出て来て、日々それに付き合っていかなければいけないとなると母の思い出は訳の分からないことばかり言う姿にどんどん上書きされてしまうのでとても美しいものとは言えなくなってしまう。
私個人としては母に対してきれいな思い出を抱いたままでいたかったのですが、最近は母と少し話すとブチ切れて怒鳴ることが多い日々ではかなわぬこととなってしまいました。長生きするということはある意味残酷なものです。母にとっては息子の思い出のために生きているのではないと言いたいでしょうが、思い出とは何だろうかと考えてしまいます。
そう言うちょっと歪んだ認識があるせいか、この本の帯に「これは現時点での最高傑作ですー有川浩」と書いてあるのですが、有川さんの最高傑作はもっとありそうな気がした読後感でした。でも、途中で止めることができずに一気に読了して物語を堪能した作品でした。 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 4月10日鶴舞公園テニスコ... | トップ | 春の嵐で4月17日熱田神宮... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事