怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

又吉直樹・堀本裕樹「芸人と俳人」

2022-11-26 17:07:16 | 
毎週木曜日の夜はテレビで「プレバト」を見ている。
夏井先生の俳句のコーナーがお楽しみなのだが、最初の頃には今の梅沢富男とかフジモンとかフルポン村上とかの名人レギュラーはいなくて、いろいろな人が出てきた記憶です。一度だけ又吉直樹も出てきたこともあって一位ではなかったけど才能ありだったような…すでに芥川賞を受賞していたので、いかに夏井先生でも評価しにくくやりにくかったのでは。そのためなのか又吉が嫌がったのか分かりませんけど出場は一度だけだったと思います。
そんな又吉に俳句の基礎から句会、吟行するまでの手ほどきを俳人の堀本裕樹さんが、文芸誌すばるで足掛け2年10回にわたって行ったものをまとめて本にしました。

又吉は自由律俳句を既に共著で2冊の本(「カキフライが無いなら来なかった」「まさかジープで来るとは」)にしているのですが、いわゆる定型俳句については初心者。
師匠として堀本さんがいちから手ほどきするのですが、そこは又吉の言葉に拘りのある独特の感性が上手く響いて一味違う俳句入門になっています。
初歩からなので定型句のフォーマットから解説が始まり言葉の数え方も教えています。音を伸ばす長音は1音に数えます。拗音(小さいヤとかユとかヨ)は単独では1音に数えない。促音(小さいツ)は1音に数える。ちょっとややこしいのですが、要は五七五のリズムなので声に出して読んでみるとわかるみたい。句またがりというのは作者の思いの反映である意味リズムの勢いでしょうか。
定型でも必然性のある字余りはオッケーですが、「字足らず」には手を出さない方が無難とか。定型の基本はプレバトでもよく夏井先生が指摘していますが、テレビの中での1カットなので詳しく解説できずに結論だけという感じなのでこうやって丁寧に解説されると腹に落ちます。
季語についても解説していますが、歳時記がいかに重要かが分かります。歳時記は春・夏・秋・冬・新年と別れていると言うのも初めて知りました。歳時記によって季語に対する理解を深めておかないと俳句を理解することが出来ないと分かります。私などはこれは季語と言われても季語によっては漢字が読めないものとか、どういう情景、意味なのかさっぱり分からないものもあって、俳句を鑑賞する時には歳時記を手元において調べ調べでないといけないかも。でもまだ持っていないので今度古本屋ででも探してみようか。
定型の句を作るうえでポイントになる「切字」について、「や」「かな」「けり」をどう使っていくかも講義があります。これも夏井先生が凡人の俳句でよく指摘していることですが、使いこなしていくにはいろいろ考えなくてはいけないことがあるようです。うまく使えば、詠嘆、省略、格調の効果が出せるのですが、なかなか難しそう。
講義は進んでいよいよ又吉が夏の季語で有季定型の俳句の実作に挑戦していきます。
「廃道も花火ひらいて瞬けり」
堀本さん曰く、花火と廃道の取り合わせが新しくていい。でも「花火」という季語には「ひらいて瞬く」という意味が含まれている。花火とひらいてがかぶっていると言うこと。因みにこの句の切字は「けり」ではなく「り」。「瞬く」と言う、か行四段活用の動詞の命令形「瞬け」に「り」がくっついたものとか。
初心者は、この言葉でこれを表現したいと言う思いがこもっている個所ほど、捨てた方が成功する。「廃道も」の「も」は説明ぽい。自分の思いだけで句にするのではなく自分の造った句を一度客観的に見ることが必要で、それが推敲という冷静な作業。
又吉は「廃道」という言葉を置いてしまって、そこから外れなかったのだが、堀本先生が添削して「廃道」という言葉を柔らかく言い換えたものが
「廃れたる道に花火の影ひらく」
いろいろチェックすべき点が多くて、17音だけでも奥が深い。
二人の講義はそこから俳句の技を磨き、先人の句集を読み、選句をしていく中で、いよいよ句会にも挑戦。
句会の作法とかどうやって進行されていくのかも詳しく解説してありますが、どうもこれは私にはハードルが高そう。人の俳句を正しく鑑賞して評価するなんて、とてもその域には達していません。まずは歳時記を買って読み込むことをしなくては…
言葉に拘りのある又吉の芸人としてのネタ作りと俳句は相通じることがあるみたいです。
最後は「吟行」まで行くのですが、勝手にどこかへ行って句を詠むのはできそうですが、それでは才能なしの駄作が必定。
ハードカバーの350ページほどの本でしたが、楽しみながら学べて俳句修行でもしてみようかと思える本でした。

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