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最新研究で分かった「生まれと育ち」の残酷な事実

2022-11-19 09:32:50 | 自然
子供の将来にとって「生まれと育ち」はどちらが重要なのかという問題は、古くから研究されています。

昔は一卵性双生児の研究により、遺伝と環境の問題をいろいろ調べていました。2016年以降、遺伝と学歴に関する研究が急速に進んでいるようです。学習能力や学力は客観的に把握できませんので、ここでは最終学歴を能力の代わりに使っています。

行動遺伝学における遺伝研究の中心的手法は双生児法でした。双生児法によってどんな能力についても、遺伝の影響が50%はあるということが明らかになっています。

また体重の遺伝率は90%以上だということは分かっていますが、これは環境を変えても体重を変えるのは一般的には難しいということを示しています。しかし個人にぴったり合ったダイエット法に出会って、体重が劇的に減ることはあり得ないとまではいっていません。

2000年代初頭には、ゲノムワイド関連解析(GWAS)という手法が登場しました。GWASは異なる個人間のゲノム全領域について、遺伝的な変異のある場所と表現型との関係を調べるというものです。

それを使って「こういう遺伝的変異があると、表現型にこのくらい影響がありそう」ということをポリジェニックスコアという点数で表します。

病気以外の表現型についても、GWASで明らかにしようという試みは行われていましたが、2016年くらいまではあまり成果が上がっていませんでした。

ところが学歴に影響を与えていうと思われるSNP(スニップ、一塩基多型)がいきなり1200個以上も見つかり、SNP一つひとつの効果量は微小なものですが、足し合わせると12%にもなったのです。

つまりゲノム検査の結果によって、個人レベルの学歴について10%以上まで説明可能になってきたということです。世界各地にはゲノム情報とともに各種の身体的・生理的特徴、生体サンプル、生活状態などの情報を大規模に収集しているバイオバンクと呼ばれる研究事業があります。

こうしたデータベースには学歴も基本情報として登録されており、それらを合わせると100万人以上のデータになります。さらに2022年の最新の論文では、サンプルがさらに300万人に増え、その説明率は16%にまでなっています。

注目を集めたのはアメリカの行動遺伝学者の研究で、簡単にいえば遺伝的なポリジェニックスコアが高いほど良い学歴となっているという結果です。ここでは社会経済状況などを考慮しても、ポリジェニックスコアの高い生徒は難しいトレーニングに取り組むとしています。

現在のところポリジェニックスコアによる効果量は16%程度で、私の感覚としては個々のばらつきは大きいような気がします。ここでは将来赤ちゃんの時に遺伝子検査をすれば、最終学歴の予想が付くというような結論となっています。

これはあくまで行動遺伝学者の意見であり、私は環境の影響も大きいと思っていますが、赤ちゃんの将来予想を遺伝子でできる世界はあまり良いとは言えないような気もします。