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「人工光合成」研究の現在地

2023-12-05 10:35:19 | 化学
植物を模倣した「人工光合成」は、炭酸ガスの有効利用だけではなく、新たなエネルギー源としても注目を集めているようです。

光合成は太陽光をエネルギーとして水と炭酸ガスから有機物(糖類)を作り出す植物由来の反応ですが、30年以上前に知人の大学の助教授が人工光合成のプロトタイプができたと言って、見学に行ったことがあります。

3メートル四方ぐらいの大きな装置でしたが、太陽光を取り入れる大きなレンズ状の部分ぐらいしか記憶に残っていません。この時彼が悩んでいたのは、炭酸ガスの供給方法でした。この装置には炭酸ガスボンベから供給していましたが、自然に近くするためには空気を使いたいようでした。

しかし空気には400ppmしか炭酸ガスが含まれていません。この僅か100万中の400という濃度ではあまりにも効率が悪いのです。化学反応は分子同士の偶然の衝突によって起こりますので、ある程度の濃度が無いとこの衝突が起きず非常に遅い反応となってしまうわけです。

その点植物はこの低濃度の炭酸ガスをうまく利用しているメカニズムは非常に興味があるところです。残念ながらこの人工光合成にはどこか大きな欠陥があったようで、その後すぐ研究は中止となってしまいました。

大坂公立大学と岡山大学の研究チームが、自然光合成における水分解・酸素発生のメカニズムを明らかにしたと発表しました。光合成は複数の反応が折り重なったシステムです。

太陽光エネルギーを吸収して反応が起こる「明反応」と、その産生物をもらって炭酸ガスから糖質を合成する「暗反応」の2種の反応があります。明反応は光エネルギーにより水を分解すると、酸素と水素イオン、電子を生成します。

最初の水を分解する段階で有効な触媒が必要になり、これを「光化学系Ⅱ(PSⅡ)と呼んでいます。藻類や植物の葉の中にある膜タンパク質で、光合成による酸素分子の発生に重要な役割を果たします。

研究チームはPSⅡの結晶化に成功し、その働きを詳細に研究しました。この詳細は無機化学の専門的な話であり、私もよく理解できませんので割愛しますが、現在は70%程度まで解析ができているようです。

このように明反応についてはかなり明らかになってきたようですが、私の専門である有機化学に近い暗反応の解明はまだまだ先といえるのかもしれません。


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