ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

注目の繊維 セルロースナノファイバー

2016-02-11 10:40:10 | 化学
先日日本の養蚕業の話を書きましたが、ここでは今話題になりつつあるセルロースナノファイバー(CNF)の話です。

カイコの時繭として出している絹糸の構造などには触れませんでしたが、絹糸の成分はアミノ酸がつながったタンパク質です。我々の体を形成しているタンパク質が、カイコが作るとあのような絹糸という繊維になってしまうというのは、非常に面白いところです。ついでに皮革製品もいろいろありますが、これもタンパク質です。皮と絹糸では手触りなどの感触も大きく異なりますが、同じ成分でできています。

今回取り上げるCNFは、セルロースですので、これはグルコースという糖がつながった多糖類という分類になります。セルロースというと紙が代表的なものですが、繊維としては木綿や麻という形で繊維にもなっています。このように人間は昔からの自然の高分子をうまく利用してきました。私のようにアミノ酸や糖を実際に扱ってみると、性質は非常に異なっているのですが、うまく高分子化すると同じような繊維になるというのは、本当に自然の面白さといえます。

CNFはこのセルロース繊維を、一部機械的にまた一部化学的に解きほぐし、直径わずか数ナノメートルという細さにしたものです。ナノメートルというのは10億分の1という単位ですので、おそらく目に見えない細さといえます。これをより合わせると鉄の5倍の強度が出るというので注目されています。若干人工的な処理が入るとはいえ、素材は天然に存在するものですので、基本的に安全な繊維といえます。

ですからその用途は非常に広く、自動車から化粧品までと多岐にわたっているようです。原料は紙の元のパルプから作られますので、日本の製紙産業の得意分野ともいえます。この実用化に向けていろいろ開発が行われているようですが、その第1号としてCNFを含んだ紙おむつができたようです。これは強度ではなく、CNFを混ぜ込むことで従来より高い消臭性を実現できたといわれています。

強くて軽い性質としては、やはり車のボディーのようです。うまく組み合わせることで、車のボディーの重さを数十キロ軽減できると期待されています。ただしCNFの水溶性は高くないのですが、基本的に水系の物質であり、使うときは大体油のようなものに混合するため、色々な難しさが出てくるようです。

現在のところ問題は、同じように開発が進んでいるカーボンナノチューブに比べて、ややコストが高いことです。これも開発が進み大量生産されるようになれば、原料が日本には資源として大量にある木材ですので、コストダウンは可能になるようです。こういった先端技術開発は、日本の得意分野ですので、どんな製品が出てくるか注目しています。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿