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人類によって生み出された「人工元素」は何種類

2024-09-23 10:35:42 | 化学
私は有機化学者として元素(実際はそれからできた分子ですが)と元素を反応させ、新しい分子を作りだすという仕事をしていました。

従って多くの元素といわばなじみ深いのですが、元素自体はなかなか難しいものです。原子は現在までに118種類知られており、そのうち天然に存在するのは94種類です。どんな神秘な宇宙に行ってもこれ以外は存在しないという点が、私が宇宙に興味がなくなった理由のひとつです。

あらゆる物質は原子でできていますが、原子は陽子や中性子で作られた原子核と、周囲を取り巻く電子から成り立っています。陽子の電荷はプラス1なので、電荷がマイナス1である電子の数は足し合わせて電荷がゼロとなるように決まります。

すなわち陽子の数=取り巻く電子の数となっています。原子の持つ陽子の総数のことを「原子番号」と呼んでいます。原子の化学的性質を表わすために、異なる原子番号ごとに「元素」という言葉があてはめられました。

中性子は、元素の化学的性質には関わりありません。水素や鉄、鉛など、天然には94種類の元素があります。地上には150万種もの動植物が暮らしていますが、生物に限らずすべての物質がこれらの元素の組み合わせでできていることになります。

原子についての理解が進んでいなかった古代エジプト時代から20世紀初頭までの長い間、変色せずに加工性に富んだ金を他の物質から作る錬金術という試みが盛んに行われましたが、企てはことごとく失敗しました。

元素の変換に初めて成功したのは1919年です。アルファ粒子(ヘリウム原子核)を窒素に照射すると、陽子が飛び出してくることを発見したのです。このとき窒素が酸素に変換されました。

元素の変換とは、原子核が異なる原子核へと変化したことを指しており、この反応を「原子核反応」と呼んでいます。原子核を高速で他の原子核にぶつければ、原子核反応を起こせることが分りました。

そこで効率的に反応を起こして原子核を研究するために、原子核を高速に加速する加速器の開発が始まりました。そして1936年、発明されたばかりのサイクロトロンという加速器をを使って重水素を加速し、原子番号42のモリブデンに照射するという実験を行いました。

その結果地上では当時見つけられていなかった43番目の元素テクネチウムを発見しました。このようにしてこれまでに61番のプロメチウムと85番目のアスタチン、および93番元素のネツプニウムから118番元素のオガネソンまで29種類の元素が、人類によって生み出されました。

ただこの中の5種類は後の研究で、微量ながらも地上に存在していることが明らかになりました。

このように人類は新しい元素を作り出してきましたが、そろそろ限界のような気がしています。多分研究が進むにつれて人工元素も天然に存在することが分ってくるような気もします。


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