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「人工光合成」で温室効果ガスを削減

2021-02-01 10:33:14 | 化学
政府の温室効果ガス実質ゼロの宣言が行われ、「脱炭素」に向けて官民の動きが加速しています。

この脱炭素を考えるとどうしても二酸化炭素の排出抑制に目が向きがちですが、排出されたCO2を有効利用する研究も行われており、そのひとつが「人工光合成」となっています。

化学的には排出されるCO2を使って、プラスチックや薬品などの原料となるような有用化学物質の合成が可能となっています。種々の炭化水素(メタン、エタン、エチレンなど)、アルコール、カルボン酸、ポリマー原料などが製造できるようです。

自然界にあるCO2を利用する優れた反応といえば、植物の光合成で太陽のエネルギーを使ってCO2と水から有機化合物の一種である糖質を生産する反応として知られています。この反応を人為的に行うのが「人工光合成」の技術です。

光合成はいくつもの段階に分かれた複数の反応ですが、大まかには太陽の光エネルギーを吸収して化学反応が起こる「明反応」と、その産生物を使ってCO2から糖質を合成する「暗反応」の2つの反応に分けられます。

明反応のステップでは、光エネルギーによって水が分解され、酸素と水素イオンと電子が生じます。暗反応のステップでは、明反応で結果的に生成する水素とCO2から、多くの複雑な反応を経て糖質という有機化合物が合成されています。

このステップを模倣し、発電所や工場などから排出するCO2を原料として、糖質ほど複雑でなくとも有機化合物を合成できれば大気中のCO2を減らすことにつながります。

まず人工光合成における「明反応」では、太陽光を利用するために化学反応を促す「光触媒」が必要になります。産業技術総合開発機構(NEDO)は信州大学などと共同で、紫外線光領域ながら世界で初めて100%に近い効率で、水を水素と酸素に分解する粉末状の半導体光触媒を開発しました。

さらに技術革新が進めば、紫外光ではなく太陽光を光触媒が吸収できるようになり、人工光合成技術の実用化も現実的ななってきたといえるようです。

暗反応のステップについても、この研究グループは水から製造する水素と発電所や工場から排出するCO2を原料として、炭素数が2〜4のエチレン、プロピレン、ブテンを合成する方法をすでに研究開発中です。

また東芝は、太陽光発電による水電解から製造した水素と火力発電所の排ガスからのCO2で、メタノールを製造する人工光合成の実証事業を2018年より開始しています。

このように人工光合成については、官民を挙げて精力的に取り組んでいますが、まだコスト面などの課題は多いようです。しかしこういったCO2を有機化合物に代える技術は、CO2削減以上に温室効果ガスを減らす技術として実用化を期待したいものです。 


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