ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

ガン治療に有効な「ハイパーサーミア療法」のはなし

2021-09-05 10:52:05 | 健康・医療
弘前大学の医学部の研究チームが、「ハイパーサーミア療法」に力を注いでいるという記事を見ました。

この治療法は「温熱療法」と呼ばれ、ガン細胞は熱に弱く42.5℃で死滅するという理論に基づいたものです。

もう30年以上前ですが、私の勤務する会社がこの温熱療法の機器を開発しようとしていました。私の所属する研究所ではなかったため、どんな装置なのか見ることはできませんでしたが、いろいろ情報は入ってきました。

身体の周囲からラジオ波を照射し、ガン組織の温度を上げるだけですので患者の負担も少なく、副作用もない治療法で私がガンになったらまず試してみようと思っていました。

さて弘前大学の研究チームは、放射線治療の効果を増強する方法としてこのハイパーサーミア療法を検討しているようです。この前提として青森県がガン患者の多い東北地方の中でも飛びぬけており、75歳未満年齢調整死亡率はダントツとなっています。

青森県は日本一の短命県で、平均寿命は男女ともに最下位で、その原因は高いガンの死亡率にあるようです。しかも青森県は40,50代といった若い世代でガンによる死亡が多く、これが無くなれば4.07年ほど平均寿命が改善すると試算されています。

青森県は胃や大腸と共に、肝胆膵ガンが多く、こういった体の奥底にできる腹部臓器のガンは低酸素に強く、放射線抵抗性があります。そこでハイパーサーミアを併用することで、改善がみられることを期待しているようです。

この治療法にはいろいろ利点がありますが、まずガン細胞だけを選択的に攻撃できることです。正常な細胞は加温すると周囲の血管が拡張して血流を増し、熱を外に逃がします。ガン組織の血管は急ごしらえの脆い新生血管であるため、血管の拡張ができません。

また放射線や抗ガン剤と併用することで、それぞれの治療効果を高めることも期待できるようです。さらに免疫力がアップする可能性があります。

抗ガン剤を長く使っていると、リンパ球の状態が低下しますが、ハイパーサーミアを併用すると体温が上昇しリンパ球が活性化します。

実際の効果としては、頭頸部にリンパ節転移があり水も飲めない下咽頭ガン患者が、ハイパーサーミアを併用しながらオプジーポを使ったところ、腫瘍が消失した例も報告されています。

この治療法は手間がかからず、費用も安くて患者の負担も少なく何度でもできます。研究チームは青森県内だけでなく、東北から北海道にもこの療法を広めたいとしています。

ハイパーサーミア療法は昔から存在していましたが、併用療法で高い効果が得られるのであれば、ぜひ広げてもらいたい治療法と言えます。

医療過誤と医療費の内部調査研究

2021-09-04 10:25:18 | その他
病因での医療過誤は命に直結しているだけに注目していますが、なかなか表に出るものではありません。

名古屋大学の医学部付属病院患者安全推進部が、2011年度から2017年度の間に、名古屋大学付属病院で起きた医療過誤の中で、病院側に過失があると判断し、病院が負担した医療費を推計しました。

医療過誤の研究は原因究明や司法判断に関するものがほとんどで、今回のような研究は極めて稀となっています。ここでは病院が負担した医療費という面を強く出していますが、どのような医療過誤があったかを中心にまとめてみます。

この研究は期間内で医療過誤によって発生した医療費、発生部署、発生原因を明らかにし、対策を講じるべき優先順位を提示することを目標としています。

集計と分析にはインシデント報告を義務付ける院内のシステムを活用し、病院に院内弁護士を含む医療安全部門が「過失性あり」と判断した事例を抽出しています。この7年間に、医療過誤で発生した有害事象は合計197件でした。

名古屋大学付属病院と言えば、大病院の中でもしっかりした病院というイメージがありましたが、この件数は予想外に多いような気がします。この件数は医療従事者が医療過誤と認め報告した件数ですので、小さな医療過誤はもっと多いのかもしれません。

症例数が最も多かった発生場所は病棟(82件)で全体の41.6%を占めます。以下手術室(49件、24.9%)、外来部門(35件、17.8%)、放射線部門(22件、11.2%)と続いています。

主な原因は報告頻度の高い順に、薬剤投与ミス(63例、32.0%)、術中損傷(21例、10.7%)、検査データの誤った取得(19例、9.6%)、遺残(手術中にガーゼなどを残してしまうこと、18例、9.1%)となっています。

手術中に誤って他の臓器などを傷つけることはありそうですが、遺残というカテーテルやガーゼなどを取り忘れることがこんなにあるとは思いませんでした。

手術は完璧を求められるものでありますが、ある程度のミスはやむを得ない気もします。しかし何かを置き忘れるというのは、基本的なことができていな気がして医療機関の信頼を損なうものではないでしょうか。

この研究に当たった研究者も、カテーテル遺残、血管損傷などカテーテル治療に関する医療事故防止に注意を払うべきとしています。また薬剤投与ミスも医師だけではなく病院の薬剤師もいるはずが、チェック体制ができていないのかもしれません。

これにかかった医療費も総額3050万円で、これが多いのかどうか判断できませんが、病院に大きな損失を与えていることは確かです。

これはひとつの病院の医療過誤の詳細ですが、日本全体でみるとどんな件数になるのか、考えてみると恐ろしい研究と言える気がします。

ネコ腎臓病治療薬開発に寄付が集まる

2021-09-03 10:25:37 | 
東京大学医学系研究科の研究チームが、ネコの腎臓病の治療薬を見出したという話は、1か月ほど前にこのブログでも紹介しました。

すでに治験薬の製造のための開発はほぼ終了するところまで来ていましたが、コロナウイルスの影響で研究費不足に陥り、開発は中断されてしまったようです。

こうした経緯を伝える記事がインターネットで配信されると、わずか1カ月で東京大学への寄付が1万2600件も寄せられ、総額は1億5500万円にもなりました。これはいかに多くのネコの飼い主たちが、腎臓病で悩んでいたり苦しんだ経験があることを表しているのでしょう。

私の家でも過去に何匹か腎臓病で猫を失っていますし、現在もその予備軍的な猫が出てきてしまいました。13歳ぐらいになる猫ですが、血液検査では腎臓の数値に異常はありませんが、最近多量の水を飲むようになりました。

このネコはマーキングをする癖があるのですが、その尿の匂いが薄くなってきました。こういったことは多分腎臓病の前駆症状ではないかと思っていますが、残念ながら打つ手はなく経緯を見守るしかありません。

今回開発した治療法について簡単に書きますが、研究チームはヒトのAIMというタンパク質を研究していました。このAIMは腎臓のネフロンという組織にたまるゴミをきれいにする性質を持っています。

ネフロンにごみが溜まると、組織が壊死し、腎臓病となってしまうようです。AIMはほとんどの動物がもっていますが、ネコのAIMはこのごみを掃除する能力ないことが分かりました。そこで活性のあるAIMタンパク質をネコに投与すると、腎臓病を防ぐことができたのです。

こういった動物薬の治験はどの程度の規模で行う必要があるのかなど詳しいことは分かりませんが、やはり億単位の資金が必要になるようです。研究チームによるとこの寄付金で治験を開始すれば、順調にいった場合は2年後ぐらいには承認販売になるのではないかとしています。

ネコの腎臓病がしっかり管理できれば、現在のネコの寿命の2倍程度の30歳ぐらいまで生きるのではないかとしています。私が若干気になるのは、この治療薬がタンパク質製剤となることです。

投与法が注射しかなくなるのはそれほど問題ではないのですが、やはり価格がどこまで抑えられるかという点です。一般に化合物の製剤に比べてタンパク質製剤は、製造法や精製工程が複雑になるため、どうしても高価になってしまいます。

またこの薬のメカニズムから見ると1回打てばよいということではなく、ある程度の反復投与が必要になりそうです。

そういった懸念がありますが、いままで点滴ぐらいしか対処法が無かったネコの腎臓病に治療薬が出るというのは大きな期待が持てることです。私も東京大学に少額の寄付をしようかと考えています。

ワクチン2回接種してもでるブレークスルー感染

2021-09-02 10:26:17 | 健康・医療
コロナ感染者数は依然として高い水準にありますが、政府などの対応を見ていると減少する施策は何もないような感じがします。

私は分かりやすいというよりメディアが大きく取り上げる東京都の感染者数で判断しています。

ただ自分事ながら数字に対する感覚はいい加減なもので、500人ぐらいのころは、「このままでいくと2000人という危険な感染者数となるかもしれない」といったやりとりを友人としていました。

ところがオリンピック期間中に4000人からついに5000人を超えてしまうと、2000人台だと割と少ないと感じるようになっています。どうも政府などは、感染を収束する手段はワクチンで十分と考えているようで、何ら新たな対策は出ていません。

ところが最近になりワクチンを2回接種してもコロナに感染する「ブレークスルー感染」が報告されるようになってきました。人口の60%以上が2回接種済みというシンガポールの事例が出ていました。

保健省の発表では、7月22日に過去28日間の新規感染者1096人のうち、44%が2回接種しており、30%が1回接種していたと発表したそうです。この数値はあまりにも高い気がしますが、接種しいない人は26%となりワクチンを接種しても感染率が変わらない結果となっています。

確かにワクチンは感染を抑える効果はそれほど高くないとされていますが、いくらなんでもこの数値はあり得ないと思っています。この記事ではデルタ株の感染力が強いためとしており、3回目の接種が検討されているとしています。

この辺りはヒトの免疫システムをどう考えているのか不思議な気がします。ワクチンを接種すると抗体が作成されますが、これはタンパク質の一種です。抗体価が上昇しても、ウイルスが入ってこない限り何の役にも立ちませんので、早々に分解されてしまいます。

しかしこの抗体を作った記憶は残りますので、次にウイルスが入ってきたり2回目のワクチンを接種すれば、急速に抗体価が上がることになります。

他のワクチンを2回打てば一生効果があるというのは、別に抗体があり続けるわけではなく、抗体を作った記憶が残るからです。つまりワクチンを2回接種するのは、別に抗体価を上げるためではなく、抗体の記憶を確立させるためと思っていました。

ヒトの身体には1万種に及ぶ抗体の記憶があるとされています。これで多くの病原菌やウイルスに対抗しているわけですが、全ての抗体が準備されている等という話は聞いたことがありません。

最近のメディアでは、感染症の専門家まで抗体がどの程度で減少するかなどという話をしていますが、免疫学の基礎知識があるのかを疑ってしまいます。

少なくとも私は、3回目の接種の連絡が来ても打つつもりはありません。

腸内細菌が前立腺ガンを増殖

2021-09-01 10:26:22 | 健康・医療
近年腸の研究は非常に盛んになり、腸が第二の脳と呼ばれる働きをしたり、免疫機能の大きな役割を担っていることも明らかになってきました。

また腸内細菌叢の研究も進み、近畿大学と大阪大学の共同研究チームが、大腸ガンや糖尿病の予防効果を持つ腸内細菌が、前立腺ガンの増殖を促すという研究成果を発表しました。

前立腺ガンは高齢者に多い病気ですが、進行が非常に遅くマーカーの数値を見ながら薬物療法で済むことも多いようです。私の友人知人にも何人か前立腺ガンになりましたが、彼らのほとんどは手術を選択しており皆手術後の経過も順調で、元気に暮らしています。

ただ近年前立腺ガンの発症が増えており、脂肪分が高い欧米スタイルの食生活習慣が広がったことが、ひとつの要因ではないかと言われています。

研究チームは、前立腺ガンを発症するマウスに脂肪分の多い食事を与えて太らせると、ガンの増殖が促進されることを確認していました。しかしガンの増殖を引き起こすメカニズムは解明できていませんでした。

研究チームは脂肪分の多い食事をとり続けると、腸内フローラが変化することに注目しました。腸内細菌は腸の粘膜にびっしりと貼りついており、並んで咲いた花のようであることから腸内フローラと呼ばれています。

前立腺ガンを発症した肥満マウスに、複数の抗生物質を使い腸内細菌のバランスを意図的に変えてみました。その結果抗生物質を飲ませたマウスは、前立腺ガンの増殖が抑制されていることが分かりました。

抗生物質を飲ませなかったマウスの腸内フローラと比較すると、酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸という酸を生み出す腸内細菌の量に大きな差が見つかりました。

ガンの増殖が抑制されたマウスはこれらの腸内細菌が少なく、そこから短鎖脂肪酸を介して生産されるIGF-1というホルモンの血中濃度が低下していました。これらのマウスに短鎖脂肪酸を食べさせると、IGF-1が増え前立腺ガンも増殖しました。

短鎖脂肪酸はこれまで、大腸ガンや糖尿病、肥満への予防効果があるなど、身体に対してプラスに働くことが報告されていました。

このように前立腺ガンの増殖に短鎖脂肪酸が重要な役割をしていることが分かりましたが、良い作用と悪さをする点のどちらに注目するかは難しいところかもしれません。

前立腺ガンはそれほど恐ろしい病気でもありませんし、腸内フローラは長年の食生活でできるものですので、そう簡単に変えることはできないでしょう。やはり肥満にならないように、脂肪分を抑えるといった程度ができる対策なのかもしれません。