６月 ３日

　　　　　　　　　　　　　　（　　梅雨兆す・走り梅雨・入梅・梅雨の入り　　）



梅雨兆す書棚に空の貯金箱　　　　　　　　　　　栗田やすし



大屋根に垂るる梅雨雲鉄車輪　　　　　　　　　　沢木欣一



梅雨兆す魯迅遺品の黒かうもり　　　　　　　　　細見綾子



蛇皮線の音の湿りや梅雨に入る　　　　　　　　　藤田岳人



入梅や運河に揺らぐ常夜灯　　　　　　　　　　　武藤光晴



御岳も恵那も隠して梅雨に入る　　　　　　　　　二村満里子



膝に打つ鍼ながめをり梅雨に入る　　　　　　　　磯野多喜男



粉薬の砂噛むごとし梅雨に入る　　　　　　　　　服部萬代



糠床を混ぜて日暮るる入梅かな　　　　　　　　　青山美佐子



九条守る署名バッグや梅雨に入る　　　　　　　　井沢陽子



つゆ入りの風なまぐさし桶狭間　　　　　　　　　加藤ゆうや



瀬田川の水音荒く梅雨に入る　　　　　　　　　　内田陽子