頭をぶつけたときに、脳波を見てもらおうと考えたことはあります か?人の悪口を言うときに、「脳波でも見てもらったら!」なんて 言ったことはありませんか?実は、こういった話は脳波を誤解して いるから出る話なのです。脳波は、頭の表面に電極をあてて、脳 から生じる微弱な電圧の変化を計測したものです。電圧の変化が 起る理由は、脳の活動の主体である神経細胞が活動するときに 電気を生じるためです。他に電気を生じる例としては心臓でとられ る心電図があります。心電図と脳波は原理的に同じものです。心 電図は、心筋細胞がタイミングを合わせて一斉に電気的変化を生 じるので、大きな波となります。一方、脳の神経細胞は通常バラ バラに電気的変化を起こしているので、波の大きさはかなり小さく、 細かい波しか見えません。ですから、脳波で神経細胞の細かい動 きはほとんど分かりません。通常の脳の働き、つまり頭がいいのか、 は分からないのです!しかし、神経細胞の働きがそろっているとき には比較的大きな波が見えます。それは目を閉じて安静にして脳 の働きが静まっているときです。このときに見える波をα(アルファ) 波といいます。お気づきでしょうか。有名なα波ですか゛、α波が脳を 安静にするのではなく、脳が安静になったときに、観察されるのが α波なのです。脳がもっと静かになるともっと大きな波が見えます。 そうです、眠っているときです。脳波は、脳全体の活動のレベルを 測るものなのです。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)
夜中まで受験勉強などを続け、おなかがすいて何か食べたくなっ た経験をお持ちの方も多いと思います。勉強だけでなく、根を詰め て事務仕事を続けていると、夕方におなかが減ってしょうがなくな る人もいると思います。体はほとんど動かさない勉強や仕事で、 おなかが減ってしまうのはなぜなのでしょうか?これは、脳を使っ てたくさんの考えごとをしたからです。脳を使うと、やはりエネルギ- を消費します。脳にエネルギ-源や酸素を送るため、血液が頭に 集中することからも明らかです。考えごとをすると、頭がカッカして くることもよくありますね。脳の神経細胞の活動に利用できるエネル ギ-源は、グルコ-スだけです。神経細胞は食べ物に入っている 脂肪やタンパク質(アミノ酸)はエネルギ-源として利用できません。 ですから、脳を使うとグルコ-スがどんどん消費されます。こうして 血液中のグルコ-スは減少傾向を示します。こうなると脳もエネル ギ-不足で疲労してくるのです。さらに、血液中のグルコ-スの 減少は、脳の中の視床下部という場所にある摂食中枢を活性化さ せます。こうして空腹感を感じることになります。つまり脳を使うとお なかが減ることになるのです。でも、体は動かしていないので、実は それほどのエネルギ-補給は必要ありません。脳の疲労を回復させ るためには、グルコ-スを多く含む甘いものが効果的です。昼食後、 仕事で頭が疲れ始める午後三時ごろ、おやつとしてお菓子や甘い 飲み物を取る習慣は、理にかなっているのです。 (とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)
私たちは1日に何回もおしっこをします。飲んだ水分の量にもより ますが、1日の総量では約1・5~2・0㍑(一升ビン約一本分)に なります。もし水分を飲まないでいると、おしっこは出てなくなるの でしょうか?それは違います。水が飲めなくなって、体が危険な状 態になっても、少しですがおしっこが出ます。なぜなら、おしっこが 単に体の余った水分を出すためだけのものではないからなので すと。おしっこの重要な役割は、体の中に生じた不要な物質や 廃棄すべき物質を出すことです。おしっこは腎臓で作られます。 腎臓がだめになり、おしっこが出ない状態を腎不全といいますが、 本来は捨てられるべきこれらの物質が体にたまり、体が不調にな ります。こういう風に説明すると、おしっこの中に有毒なものがあっ て、それが体にたまってしまうという印象になりますが、それは正し くありません。おしっこに入っている不要な物質自体は毒性があり ません。この物質は体中の細胞が活動するこで生ずる「ごみ」なの です。「ごみ」は細胞から血液に捨てられます。そのままでは血液 がごみだらけになるので、腎臓で血液から「ごみ」を回収しておしっ ことして捨てているのです。腎不全となっておしっこが作られなくな ると、細胞に「ごみ」がたまり続け、直接の毒性はないはずなのに 細胞の正常な活動が損なわれるのです。ごみの不法投棄が地球 環境にいかによくないのか。おしっこの仕組みを知れば、理解でき るはずですが・・・。(とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)