複数品種一緒に作付け 上川中部 味向上、病害虫に強く
複数品種の種もみを混ぜて植えた「混植栽培 米」が静かな人気だ。「おいしい」と消費者の評 価が高いうえ、「病害虫に強い」と栽培農家も歓 迎する。品種を交ぜた栽培は「異品種混入」と みなされ、農協には出荷できないが、直売や米 穀店独自ブレンド米としてファンをじわりと広げている。コメは「き らら397」「ほしのゆめ」など単品で売られることが多いが、味や食 感、粘りなど特徴の異なる品種を交ぜるとおいしくなることが知られ ており、コメを独自に交ぜて「ブレンド米」として販売している米穀店 も多い。ホクレンも「ななつぼし」と粘りの強い「あやひめ」を九対一で 交ぜた独自ブレンド米「げんきぼし」を販売し、すし店などから好評を 得ている。「混植栽培米」はコメを交ぜるのではなく、種もみの段階 から交ぜて栽培する。上川管内東神楽町の米穀店「柳沼」は、契約 農家が2004年から「ほしのゆめ」や「あやひめ」など四品種を交ぜ て植えた混植栽培米を「北斗米ゆきのつや」(宅配料込みで10㌔ 三千五百円)として同年から販売している。当初は同町や旭川市、 同管内東川町の契約農家七戸が計7へクタ-ルに四品種を交ぜて 作付けしたが、年々規模が拡大し、今年は十六戸が「おぼろづき」も 加えた五品種を四十二へクタルに作付けし、約二百四十㌧を収穫した。 柳沼雅彦社長は「冷めても粘りがありおいしいと口コミで広がり、今で は販売量の三割が混植栽培米」と話す。減農薬米を販売する同社が、 「より農薬を減らしたい」と情報収集する中で混植栽培を知った。契約 農家が混植栽培を行う中で病害虫に強い傾向も分かり、同社の混植 栽培米の農薬使用回数は、道の減農薬、減化学肥料の認証基準の 半分ほどの4~6回に抑えている。旭川市東旭川町の市田敏行さん (56)は、20年ほど前から混植栽培に取り組む。「ブレンド米はおいし いが、コメを交ぜるとむらが出る。種もみの段階で交ぜてみよう」と思 いついたという。農協などは扱わないため直売用として作付け。健在 は十三へクタルのうち七へクタルが混植栽培米だ。市田さんは混植栽培 米に農薬をほとんど使わないが、病害虫の被害はめったにないという。 「人間もいろいろな人がいる環境でもまれて強くなる。コメも複数品種 の方が強くなるのでは」と笑う。北大農学部の幸田泰則教授(植物生 理学)は「野生の植物が雑多な種の中で育ち、強いのと同様、コメも 品種を交ぜると病害虫に強くなることは考え得る」としている。