放医研 北大などで臨床研究
がんの放射線治療に伴う組織損傷や機能障害などの副作用の起 きやすさを、遺伝子のわずかな違いで予測する手法を、放射線医 学総合研究所フロンティア研究センタ-(千葉市)の今井高志プロ ジェクトリ-ダ-らが開発した。人によって遺伝子の塩基の並び方 が一ヵ所だけ異なる一塩基多型(SNP)に着目し、放射線の影響を 受けやすい体質かどうか見分けられるSNPを五十七種類特定。患 者から採血しSNPの有無を確認することで副作用を回避する狙い で、臨床研究を来年4月にも、北大など六施設で計千人以上を対象 に実施する予定だ。放射線は手術、抗がん剤とともにがんの3大療 法。エックス線やガンマン線を当て、がん細胞を死滅させるが、体の 疲れやすさや貧血、皮膚炎、肺や腎臓など臓器の機能障害といった 副作用が起きる可能性がある。放射線の影響を受けにくい人は線 量を増やし治療効果を上げることも望め、体質に応じたオ-ダ-メ- ド治療として開発を目指している。国際原子力機関(IAEA)を中心に 六カ国程度が参加する同様の国際プロジェクトの準備も進んでいる。 研究グル-プは、人の細胞や系統が異なるマウスに放射線を当て、 皮膚損傷の状態と遺伝子の違いを解析し、放射線による影響度を左 右する遺伝子を突き止めた。これをもとに、全国約三十の大学病院な どと協力し、乳がんと子宮がん、前立腺がんの患者で、副作用の出 た人と出なかった人計約千七百人の遺伝子を調べ、出た人にだけ 共通するSNPを五十七種類見つけた。これらのSNPには、放射線 治療を始めて三ヵ月以内に副作用が出る人がいる。
一塩基多型
人間の全遺伝情報(ゲノム)は約30億の塩基対に刻まれ、遺伝子の 塩基は約22,000ある。遺伝子の塩基配列は人によって異なる部分 があり、一塩基多型と呼ばれる。病気のかかりやすさや薬の効きやす さ、酒の強さ、顔の形など体質を決定する要因と考えられ、その人に 合った医療品の種類や量を決める研究も進む。