文科省 来年度予算数倍に
文部科学省は20日のライフサイエンス委員会で、山中伸弥京都大 教授らが開発したヒト人工多能性幹(iPS)細胞の再生医療応用研 究を加速させるため、京大に研究センタ-を新設するとともに、関連 研究者を集めた「コンソ-シアム」を組織する方針を固めた。25日に 京都市内でシンポジウムを開き、研究者に参加を呼びかけるほか、 具体的な研究テ-マも公募する。iPS細胞研究の本年度の生命倫 理の研究費総額は約2億7千万円だったが、来年度は数倍以上に 増額する。コンソ-シアム内では、iPS細胞を原則として無償で提供 し合えるようにするほか、特許を確保するため、科学技術振興機構が 専門家を京大に派遣する。長期的な研究推進方針は、ライフサイエ ンス委の下に「幹細胞・再生医学戦略委員会」を設けて策定し、iPS 細胞を精子・卵子に分化させる研究の規制制度などは同省の専門 委員会で引き続き検討する。ライフサイエンス委には渡海紀三朗文 科相も出席し、「オ-ルジャパンの体制で、iPS細胞を人類のために 役立てていただきたい」と要請。委員からは、山中教授が海外の研 究機関にヘッドハンティングされる恐れがあり、給料を3倍にするなど の待遇向上も必要との意見があり文科省側は京大に検討を求めて いることを明らかにした。
「今年の成果」万能細胞2位(米科学誌)
米科学誌サイエンスは、2007年に達成された科学の10大成果を 21日付けで発表、第2位に山中伸弥京都大教授らがヒトやマウス の皮膚からつくった万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を選 んだ。受精卵(胚)を壊してつくる肺性幹細胞(ES細胞)とは異なり、 倫理面での問題が少なく、同誌は「科学的、生産的にプ-レクス ル-(大きな進展)だ」と評価。第1位は、個人によって全遺伝情報 (ゲノム)の塩基配列がわずかに異なる「ヒトの遺伝的多様性」の研 究。