゛まるかん人゛プラトーク

元気とキレイを追求すると、人生は楽しく過ごすことと・・・!?

どんどん「良い時代」に

2007-12-20 14:33:00 | 日記・エッセイ・コラム

「安全な」食べ物-東大名誉教授 養老 孟司

賞味期限切れの食品が問題になった。そうでなくても、雪印をはじ                            め、食品の表示関係の不正が多い。そういう問題がちゃんと摘発さ                            れるのだから、日本社会もずいぶん規則どおり、きちんとしてきたと                           思う。これからも、その意味でどんどん良い時代になっていくであろ                           う。私が育った時代は食糧難で、食べ物があれば幸いだった。あの                           ころ、賞味期限ってあったかしら。食べ物があれば、アッという間に                            食べてしまう時代だったから、食べ物を見た瞬間がつまり賞味期限                           だった。大勢の兄弟でもいようものなら、それで当然だった。目に入                            ったら即食べないと、だれかに食べられてしまう。いまはそんな心配                           はない。いい時代になった。これからもどんどん良くなるであろう。若                           い人は信じられないだろうが、お米なんてまったくなく、みそ、しょうゆ                           うもない時代だった。私が食べられたものはカボチャとサツマイモだ                            け。だからこの二つは、もう私は食べない。出てきたら、かならず残                           す。やっとお米が食べられるようになり、お正月におもちが食べられ                           る時代になった。そのおもちを大切にしまっておくと、カビが生えた。                           その青いカビを落としておもちを食べた。カビの全部は落ちなかったと                          思うが、私の母親は医者だったから、ペニシリンが青カビから作られ                           ることを知っていた。きっと年中、オデキをつくっていた息子の健康を                           考えて、ペニシリン入りのおもちを食べさせていたのであろう。親の                            気持ちはありがたいということが、この年齢ににってようやくわかる。

製造年代不詳

辻調理師専門学校をつくった辻静雄さんに、以前ごちそうになったこ                           とがある。おいしいものをさんざん食べさせていただいて、最後に食                           後酒としてコニャックが出た。レッテルを見ると、ア-ジュ・アンコニュ                           とフランス語で書いてある。年代不詳という意味だというくらいは、私                           でもわかった。ひどいものである。当時は作った時期もわからないも                            のを、日本人に売りつけていたらしい。たいへん高価なものだったと                           思うが、おいしかったからどんどん飲んだ。いまはそんなことはあるま                          い。賞味期限が書いてあるはずである。作った年代が不詳な飲み物                           なんて、人に飲ませるものではないと思う。まだどこかにあるかもしれ                          ないが、連絡してくだされば、私が引き取ってあげてもいい。懐かしい                          から大切にとっておきたい。私事だが、今年は古希になった。家内は                          還暦である。どちらも老眼だから細かい字は見えない。ときどき賞味                           期限から数年遅れの缶詰なんかを食べさせられる。娘はまだ目が見                          えるから、すぐに気がついて、お母さん、ダメじゃないの、としかってい                         る。いちおう私は科学の知識がある。化学変化の速度は、温度が10                          度高いと二倍になる。それなら常温で2年もつものなら、冷蔵庫では4                          年以上はもつだろうと思う。食品の変化はおおかた化学変化に違いな                          いからである。そう思って家内の味方をするが、若い人の勢いにはか                          なわない。

健康にも留意

いい時代になった。安全なものしか、食べられないようになってい                            る。将来は私たち夫婦のような、目の悪い老人のために、賞味期                            限切れの食べ物を食べようとすると、ブ-ッとブザ-が鳴るように                             なるだろうと思う。目が悪い弱者のことを考慮するのは、福祉として                           当然だからである。食品に限らず、健康に留意することが、ごく普                             通になった。ここでも良い時代になりつつあると思う。たばこはめっ                            たなところで吸えないし、来年は東京都のタクシ-も禁煙になるとい                          う。私の住んでいる神奈川県はすでに夏ごろから禁煙になっている。                           とてもすばらしい進歩だと思う。こうしてたばこも酒もだんだんなくなっ                           ていくに違いない。私が通った中学と高校はカトリック系で、ドイツ人                           の神父さんが校長だった。この学校の生徒だったころには、もちろん                           酒もたばこもやらなかった。私が育った理想の青春時代に向かって、                          日本社会全体が動きつつある。古希の老人も、これなら安心して死                           ねるというものであろう。思い残すことはない。

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