あしたはきっといい日

楽しかったこと、気になったことをつれづれに書いていきます。

息もできない

2011-02-02 23:41:48 | 映画を観る

何気なく覗いたwebでこの映画を知り、すぐに観に行きたくなった。別に、数々の映画賞を獲得したからという訳ではなく、そのタイトルと数点の写真を見て心が掴まれた。

映画『息もできない』は、冒頭から暴力シーンの連続だ。さらに、主人公初め登場人物たちはみな汚い言葉を吐き捨てる。普段なら見ないであろう映画だと思いつつ、すぐにその世界に惹き込まれていった。

主人公のサンフンも、ふとしたきっかけで知り合ったヨニも、そしてその他の登場人物の誰もが心の奥に何か傷を負っている。そして、その傷を癒すためなのか、男たちは暴力を振るう。その連鎖は、世代を超えてまた彼らの心の傷となって残っていく。そこが観る側にとっても痛々しく、また自分が今置かれている境遇を振り返ってみてしまう。

ハッピーエンドはないと思いつつ、そのエンディングは悲しいものだった。それでも、後味の悪さだけが残るような映画ではなかった。サンフンは、ヨニと出会わなければきっとずっと、深く暗い場所に沈んでいることしかできなかっただろうから。ただ、ヨニのこれからはどうなってしまうのかが気になった。

サンフンを演じたヤン・イクチュンさんは、自らメガホンを取ったこの作品を「自分のためにつくった」と言っている。資金難に自宅まで手放してこの作品を作ろうとした思いがスクリーンを通じて伝わってくるような、そんな迫力を感じた。そして、ヨニを演じたキム・ヨッピさん。彼女もものすごく魅力的だ。

思いがけずこの作品に出会えたことを嬉しく思う。こんな作品がもっと現れれば、ミニシアターの衰退は防ぐことが可能なのでは…なんて思うが、僕らには何ができるのだろう。

そう、シネマライズのレイトショーは金曜まで。で、最終日は上映前にヤン・イクチュン監督のトークイベントが開催される。翌日にはシネマート新宿でも開催されるそうだ。彼の次の作品はいつ公開されるのだろうか、今後も注目していよう。

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