妹と姪を家まで送った後、夕方になり床屋さんに行った。
途中、線路際にある屋台のやきとり屋さんが出ているかどうかを覗いてみると、いつも置いてある屋台も、壁にあった張り紙もなくなっていて、どうしたのかと思いつつ床屋さんに入った。
タイミングを見計らいながら、やきとり屋さんのことを尋ねてみると、屋台を営んでいたおじさんは今年に入って亡くなられていたと教えてくれた。行きがけに何となく予想していたことだったが、それが事実であることを知るとやはり寂しい。
子どものころからよく訪れていた。その頃は自転車だったが、自動車を買うとどこかに出かけた帰りによく寄った。たれはちょっと濃かったが、かつてタモリさんも来たというくらいの、おいしいやきとり…やきとんだった。線路際の桜が満開になるころには大忙しだった。そう、妹の結婚式の夜、翌日新婚旅行に行く本人も相手を置いて家に帰ってきて、親戚と共におじさんの焼いたやきとりが並ぶ食卓を囲んだ。
数年前には女の子が手伝いに来ていたが、最近は彼女も社会人になったため、再びおじさん一人で屋台を切り盛りしていた。
いつも訪れれば「ありがとう」の声を掛け合っていたが、改めてお礼を言おうにもその術はない。お線香をあげに行くような縁があったわけでもないし、どこに住んでいたのかも知らない。保健所の許可証に書かれていた名前も住所も、よく見ていた訳ではなかった。
でも、人との繋がりなんてそんなものなのかもしれない。だから、その時その時を大切にしなければならない。
おじさんの「ありがとう」の顔が思い浮かぶ。そのことは、繋がりがあったという証明になるだろうか。