あしたはきっといい日

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ホテルローヤル

2020-12-06 20:26:13 | 映画を観る
映画『ホテルローヤル』を観た。

波瑠ちゃん主演で松山ケンイチさんが共演というのが観たいと思う決め手になりムビチケを購入したけど、毎度ながら買うと安心してしまい、すぐに観に行こうと思わずにいてしまい、気が付くと上映終了が迫っていて、上映時間の選択肢も限られてしまう。この作品も10日までの上映になってしまい、慌てて予定を組んで出掛けた。

原作は桜木紫乃さんの小説で、直木賞受賞作だそうだけど、「受賞作」を読む理由にしていないからか、桜木さんのこともこの作品のことも知らず、だからこそ映画の世界にどっぷり浸かることができたのかもしれない。

舞台は北海道・釧路湿原近くにあるラブホテル「ホテルローヤル」。経営者の一人娘である雅代は大学受験に失敗し、望まない形ではあるけど家業を手伝い始める。その目的のためにだけ存在するような場所に集う人たちのそれぞれの想いと、多感な時期をそんな場所で過ごした雅代の心の移ろい。そして、両親やそこで働く人々の人生に、自分の気持ちのありようをなぞっていた。僕の人生に同じようなシーンはなかったけど、それでも、どこかその気持ちが痛いほど伝わってくるようだった。

ある事件をきっかけに、ホテルローヤルと雅代の人生に変化が求められる。痛ましい事件の当事者に対し、僕は「良かったね」と思えた。人って、自分の存在を認められないことが最も辛いことだと思うから、最後にそれを認め合えたのだと思えば、彼らが選んだ結末は痛ましいけど、幸せなものになったのではないかと。

そして、松山ケンイチさん演じる「えっち屋さん」のどこまでも優しいところが、雅代の心を傷付け、それが彼女の背中を押す。そんな姿に、痛みを感じることから逃げ続け、いつまでも前に踏み出せないでいる僕の意気地なさを改めて思った。

「体を使って遊ばなきゃならない時がある」というえっち屋さんの台詞は、体を重ねることも、いや、誰かと会うことも難しい今の状況と重ねると余計に実感される。アオハルではないけど、とても辛いときに誰かとただ手を繋ぐだけでもと、そんな思いを募らせてみたものの、そうしたいと思う相手が今はいない。いや、思い浮かべた人はいるけど、もうすっかり縁遠くなってしまった…

波瑠ちゃんは『弥生、三月』に続き、素敵な役に出会い、見事に演じ切ったと思う。歳を重ね凛とした佇まいに情感を纏う彼女の更なる活躍が楽しみだ。

エンドロールに重ねられた、Leolaさんが歌う主題歌『白いページの中に』が心の奥に優しく響き、潤んだ眼を誤魔化そうと足早に劇場を後にした。

この冬休み、桜木紫乃さんの原作本を読んでみよう。

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