ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

『東京奇譚集』

2006-06-17 | 読むこと。
村上春樹氏の短編集です。

ハリポタの『謎のプリンス』を読んだあと『不死鳥の騎士団』を読み返し、もう一度『謎のプリンス』を読もうと思っていたのですが、春樹ファンの長女が図書館で借りてきて、本棚にあるのがずっと気になっていたのです。
もうすぐ返却日、というので、こっちに浮気してしまいました
これでハリポタから遠ざかってしまったなあ・・・。


この作品は五つの短編からなっていますが、これらをひとつひとつ説明するのは、とてもむずかしいように思えます。
奇譚とは 不思議な、あやしい、ありそうにない話。しかし、どこか、あなたの近くで おこっているかもしれない物語 と書かれています。その雰囲気は読まないと味わえないというか・・・、そんなこと言ったら感想なんて書けないわけですけれど。

春樹氏の作品にしては珍しく(と思うのですが)、ほとんどが三人称で書かれています。そのせいか、いつもと少し違う印象を受けました。主人公が「僕」とならないだけで、これだけ距離感が違うんですね。今までいろんな小説を読んでいて、そういうこと意識したことがありませんでした。

私が好きなのは『ハナレイ・ベイ』。
サーファーの息子を鮫に襲われ亡くしたサチが、その現場であるハナレイ・ベイで過ごす日々が描かれています。夫を早くに亡くし、ジャズピアノで生計をたてているサチは、私から見てもとてもカッコイイおばさんです。誰にも頼らず、ひとりでてきぱき物事を処理できて、ユーモアもあって、たぶん力にも屈しない。
そんな彼女がひとり息子を失うわけです。たとえろくでもない息子であったそしても。彼女の深い悲しみや喪失感が、さばさばとした彼女の性格や淡々とした描写の中に、時おり感じられます。
ある年、息子と同じくらいの年のサーファーと知り合います。そして、彼らから不思議なことを聞くのですが・・・。

『偶然の恋人』も好きでした。話が穏やかで優しくて。
あと『日々移動する腎臓のかたちをした石』の女性が謎めいていて印象的。

全体的に読みやすく、読後どうしようもない喪失感を感じたり、迷路に迷い込んだような不安感に襲われることはありませんでした
会話の部分がとてもよくて、『ハナレイ・ベイ』のサチや『日々移動する・・・』の女性に魅かれたのは、たぶん彼女たちの会話のセンスがよかったから。

春樹続きで『ダンス・ダンス・ダンス』をもう一度読み直そうと思ったのですが(あいかわらずほとんど忘れてます)、『羊をめぐる冒険』の続きで、冒頭からかなり落ち込んでしまいそうだったので本棚に戻しました。
この年になると、彼の作品を一気に読むのはちょっとシンドイ。
でも、最近の作品は(といっても『海辺のカフカ』とこの『東京奇譚集』くらいしか読んでませんが)、以前のほど痛みを感じなくなったような・・・。





コメント (2)
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