万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

人の自由移動には消極的なTPP

2010年11月10日 14時22分07秒 | 国際経済
TPP、日本方針に高評価=横浜APECが開幕(時事通信) - goo ニュース
 TPPへの参加に反対する根拠として、農業と並んで挙げられるのが、”人の自由移動”です。EUでは、”もの、人、サービス、資本”の自由移動を掲げてきましたので、つい、TPPに加盟すると、大量の移民が押し寄せ、職が奪われるのではないかとする懸念が広がるのも無理はありません。

 本日の日経新聞でも、TPPに参加することによって、”人材鎖国”から開国を目指せ、といった論調の論説を掲載しておりますので、なおさら、雇用喪失の危機感が高まりそうです。しかしながら、少なくともTPPの前身であるANZSEPをみる限り、自由化の中心は、ものとサービスであり、人と資本については、踏み込んだ規定を置いていません(人は、サービスの分野のビジネス・パーソンであり、投資は除外・・・)。EUと比較して、環太平洋諸国の間での社会・文化的な違いは著しく、多様性に富んでいることを考慮すれば、人の自由移動は容易ではなく、また、どの国も失業問題や社会的亀裂に神経をとがらせていることを考えれば、労働市場のさらなる開放に二の足を踏むのも分かります。

 日本国政府が、交渉過程で”人の自由移動”を自ら提言するとなれば、それは、国内の反対世論をさらに強めるとともに、参加予定国にも警戒感が広がる可能性もあります。将来的には、13億の人口を抱える中国が参加するかもしれないのですから。TPPの発足が、即、参加国の失業問題と直結せず、貿易の活性化によって、新たな国内雇用を生むような仕組みを考えるべきと思うのです。

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コメント (7)
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