万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

TPPを通貨安競争を防ぐモデルに

2010年11月11日 15時42分41秒 | 国際経済
TPP協議開始閣議決定、参加判断は来年6月 「開国」、問われる覚悟(産経新聞) - goo ニュース
 現在、中国の元安政策は、国際貿易の不均衡の元凶とみなされており、G7やG20でも、元安政策に引きずられた通貨安競争も、早急に対処すべき問題として議論されています。そもそも、こうした事態を招いたのも、WTOにおいて、対外通貨政策に関する合意が成立していなかったからとも言えます。

 ブレトン・ウッズ体制では、米ドルを中心とした固定相場制が採られていたため、各国には、為替政策を選択する自由はありませんでした。その反面、身勝手な為替政策を追求する国もなかったのです。ニクソン・ショックにより、変動相場制に移行すると、各国は、それぞればらばらな政策を採るようになります。この結果、輸出拡大政策の一環として、自国通貨安政策を採る国も現れたのです。しかしながら、この政策は、国際収支の不均衡をもたらす不公正な政策として非難され、円安政策を採ってきた我が国も、プラザ合意により、円高を容認することになりました。そうして、今度は、中国の元安政策に非難の矛先が向くことになったのです。

 思えば、WTOの加盟条件としても通貨政策に関する合意が欠如していたことが、中国の増長を許した原因であったのかもしれません。国際圧力で円高を受け入れた我が国とは違い、中国は、外部からの圧力だけでは動きそうもないのですから。そこで、TPPの枠組みを拡大する交渉に際しては、加盟条件に為替操作を防止するルールを加えてはどうかと思うのです(現行のTPPには、投資や通貨に関する規定は含まれていない…)。中国は、これまでのところ、関心を示しつつも参加を表明していませんが、WTOでの失敗を繰り返してはならないと思うのです。

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