移民の社会保障制限容認=英に改革合意案提示―EU大統領
今年の6月にも実施が計画されているEU離脱を問う国民投票を前にして、イギリスのキャメロン首相は、譲歩を引き出すべく、EU側と交渉を続けてきました。昨日、EU側の譲歩案が明らかとなりましたが、この案は、イギリス国民を満足させることはできるのでしょうか。
当交渉において焦点とされたのは、移民政策の分野です。イギリスは、増え続ける移民に制限を加えるべく、EUに対して、移民への福祉制限を求めてきました。ところが、このイギリスの要求に対してEU側が示した譲歩案とは、「急激な移民流入が発生した場合に限定し、”福祉制度に「過度な圧力」が加わったと証明できた加盟国”に対してのみ、EU理事会が、最大4年間の受給制限を決定できる」とするものであったのです。
イギリスは、移民政策の領域における自国の権限強化を目指して、移民への福祉の制限を実施できるようEU側に求めたと考えられますが、譲歩案では逆であり、移民への福祉制限の決定権は、EUレベルに認められています。委員会の提案により、EU理事会によって承認する手続きとなるからです。これでは、イギリスなどが移民流入による財政悪化に業を煮やして緊急措置を申請したとしても、必ずしも認められるとは限らず、特定多数決制の下で、却下される可能性もあります。また、既に指摘されているように、受給制限の申請条件も曖昧であり、EU側の裁量、即ち、”さじ加減”に任されることにもなりかねません。このように考えますと、譲歩案には、加盟国の権限強化とは反対に、EUの権限を強化する側面もあるのです。
イギリス国内のEU懐疑派は既に不満を表明しているようですが、イギリスへの移民の多いポーランドなど、自国出身の移民たちに対する受け入れ国側の受給制限が実施されかねない中東欧諸国からも慎重な意見が報告されており、加盟28か国の足並みは乱れています。人間とは利己的な側面があり、自らは負担を回避したがる一方で、他者には負担を押し付けがちです。福祉を要する移民に対して、第一義的な責任はどの国が担うべきなのか、実のところ、この問題は、権限のみならず、移民に対する責任の所在に関する根本的な問題をも提起していると思うのです。
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イギリスは、移民政策の領域における自国の権限強化を目指して、移民への福祉の制限を実施できるようEU側に求めたと考えられますが、譲歩案では逆であり、移民への福祉制限の決定権は、EUレベルに認められています。委員会の提案により、EU理事会によって承認する手続きとなるからです。これでは、イギリスなどが移民流入による財政悪化に業を煮やして緊急措置を申請したとしても、必ずしも認められるとは限らず、特定多数決制の下で、却下される可能性もあります。また、既に指摘されているように、受給制限の申請条件も曖昧であり、EU側の裁量、即ち、”さじ加減”に任されることにもなりかねません。このように考えますと、譲歩案には、加盟国の権限強化とは反対に、EUの権限を強化する側面もあるのです。
イギリス国内のEU懐疑派は既に不満を表明しているようですが、イギリスへの移民の多いポーランドなど、自国出身の移民たちに対する受け入れ国側の受給制限が実施されかねない中東欧諸国からも慎重な意見が報告されており、加盟28か国の足並みは乱れています。人間とは利己的な側面があり、自らは負担を回避したがる一方で、他者には負担を押し付けがちです。福祉を要する移民に対して、第一義的な責任はどの国が担うべきなのか、実のところ、この問題は、権限のみならず、移民に対する責任の所在に関する根本的な問題をも提起していると思うのです。
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