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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮に”黒幕”は存在しているのか?

2016年02月08日 15時20分03秒 | 国際政治
北ミサイル、米首都も射程圏か…SLBMも開発
 年明けの”水爆実験”に続き、昨日、北朝鮮は、衛星打ち上げと称して大陸弾道ミサイルの発射実験を実施しました。各国とも、当実験の分析を急いでいるようですが、北朝鮮には、背後で操っている”黒幕”が存在しているのでしょうか。限られた情報から、その可能性を探ってみることにします。

 黒幕説が実しやかに流れるのは、核であれ、ミサイルであれ、技術力からすると、北朝鮮が単独でこれらの先端兵器を開発することは不可能であるからです。外部からの技術・財政支援なくして開発不可能である以上、”黒幕”が存在すると推測せざるを得ないのです。となりますと、次に、誰が黒幕か、という問題が提起されるのですが、黒幕については、中国説、ロシア説、アメリカ説、イラン説、パキスタン説、そして、何らかの国際組織説が候補となります。まず、イランとパキスタンは水爆や大陸弾道弾ミサイルを保有しておらず、また、イランについては先日の核合意もありますので、過去に核開発の技術協力があったにせよ、この二国は候補からは外れます。

 となりますと、残りは三カ国と国際組織となりますが、中国が北朝鮮の最大の後ろ盾であることは周知の事実であり、少なくとも、2013年に張成沢氏が公開処刑されるまでは、全面的にバックアップしていたのでしょう。しかしながら、中国国内での北朝鮮切り捨て論や中韓接近を受けて、中国の対北支援は緩衝地帯としての延命だけが目的の打算的、あるは、惰性的なものに変質しており、しかも、韓国のTHAAD問題が絡んでいるとしますと、北朝鮮の実験は、配備を阻止したい中国にとりましては不利となります。仮に、中国の意向を受けて実験を行ったとしますと、脅迫効果のみに関心を払い、その後の展開を予測しなかったか、あるいは、政策判断ミスとなります。もっとも、以前の記事で指摘したように、人民解放軍の一部が北朝鮮軍部と連携している場合には、独裁化を進める習政権に対する威嚇や牽制の意味合いがあるかもしれません。

 その一方で、北朝鮮の軍事的脅威の増大は、米韓同盟の強化とTHAAD配備には追い風となることから、アメリカ黒幕説もあります。この説が成り立つには、アメリカが北朝鮮を完全にコントロールしている必要があり、事実上、朝鮮半島の南北両国ともアメリカの掌の上で茶番を演じているという、奇想天外なシナリオとなります。殆どあり得なそうもない想定なのですが、北朝鮮に米国本土への核攻撃能力を与えるのは、アメリカとりましてはリスクが高すぎますし、仮に本土攻撃であれば、北極ルートでミサイルを発射するでしょうから、アメリカの本土防衛の観点からは、それほど深くTHAADの配備問題と関連しているとは思えません(ただし、中国から韓国を引き離す一定の効果は認められる…)。また、米軍は朝鮮戦争を戦ったのですから、北朝鮮との協力は、何よりもアメリカ国民に対する背信行為となります。もっとも、アメリカ政府ではなく、アメリカの一部勢力、あるいは、内部化した国際組織であれば、この説も完全には否定できないかもしれません。

 それでは、ロシアが黒幕である可能性はあるのでしょうか。ロシアについては、北朝鮮の発射実験とほぼ同時に衛星用ロケットを打ち上げており、北朝鮮の実験との関連性が疑われています。国家としては、ロシアだけは、何らの不利益をも被っておらず、対北制裁強化にも消極的なそうです。”事件は、最も利益を得た者から疑え”とも申しますが、果たして、真実は、どこにあるのでしょうか。

 黒幕の正体については今後の精緻な情報分析を要するのでしょうが、ただ一つ確実に言えることは、国際社会にとりまして、北朝鮮は、平和と安全を脅かす、放置し得ない脅威であることです。国際社会が、体制崩壊を視野に入れた制裁強化に取り組みませんと、無法国家による脅威は拡大の一途を辿ることでしょう。そして、この黒幕との関係、あるいは、複雑に絡み合った背後関係を正確に把握することが、効果的な対北政策を策定する第一歩であると思うのです。

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コメント (2)
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