万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国による合成麻薬原料輸出問題-”アヘン戦争”の逆パターンになるのか

2016年02月14日 15時41分35秒 | 国際政治
 メキシコでは、政府と巨大犯罪組織化した麻薬密売グループとの間で麻薬戦争が闘われており、多くの一般市民も犠牲になっております。信じ難いことですが、その背景には、中国ルートの合成麻薬原料の供給があるというのです。

 麻薬密売組織が一大勢力に肥大化した原因は、合成麻薬が大量に製造され、闇のルートで販売されたからです。合成麻薬はアメリカ等にも密輸されており、その被害はメキシコ国外にも及んでいます。国際的に張り巡らされた原料輸入・製造・販売ルートこそが、メキシコに巨大犯罪組織を蔓延らせたのです。この側面を考慮しますと、巨悪を退治する最も有効な方法は、このリンケージを分断し、合成麻薬の製造を不可能にしてしまうことです。メキシコ政府は、専ら国内で麻薬密売勢力を闘っておりますが、実のところ、真っ先にすべきは、中国からの原料輸入ルートを遮断することなのです。肥料等の別の品目名で輸出されていますが、メキシコ政府は、中国政府に対してメキシコ向けの原材料輸出の取締強化を求め、自らも、水際で密輸を阻止することが、麻薬密売組織を壊滅に導く一歩なのです。ところが、この中国産麻薬原料、中国政府公認、否、国家ぐるみとの指摘があります。仮に、この情報が事実であれば、メキシコ政府は、中国という国家と対峙する構図となり、麻薬をめぐる対立は、19世紀の”アヘン戦争”を髣髴とさせます。今度は、中国が麻薬を輸出する側として。

 メキシコの麻薬戦争は、現代の”アヘン戦争”の様相を呈してくるのですが、麻薬が禁輸品となった今日では、国際社会は、メキシコ政府を支援することでしょう。犯罪加担国という不名誉な立場にある中国は、メキシコの麻薬戦争を終わらせ、国際犯罪組織を壊滅させるためにも、合成麻薬原料輸出を、即、停止すべきと思うのです。

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