万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

裏目に出た韓国の”蝙蝠外交”-THAAD配備問題

2016年02月18日 15時19分55秒 | 国際政治
中国訪韓、対北朝鮮制裁に賛同の用意あり──THAADの配備は牽制
 韓国の軍事面における中国接近は朴政権に始まったわけではなく、前任の李明博大統領の任期に当たる2008年12月に、既に両国間で、最初の中韓外交部門ハイレベル戦略対話が開催されているそうです。北朝鮮の事実上の大陸弾道弾ミサイルの発射実験を受けて、今月16日にも第7回戦略対話の席が設けられ、THAAD配備問題も議題に上がったそうです。

 韓国が対中関係重視へと舵を切った背景には、中国の急速な軍拡による東アジアのパワー・バランスの変化があります。韓国は、自国を米中間のバランサーと位置付け、公式には地域的安定に貢献する方針を示しつつ、その実、米中両国を天秤にかけ、双方から利益を引き出すチャンスと見たのかもしれません。しかしながら、今般の戦略対話を見る限り、韓国側の”戦略”は、裏目に出たように思われます。何故ならば、韓国の主権を脅かす事態が発生しているからです。第1に、THAADの配備については、中国はかねてより強固に反対してきましたが、韓国では、中国への配慮から、配備地点を変更する案も検討されているそうです。つまり、韓国は、自国の防衛政策を自国で決定できない状況に追い込まれているのです。第2に、今般の戦略対話では、中国側は、THAADの配備の見送りを条件に、国連安保理での北朝鮮への制裁に賛同すると提案したと伝わります。この提案は、中国の脅迫とも言うべき内容であり、韓国は、北朝鮮の脅威に対応しようとすれば(THAAD配備の断念)、中国の脅威を防げず、中国の脅威に対応しようとすれば(THAAD配備の決定)、北朝鮮の脅威を防ぐことができない、という二者択一の窮地に陥っています。そして第3に、韓国が、米中のどちらを選択するにせよ、袖にされた側の国から報復を受けるリスクをも自ら背負い込んだことです。

 韓国の”蝙蝠外交”は、中立政策といよりも、アメリカという同盟国がありながら中国に接近したわけですから、如何なる形であれ、リスクが伴わないはずもありません。中国との戦略対話の設置は、中国による内政干渉のルートを自ら設ける結果となったのではないかと思うのです。

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