万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中央銀行がバブルを誘導?-マイナス金利問題

2016年02月16日 15時17分35秒 | 国際経済
マイナス金利拡大「技術的に可能」…日銀副総裁
 本日から日本国でもマイナス金利が適用となりましたが、一足早くこの政策を導入している諸国を見ることは、リスクの予測に役立ちます。本日の日経新聞には、クレディ・スイス幹部のインタヴューが掲載されていましたが、マイナス金利には、長期的にはバブル発生の危険性を秘めているようなのです。

 スイス中央銀行は、当初0.25%であった利率を、現在では、0.75%まで拡大させています。ナネット・ヘシュラー・フェデルヴ氏の説明によりますと、この結果、マネーの流れ、即ち、投資家の行動に凡そ二つの変化が生じたそうです。その一つは、通常の貸し出し業務では低収益となるため、不動産賃貸収入が期待できる不動産市場への投資が増えたことです。二つ目の変化とは、海外投資に伴う為替変動リスクのヘッジ・コストが上昇したため、国内に資金が還流したことです。還流資金は、長期金利の低下から債権市場ではなく証券市場に向い、株価を押し上げています。後者の場合は、ヘッジ・コスト等の海外投資に伴うコストと国内金利との比較の如何によっては、低金利国であっても海外からの資金流入が起きることをも示しています(国家間の金利差は他の変数によって流れが変わり、流出も流入も起こり得る…)。何れも、投資資金の国内回帰現象ですので、スイス経済にとりましては好材料なのですが、不安材料もないわけではありません(日本の場合も、マイナス金利拡大で同様の現象は起きる?)。それは、仮に、国内に有望な投資先がない場合には、バブルを誘発してしまうというリスクです。スイスの現象から将来を予測しますと、マイナス金利政策のその先に、不動産市場バブルと証券市場バブルが待ち受けている可能性もないわけではないのです。フェデルヴ氏は、日銀のマイナス金利を受けて、今後、不動産投資信託(REIT)への投資を増やす予定と語っています。

 不動産投資であれ、株式投資であれ、この金融戦略は、基本的には利ザヤの獲得を目指しています。つまり、中央銀行は、投資ではなく、実質的には投機を誘導することになります。そして、金融機関や投資家の戦略が金融工学プログラミングに基づく金融ソフトによって割り出されているとしますと、金融機関が一斉にこ同一方向に動き、一気にバブルが膨れ上がらないとも限りません。高度な金融工学がリーマン・ショックを防ぐことができなかったように、昨今の株価の乱高下からは、今日にあっても、金融ソフトの最大の欠陥は、自らの破滅を防ぐための制御機能がプログラミングから欠落しているところにあるように思えてならないのです(目下、金融当局のブレーカー頼り?)。

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コメント (2)
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