万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

唯一正しい中国の貿易統計が示すリスク

2016年02月15日 15時53分56秒 | 国際経済
中国、輸出入とも大幅減=景気減速、一段と―1月

 中国政府の公表する統計の数字の不正確さは周知の事実です。このため、中国経済の実態を把握するには、行間を読むような分析が必要とされてきました。しかしながら、殊、貿易統計に限っては、正確であるかもしれません。

 その理由は、貿易には相手国があるからです。経済成長率やGDPなど、中国国内での経済活動をも対象に含める統計では、当局の匙加減や政治的な思惑によって、数字を意図的に改竄したり、水増しすることができます。先日発表された経済成長率6.9%も、おそらく、総統に下駄を履かせてあるのでしょう(マイナス成長との指摘もある…)。誰もが怪しみながら、中国当局の厳格な情報統制によって、正確な数字を知ることは出来ないのです。その一方で、貿易統計については、対中貿易を行っている全ての諸国の輸出入額を合算すれば、中国の貿易統計、即ち、中国の経済実態を正確に把握することができます。相手国のある貿易だけは、数字の誤魔化しが効かないのです。となりますと、公表された数字の通り、今年の貿易額は前年同月比で輸出で11.2%減、輸入で18.8%減の落ち込みとなりますので、中国経済は、予想以上に悪化していることになります。輸入の落ち込みがより激しいのは、元安が影響しているのでしょう。

 中国経済の失速は、全世界を買い取る勢いであった”チャイナ・マネー”という覇権主義追求の手段を中国が失いかけていることを意味します。経済的手段が急速に衰えつつある今、習近平政権は、”中国の夢”を何の手段を以って追求しようとするのでしょうか。それが、軍事力やかつてのソ連邦のような対外工作活動である可能性を否定できないことろが、共産党一党独裁体制の怖ろしさなのではないでしょうか。

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コメント (4)
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