万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

これで最後にして欲しい対北制裁安保理決議

2016年02月25日 15時21分32秒 | 国際政治
北朝鮮制裁強化案で米中合意=週内にも決議採択―国連安保理
 南シナ海における摩擦が激化する中、米中両国は、”水爆実験”に”弾道弾ミサイル発射”と、立て続けに国際社会に軍事的脅威を与えた北朝鮮に対しては、制裁強化で方針の一致を見たそうです。この米中合意、まずは歓迎すべきことなのですが、これまでの経緯を考えますと、不安がないわけではありません。

 北朝鮮に対する国連安保理における制裁決議の成立はこれが初めてではなく、2006年7月15日に採択された決議1695号に始まり、同年10月14日の決議1718号では、さらに国連憲章第7章上の制裁行動にまで踏み込んでいます。国際社会における本格的な対北制裁が始まったものの、2009年5月に北朝鮮が、再度、核実験を実施したために、同年6月12日には、国連憲章第41条に基づく具体的な経済制裁内容をも含む決議1874号も全会一致で採択されました。一連の流れを見ますと、2006年以降、国際社会は対北制裁を強化してきたわけですが、今般の北朝鮮による核・ミサイル実験の強行は、これらの決議の効果が、実際には皆無に近かったことを示しています。報道によりますと、経済制裁下にあるにも拘わらず、北朝鮮は、実験の度に技術力の向上を示しており、脅威は増す一方なそうです。その背景には、中国の裏からの支援が指摘されていますが、今回の安保理決議も、たとえ米中を含む全会一致で成立したとしても、抜け道がある限り、これまでのパターンの繰り返しともなりかねません。数年後には、制裁決議の裏をかくかのように、北朝鮮は、核・ミサイルの開発にまんまと成功するかもれないのです。

 安保理決議の効果を消し去った責任は、国連決議を蔑にしている中国等の北朝鮮支援国にあるのですが、対北制裁安保理決議は、今回を以って最後にしていただきたいものです。次なる対北安保理制裁決議があるとしますと、それは、国連を枠組みとした国際協力もまた形骸化したことを意味するのですから。

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