goo blog サービス終了のお知らせ 

万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

平昌オリンピック―北朝鮮の高慢と韓国の卑屈

2018年02月11日 14時10分49秒 | 国際政治
北の訪朝要請に文氏「環境整えて実現させよう」
平昌オリンピックは、恰も朝鮮半島の南北両国に“オリンピック・ジャック”されてしまったかのようです。日本国のメディアの多くも、南北両国による融和演出を嬉々として報じていますが、その過剰に演技がかった不自然さや異様な全体主義色に、一般の視聴者の多くは鼻白んでいるかもしれません。

 特にメディアが注目するのは、北朝鮮が派遣してきた高官代表団ですが、これらの北朝鮮側の人々には極めて高慢な振る舞いが目立っています。金正恩委員長の妹に当たる金与正氏に至っては、相手が文韓国大統領であっても決して頭を下げず、大統領が同氏に謁見しているかのようなポーズの写真も公開されています。“平壌オリンピック”と称される理由も、北朝鮮一行が韓国国内にありながら我が物顔で仕切り、平昌オリンピックを主導しているところにあるのでしょう。これも、自己中心思想としての“主体思想”の具現化なのかもしれません。

 北朝鮮が、韓国に対してかくも高慢な態度で接したことは、過去にはなかったのではないでしょうか。かつての太陽政策等の南北融和政策では、韓国側が北朝鮮を経済的に支援する立場にありました。ところが、今般に限っては、経済力にあっては優位にありながら、韓国側は、北朝鮮の態度に呼応するかのように卑屈な姿勢に転じているのです。今では、その“上下関係”が逆転しているように見えますが、一体、何がこのような変化をもたらしているのでしょうか。

 朝鮮半島における伝統的な社会秩序観とは、物理的力の優劣を基準とした位階秩序であるとされています。つまり、文明度や価値観等に拘わりなく、軍事力において優る側が上位に立ち、劣る側が下位に位置するという極めてプリミティブな構造です。仮に、南北両国とも、この力関係に基づく位階秩序の原則に従っているとしますと、北朝鮮は、軍事力において韓国に優位しているとする絶対的な自信があるはずです。そしてその自信の源こそが、核保有なのではないかと推測するのです。韓国もまた、これを既成事実として積極的に認め、“核保有国”となった北朝鮮にひれ伏そうとしているように見えるのです。

 こうした韓国の態度は、国際社会において深刻なモラル・ハザードを引き起こしかねません。北朝鮮は、国際社会を騙し、不当且つ違法な行為によって核兵器を開発したのにも拘らず、それを咎めることなく認め、核の威力の前に屈するのでは、北朝鮮を制御するどころか、国際社会において第二、第三の北朝鮮が出現しないとも限らないからです。核保有効果を実感した北朝鮮も、これまで以上に、核やICBM等の開発・保有に邁進することでしょう。アメリカをも、韓国の如くに跪かせるために…。

 平昌オリンピックで見せた北朝鮮の高慢さと韓国の卑屈さは、この意味において、国際社会に対して危険を知らせるシグナルでもあるのではないでしょうか。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする