万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

“スリーパーセル論争”の深層

2018年02月15日 15時16分34秒 | 日本政治
先日、テレビの『ワイドショー』において、国際政治学者の三浦瑠璃氏が朝鮮半島情勢と関連して“スリーパーセル”と称される北朝鮮の工作員の存在に言及したことから、賛否両論の議論が起きているようです。同氏が‘特に大阪が危ない’と指摘したことから、在日朝鮮人差別を助長するとする批判がある一方で、安保関連の議論には工作員対策は不可欠とする擁護論も少なくありません。

 三浦氏に対してはリベラル派からは極右化の指摘もありますが、同氏の発言の趣旨は、“スリーパーセル”の存在そのものではなかったのではないかと推測します。おそらく、‘アメリカが対北軍事オペレーションを実行した結果、仮に金正恩委員長がこの世から消え去っても、日本国内に潜伏してきた工作部隊が日本人を大量に虐殺する可能性が現実にあるので、こうした事態を避けるためには、アメリカは、軍事行動をとるべきではない’という反戦論にあったのではないでしょうか。米軍の対北軍事制裁に反対する立場においては、むしろリベラル派と歩調を揃えており(同氏は、番組内で、“アメリカには戦争をしてほしくない”と明確に述べている…)、その情報の真偽に拘わらず、“スリーパーセル論”の登場は、北朝鮮にとりましても、日米に対北軍事制裁を思い止まらせる牽制として必ずしも不都合ではなかったはずです(もっとも、同氏は、北の核保有に対抗する政策として日本国の核武装を唱えている…)。

 これまでも、朝鮮総連等の活動から、在日朝鮮人の中に工作員が潜んでいる可能性は、各方面から指摘されておりました。また、中国では、『国防動員法』が制定され、有事に際して在日中国人は中国政府の命令に従う義務が課されていますが、中国以上に厳しい独裁体制下にある北朝鮮が、在日朝鮮人を本国の指揮命令系統から外すとは考えられません。いわば、有事に際しての決起は当然にあり得るシナリオにも拘わらず、何故、リベラル派の人々は、今般の同氏の発言に限ってかくも激しく反発したのでしょうか。しかも、その多くは、公安の報告書や公安関係者の証言等を取り上げて、“スリーパーセル”の存在の否定に躍起になっています(公安が極秘情報を公開するはずもなく、また、北朝鮮系団体の活動の全容を把握していれば、北朝鮮経由の麻薬密売等は根絶できているはず…)。リベラル派にとりましては、公安は“宿敵”であったにも拘わらず…。この不自然な態度については、幾つかの理由が想定されるのですが、批判者が北朝鮮出身者、あるいは、親北反日の思想の持ち主である可能性に加えて、もう一つ、推測され得る理由は、同氏の発言により、“スリーパーセル”の存在の実態が明らかになる恐れを抱いたからなのかもしれません。

 批判者の何人かは、同氏が情報源として挙げた英タブロイド紙の『デイリー・ミラー』紙について、“フェイク”の常習紙として信用性を疑っております。上述した公安頼りの姿勢と並んで、リベラル派は、“スリーパーセル”の存在自体の信憑性を失わせることで切り崩そうとしているのです。しかしながら、タブロイド紙であれ、発信元がイギリスであることを考慮しますと、単なるフェイクとして切り捨てるのは慎重であるべきかもしれません。イギリスほど、その歴史において様々な陰謀が渦巻き、水面下における秘密裏の組織的活動のノウハウを知る国もないからです(セル(細胞)という表現にも秘密結社の一員というニュアンスがある…)。三浦氏の発言では、北朝鮮が潜伏させている“スリーパーセル”は、首領亡き後に活動を開始するとされていますが、仮に実在するならば、その組織は、北朝鮮からはなく、別系統によって出された指令によって動き出すのかもしれません。何故ならば、独裁体制にあってはトップの消滅は致命的ですし、しかも、海を隔てた日本国内において、本国から遮断された“スーパーセル”達のみで決起することは自殺行為に等しいからです。

 このように考えますと、日本国が警戒すべきは、朝鮮総連といった北朝鮮系の組織に限らず、宗教法人やNPO、さらには、近年急増した在日中国人等をも含めた国際ネットワーク組織なのでないでしょうか。仮面の裏には、別の顔が隠れているかもしれないのですから。

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