万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

恐るべき韓国の事実認識の誤り

2018年11月24日 13時52分46秒 | 国際政治
米国務省、日韓に連携促す声明 慰安婦財団の解散で
 先日、韓国の最高裁判所は、所謂‘徴用工裁判’において、日本企業に原告一人当たり1000万円余りの賠償を支払うよう判決を下しました。‘所謂’と付けたのは、原告は、戦時の国家総動員法に基づいて徴用されたわけではなかったからです。韓国の場合、事実認識に誤りがあるケースが多く、韓国側が一方的に「和解・癒やし財団」の解散、並びに、事業を終了させた慰安婦問題もその一つです。韓国人の元慰安婦達とは、日本軍に強制連行されたわけでも、無報酬で奴隷化されたわけでもなかったのですから。

 そして、韓国側の事実認識の誤りは、1965年の日韓基本関係条約に際しての国際情勢に関する認識にも見られます。上記の韓国側による二重払い要求の背景には、当時にあって韓国の国力は乏しく、日本国側から十分な‘賠償’を得ることができなかったとする認識があるからです。つまり、今日の国力を以って対日交渉に当たれば、より巨額の資金を日本国から引き出せると考えているのです。この認識には、以下のような誤りがあります。

 第一の誤りは、冷戦期、しかも、朝鮮戦争後の1960年代ほど、日本国と交渉するに際して有利な時代はなかった点です。確かに、韓国の国力は、GDPや軍事力を基準にして現在と比較しますと劣りますが、アメリカのバック・アップと言う面では、現在よりも遥かに恵まれた立場にありました。ソ連邦と対峙し、かつ、北朝鮮とも休戦状態にありましたので、アメリカは、韓国支援のために日本国に対して対韓譲歩を強く求めたからです。加えて、朝鮮戦争で疲弊した韓国経済を立て直すためには、巨額の資金を要するとの判断が手伝ったことも否めません。言い換えますと、国力が弱小であったからこそ、アメリカを後ろ盾とした強気の交渉ができたのであり、この時こそ、韓国にとりまして最適な時期はなかったはずなのです。

 第二の誤りは、再交渉をすれば、日韓請求権協定に定められたよいも多額の資金を日本国から引き出せると考えていることです。日本国による韓国併合は武力ではなく条約によるものであり、サンフランシスコ講和条約でも、一部地域の独立に際しての国、並びに、国民間の請求権に関する相互清算の規定として第4条を置いています。韓国との間では戦争賠償は存在せず、サンフランシスコ講和条約第21条でも朝鮮は賠償対象国から除外されていますので、純粋に請求権を相互に清算するならば、韓国側の対日支払額が日本国側の対韓支払額を上回るはずでした。しかしながら、第一の誤りで指摘した事情から、アメリカが、経済支援の名目で純粋な清算を越えた支払いを日本国側に求めたのです。仮に、韓国側が、日韓基本関係条約を破棄し、再交渉を求めるとすれば、交渉のスタートラインは講和条約第4条が定める請求権の相互清算となり、むしろ、韓国側が日本国に対して‘支援金’を全額返還してもまだ足りないこととなりましょう(日本国は、朝鮮半島にインフラを残すと共に、朝鮮半島に居住していた日本人は全財産を奪われている…)。

 第3に指摘し得ることは、韓国側は、朝鮮半島の統治を賠償の対象と見なしている点です。特に日本国の場合には、再三指摘されているように、統治時代を通して日本国から財政移転が行われており、同地の人々を搾取したわけではありませんでした。物的、並びに、財産上の損害を与えていないのですから、日本国は、賠償する法的な義務を負わないのです(旧宗主国に対して旧植民地に賠償を義務付ける国際法は存在していない…)。韓国側は、義務教育等を介して、日本国による統治時代を残酷で非人道的な植民地支配として国民に刷り込んでいますが、これこそ、事実とは異なる悪質な‘フェークニュース’に他なりません。

 韓国の人々は、何故、事実を丹念に拾い上げて調べ上げ、自分自身の頭で歴史を再構築して真相を掴もうとしないのか、不思議でなりません。また、客観的な事実認識と主観的な歴史認識との違いを理解しようとしないのでしょうか。アメリカの国務省は、慰安婦財団の解散に関して日韓に連携を促す声明を発表しておりますが、韓国が事実を正確に認識しないことには、永遠にこの問題は解決しないのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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